2014年にロッキードが受注し、苦労の末
窒化ガリウム半導体を活用し10倍の探知能力
アメフトコート面分の巨大さ???
12月10日、米空軍は地球周辺の宇宙ゴミや小型物体を把握する「Space Fence」の第1号レーダーの試験運用を、マーシャル諸島のKwajalein島(ホノルル南西1200㎞)で開始したと発表しました
試験運用の期間は不明ですが、試験後に米空軍は「operational acceptance:運用可能な状態と判断して正式受領」する予定だそうです
宇宙ドメインでの戦いを遂行するには、まず宇宙で何が起こっているかを把握することが重要で、その一環として地球周辺に漂う50~65万個もの衛星や宇宙ゴミを把握することが必要ですが、現時点では約2.5万個程度しか把握できておらず、これを「Space Fence」によって20万個程度に飛躍させようとの試みです
完成すれば、世界最大で最先端のレーダーになると関係者が豪語する「巨大Sバンドレーダー」だそうですが、過去記事等からその概要を再整理してご紹介します
これまでの経緯
●1960年代からVHF帯レーダーを使用し、米本土内に設置された3個の発信施設と6つの受診施設で構成され運用してきた「Space Surveillance System」は、物体の5%程度しか把握できない能力と予算不足により、2013年10月に運用を停止した。
●その後継として「Space Fence」計画が打ち出され、「Sバンド帯」を使用することで「ソフトボール程度の大きさの宇宙物体を1200マイルの距離で発見でき、大きさ判読や追尾も可能」と言われるシステムを目指しスタートした。Lockheed MartinとRaytheonがシステム受注を争った結果、2014年にロッキードが約1100億円で受注した。
●開発は容易で出ないと関係者や専門家はみていたが、2016年3月末に、ロッキード社は窒化ガリウム半導体を活用した「monolithic microwave集積回路技術」を用い、「Space Fence」の試験用レーダー施設をニュージャージー州で開設し、大型本格施設に先立ちハードやソフトの検証を開始した
●また並行し、第1号機設置予定のマーシャル諸島のKwajalein島では、大量のコンクリートを投入してアメフトコート面分ともいわれるセンサーの基礎工事が進められ、当初は2018年後半の運用開始宣言を目指して工事が進められた
●マーシャル諸島の第1号機は、今年3月には初期的な試験を行っており、その際は、インドが行って世界的非難を浴びた対衛星兵器実験のデブリを探知し、地球周回状況を予測した
レーダーの運用と今後の計画
●「Space Fence」のレーダーは、赤道近くに配置することにより東西方向に最大広角の視野を確保できる。地上固定レーダーが「フェンス」のように、地球の自転にあわせ宇宙空間を捜索カバーし、1日に150万回宇宙物体を補足追尾することにより、GPS衛星等の衝突防止に有用なデータを提供するほか、宇宙状況把握に貢献する
●(以下は2014年当時の情報であることに特に注意。今もたぶんそうでしょう)米空軍は、第2号レーダーを豪州に設置したいと考えているが、予算の関連で凍結されている。米空軍は2つのレーダー情報を融合することで宇宙状況認識能力を高めたい意向だが、第1号機の運用状況や成果を見て議論される
●試験用レーダー施設がニュージャージーで運用開始した際、ロッキードの担当責任者は「宇宙状況把握や宇宙ゴミ把握能力を約10倍高めることに1歩近づいた。オープンアーキテクチャー採用により、同システムは将来の多様な目標探知追尾に適応できるだろう」と語り、その能力と拡張性をアピールしていた
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「アメフトコート面分」とのレーダーの大きさは、訳が怪しい日本語情報で自信がありませんが、どの情報ソースも「巨大なレーダー」と表現していますので、有事には脆弱な攻撃目標になるのでしょう
それでも、平時からしっかりと相手の動きを把握して「敵を抑止」し、「敵の陣形を把握」しておくことで、戦いの緒戦で有利な地位を確保できるのでしょう。
過去記事等の「つぎはぎ」情報ですので、不正確な点はご容赦を・・・・。12月10日の試験運用開始で、詳しい方の解説も出てくるでしょう・・・たぶん
参考にした過去記事
「Space Fence試験レーダー完成」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-29
「米空軍のSpace Fenceを学ぶ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-28