既に北大西洋で対ロシア潜水艦作戦の一翼を
西太平洋での対中国潜水艦にも・・・
David Berger米海兵隊司令官が米海軍協会研究所の機関誌「Proceeding」11月号に、ロシアや中国の潜水艦活動の活発化が懸念材料となる中、米海兵隊がその機動力を生かして構築する沿岸地域の拠点が、対潜水艦作戦に大きく貢献することになろうと寄稿し話題を集めているようです
ロシアの潜水艦活動は昨年あたりから急激に活発化して「冷戦後で最高レベル」に至っており、米海軍は北大西洋における対潜水艦作戦の指揮統制の専門部隊として、わざわざ特殊編成の「第2艦隊」を昨年末に立ち上げたところです。
中国もA2AD網を強化拡大すべく、また南シナ海を戦略原潜の「聖域」とする態勢が整いつつある中、攻撃型と戦略型両方の潜水艦部隊増強を図っており、「水中」での戦いは激化の一歩をたどっています
対潜水艦作戦について詳しくないため、Berger司令官寄稿文の一部からその重要性や位置づけを十分説明することはできませんが、北大西洋で既にある程度の成果を納め、海兵隊の存在感をアピールするだけではない実質的な「役割」もありそうですのでご紹介しておきます
6日付Military.com記事によれば
●11月号の「Proceeding」でBerger海兵隊司令官は、米海兵隊は必要な装備を備えて北大西洋での対潜水艦作戦に参入し、米国の懸念となっているロシア潜水艦対処に乗り出しつつあり、同作戦の一部を海兵隊が担うべきだと述べている
●同司令官は、米海兵隊は沿岸地域の拠点から「ロシアの潜水艦活動を妨害したり無効化することができる」と述べ、この作戦コンセプトの中には西太平洋で対中国に使用できるものもあると記している
●対潜水艦作戦への参画イメージとして同司令官は、海兵隊の少人数チームによる地上作戦拠点の一時的確保が重要な役割を果たすとし、「最前線のセンサーや攻撃能力、兵站支援の拠点として、水中作戦にも極めて大きな役割を果たすことができる」と記述している
●米海兵隊は、戦車部隊の廃止などに着手し、重装備部隊から機動展開が容易な軽量装備重視や無人システムや長射程兵器重視に変革を進めつつあり、新たな装備が対潜水艦戦にも貢献すると考えている
●米海兵隊は既に、前進拠点をノルウェー、アイスランド、グリーンランドに設けて「anti-submarine warfare fence」を構成し、ロシア潜水艦をノルウェー海に封じ込めて北大西洋から排除し続けることに取り組んでいる
●同司令官は「同様のコンセプトを太平洋の第一列島線にも適応できる」、「取り囲まれた海域であれば、米海兵隊が中国の潜水艦を探知して攻撃する可能性が増えるだろう」と記している
●このような海兵隊の前進拠点はまた、米海軍のP-8など対潜水艦作戦用の航空機を支援でき、周辺地域に防空や空中監視能力を提供可能となり、米海軍戦力が本格展開するまでのプレゼンス拠点ともなる
/////////////////////////////////////////////
Berger司令官のProceedingへの寄稿
→https://www.usni.org/magazines/proceedings/2020/november/marines-will-help-fight-submarines
沿岸の拠点から、どのような対潜水艦作戦が可能なのか説明できませんが、「anti-submarine warfare fence」とのキーワードに今後注目したいと思います
David Berger米海兵隊司令官の変革への決意と行動力は目を見張るものがあり、大いに学びたいと思います
米海兵隊の変革
「在日海兵隊の飛び石演習」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-10-23
「司令官が在日米海兵隊削減を示唆」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-25
「米海兵隊は戦車部隊廃止へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-25
「2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06
「米空軍はアジアで米海兵隊と同じ方向へ!」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-25
北大西洋でロシア潜水艦が活発化
「新設の米海軍第2艦隊はロシア潜水艦対処用」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-01-03
「冷静後でロシア潜水艦が最も活発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-12-21-1
「米海軍が30年ぶりバレンツ海進出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-06