少しでもイランから遠く、ペルシャ湾沿岸でない場所で
反体制ジャーナリスト殺害でサウジとの関係悪化の中でも
26日付各種軍事メディアは、Frank McKenzie米中央軍司令官が25日に米メディア(Defense OneとWall Street Journal)を同行させてサウジの紅海沿岸の港湾Yanbuを訪問したと報じ、米中央軍が同港とサウジ西岸近くの2つの飛行場を「緊急時」に使用できるようサウジ側と交渉中だとの米軍報道官の発表と合わせて紹介しています
米中央軍は、カタールやバーレーンやクウェートやUAEに米軍を展開させていますが、911同時多発テロ以降、ビンラディンの祖国であるサウジはリスクが高いとして米軍は撤退していました。
しかし2019年9月にサウジの製油所がイラン製の無人機やミサイルで攻撃されたことでイランへの脅威認識が高まり、トランプ大統領が首都リアド南東のPrince Sultan空軍基地に、2500名規模で米軍戦闘機部隊や防空ミサイル部隊を再展開させて現在に至っているところです
今回のメディア報道では、米軍側は兵力の常駐を意図しているのではなく、緊急時の展開先として構想しているらしいですが、サウジ側は米海軍艦艇受け入れのため港湾改修を行ったとの内容も含まれており、また記者を同行させて中央軍司令官が視察していることからも、米サウジ間では既に緊密な協議が行われていると推測されます
バイデン大統領は選挙期間中、サウジが反政府ジャーナリスト(Khashoggi)暗殺に関与したとして非難していたようですが、今後の新政権の中東政策を占う材料となる動きですので、ご紹介しておきます
26日付Military.com記事によれば
●(左図は2020年1月時点)米中央軍報道官は、紅海に面したYanbu港と、同じく紅海沿岸近くのTabuk(King Faisal空軍基地)とTaif(King Fahd空軍基地)の緊急時の使用を想定して、1年余り評価検討を行ってきたと述べ、「挑発的にならないよう、中東地域やサウジでの存在拡大にならないよう、慎重に一時的な施設へのアクセスの可能性について協議検討を行ってきた」と文書で説明した
●また同報道官は「検討してきた緊急時の拠点に対し、サウジ側が支出して施設の改善が既に行われ、今後更なる投資が検討されている」とも説明した
●McKenzie司令官はYanbu港で、「ペルシャ湾岸は有事に高リスクエリアになることが想定されるので、湾岸地域から戦力移動させたり、域外からの戦力を受け入れる場所の確保を考えておくのだ」と語ったと報じられている
●サウジ政府は、中央軍司令官のYanbu訪問や上記の報道官声明について、26日時点でコメントしていない
●米国はサウジ以外でも、例えば、オマーンと同様の必要時の基地使用の合意を締結している模様である
●CNAS研究員のBecca Wasser氏は、このようなサウジ西部・紅海沿岸での拠点模索は、以前McKenzie司令官が米議会で証言した、リスクの高いペルシャ湾岸を避ける新たな兵站ルート「Western Sustainment Network」の一環だろうと推測し、「恒久的な基地だけでなく、バックアップを想定した柔軟な姿勢が必要だ」とコメントしている
●米軍のこのような動きにイラン側は敏感に反応し、イランの国連大使報道官は「中東の混乱と不安定を招いている」と外国軍のプレゼンスと米軍の動きを非難し、「緊急事態は、他国がイラン攻撃を試み、イランが自国防衛を決意した際にのみ発生しうる」と語った
●今回の中央軍司令官Yanbu港訪問との関係は不明だが、23日にリヤドがミステリアスな攻撃を受けている。ミサイルか無人機よるかも不明で、過去にイランの支援を受け同様の攻撃を行ったことがあるイエメンのHouthi rebelsも関与を否定している
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世界中に長射程の精密誘導兵器や無人機が拡散しており、対中国でなくても、戦力の分散や避難先の確保、代替運用地の確保は喫緊の課題です。また兵站を支える拠点の代替確保の観点も重要です
その点で中央軍の動きは自然なものですが、原油価格への介入などもあり、米国とサウジの関係が微妙な雰囲気の中でも、イスラエルとUAEの国交樹立の流れもあり、いろんなことが進んでいるようです
前述したように、バイデン大統領は大統領選挙期間中、サウジを反政府ジャーナリスト(Khashoggi)暗殺に関与したとして非難していたようですが、今後の中東と向き合う姿勢にも注目です
昨年の大統領選挙直後の予想記事
「バイデン政権で国防政策はどう変わるのか」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-11-09
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