2016~2019 年の日本と韓国に駐留経費とホスト国負担比較
シンクタンク専門家等による駐留利点評価
17日、2020年度国防授権法が米会計検査院GAOに求めた、日本と韓国に駐留する利点と関連する費用に関する報告書「責任分担:日本と韓国に駐留している米軍に伴う利点と経費」が公開され、米国目線で見て、経費のどれだけを米国とホスト国で分担しているかを米国民向けに示しました。
また併せて米会計検査院GAOは、米国防省と国務省当局者11名と、政府外シンクタンクなどの9名の専門家にインタビューし、様々な関連文書と研究レポートから抽出した駐留に伴う安全保障上の利点と考えられる6つの視点に対する支持の度合いを確認し、支持されていると評価しているようです。
日本には約5.5万人、韓国には2.8万人の米軍兵士が駐留し、2016~2019 年の4年間の日本駐留経費は日米合わせて約4兆円、韓国は2.3兆円となっていますが、このGAOの報告書は、その細部経費やその使い道を細かに精査するのではなく、国防省や国務省が分担している駐留経費を整理して掲載し、併せてホスト国が支援している経費も紹介し、全般的な意義を専門家にエンドースしてもらったとの形式になっているようです
同報告書や17日付米空軍協会web記事によれば
●報告書での経費のとりまとめは、兵士の人件費、部隊の作戦費と維持管理費、家族用住宅の運用と維持管理費、軍事施設や家族用住宅の建設費を対象に行われた。ただし部隊運用費はどこに所在しても発生する経費なので除外されている
●ホスト国から提供されている税金、光熱費、土地や施設使用料の免除は、今回の統計ではホスト国からの支援額に含まれていない
●上記の前提で、2016~2019 年の4年間で、日本駐留に関し米側は209 億ドル(2.4 兆円)を負担し、日本側は126 億ドル(1.5 兆円)を支援。米国の負担は約60%
●同じ期間で、韓国駐留に関し米側は134 億ドル(1.6 兆円)を負担し、韓国側は58 億ドル(6701 億円)を直接財政や現物支給など様々な状態で提供。米側の負担は約70%
●専門家に問うた一般に主張される6つの米軍駐留の利点
・地域安定と安全保障→侵略を抑止し、有利な力の均衡を確保することで、地域の安定と安全保障を維持するのに役立つ
・非核化と非拡散→北朝鮮の非核化達成のための努力を支援し、一般的な非拡散を促進する
・防衛能力と相互運用性→日韓の防衛能力と米国兵器システムとの相互運用性を強化する
・強固な同盟関係→日本及び韓国と米国との同盟関係を強化する
・不測事態への対処→地域の軍事及び非軍事(自然災害など)への迅速な対応を可能に
・自由なインド太平洋地域を維持→優れた統治や経済的繁栄を含む自由なインド太平洋地域を促進する
●上記6つの利点に関する評価
・ほとんどの専門家は6つの利点に「同意」又は「強く同意」すると評価した
・一方で、沖縄などいくつかの駐留先では、地域での駐留米軍への反発が強まっており、長期的には駐留地を維持するのが難しい(untenable)と考えられ、ホスト国との摩擦を避けるため、既に米国は戦力の一部を移転させている
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関連の米会計検査院webページ
→https://www.gao.gov/products/gao-21-425
さすがの米会計検査院GAOも、駐留経費の総額及びホスト国の負担度合いと、抽象的な駐留の利点を比較し、「無駄使い」又は「妥当な支出」等々と評価するには至らなかったようです。
極めて政治的で、極めて対外影響力の大きな問題であり、経費負担のデータや利点に関する視点を国民に示し、判断は国民に委ねる・・・とのスタンスかもしれません
日本側からすれば、米国のアジア太平洋戦略の前線拠点を提供し、優秀な維持整備力で特に米海軍艦艇の高稼働率確保に貢献し、おまけに米軍人に大人気の赴任先を提供していることでも貢献している等とアピールしたいところですが、中国の多数のミサイル射程にすっぽり入り、在日米軍の脆弱性が日増しに増加している現実から背を向けることはできません
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