米メディアが5月31日撮影衛星写真で報道
「間もなく進水」と報道もCSISは慎重な姿勢
AP通信やWSJ紙が、5月31日に撮影された商用衛星写真で中国第3の空母「Type 003」を紹介し、甲板上の建造機材などが整理撤収されつつあり、建造ドックに注水が始まっている様子などから、間もなく「進水」では・・・と報じているようです
4月には中国海軍が同空母プロモーション映像を公開してお披露目が近いことを示唆し、5月31日付中国国営英字紙「環球時報:Global Times」が、「間もなく進水するだろう」との同空母紹介記事を掲載したことからも、「Type 003」に新たな動きがありそうだと関心が集まっています
同空母は2018年から、上海北東部の「Jiangnan Shipyard:江南造船(集団)有限責任公司」で建造が進められており、2020年9月にカバーが外されて建造状況が衛星写真等で確認可能となり、1番艦「遼寧」や2番艦「山東」が装備しないカタパルト、それも米空母でもフォード級で初実現する「電磁カタパルト」を搭載する模様だと分析され、これにより艦載機の行動半径や搭載兵器量が大幅にアップすると注目されてきました
米国防省はこの「Type 003」について、様々な海上試験や艦載機を含めた運用訓練等の必要があり、また中国が空母開発において極めて慎重に技術確認を進めながら取り組んできた経緯があることから、運用開始は早くても2024年以降になるだろうと見積もっています
特にカタパルト(しかも射出パワーを調整しやすい電磁カタパルト)の運用は新たな作戦運用上の現場課題で、戦闘機クラスだけでなく、米海軍が実施している固定翼機(早期警戒機E-2Dなど)のカタパルト使用を中国が考えているのであれば、時間をかけた運用要領確立と技能普及が必要と考えられます
ただ、米一般メディアが建造ドックに注水が始まっている様子から「間もなく進水」等と報道している一方で、6月2日付CSIS「COMMENTARY」は、「建造中の空母周辺をよく見ると、はしごや足場、乾ドックを区切るケーソンも相当量残っており、ドックに海水を満たすだけでも、まだまだやるべき仕事は残されている」と分析しているようです
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中国空母の2番艦(国産空母の第1号)である「山東」は、2019年12月に就航し、様々な訓練や、南シナ海や台湾周回などで示威活動を行っているようですが、色々トラブルが発生しているとも伝えられています
また4番艦と5番艦は原子力空母とする構想があったようですが、中国経済の停滞と予算不足により2020年に当面見送りとされ、空母6隻体制を目指す方向も凍結された模様です
米海軍の空母がそうであるように、精密誘導兵器が発達して拡散する世界において、中国空母が有事にどのような役割を期待されているのか、実行可能性があるのか中国関係者に聞いてみたいところですが、しばらくは「生暖かく」見守りたいと思います
CSISの関連分析webページ(6月2日付)
→https://www.csis.org/analysis/china-gears-launch-its-third-aircraft-carrier
第3の空母関連の記事
「第3の空母の建造状況」→https://holylandtokyo.com/2021/06/15/1907/
「電磁カタパルト搭載か?」→https://holylandtokyo.com/2020/09/23/485/
中国の軍事動向関連
「新型巡航ミサイル潜水艦か」→https://holylandtokyo.com/2022/05/19/3254/
「山東省に日本向けBMDレーダー」→https://holylandtokyo.com/2022/04/20/3160/
「J-20ステルス機と新艦載機」→https://holylandtokyo.com/2021/11/02/2394/