米空軍による戦闘機構成検討「TacAir」の背景にある問題児
高止まり維持費、利益地元誘導政治家が絡み身動きできぬ苦悩
5日、Adam Smith下院軍事委員長(民主党)がブルッキングスで講演し、「どぶに金を捨てるようなF-35への投資を止めさせたい」などとF-35を厳しく批判し、「金食い虫のF-35に今後35年も頼らなくてよいような道を探るべき」と訴えました
この問題には米軍も苦悩しており、同機を1763機も調達予定の米空軍でも、2月17日にBrown米空軍参謀総長が「5世代機と次世代制空機NGADと新たな5世代機マイナスとの混合編成」を考える必要があるとして、新たに「5世代機マイナス」性能のF-16後継機開発を含めた、「TacAir study」検討を数か月間で行うと表明したところです
飛行時間当たりの維持費が第4世代機の2倍で下がる見通しが立たず、まだ開発と製造が同時進行状態で稼働率も上がらないF-35にこれ以上依存では破産するとの現実的な問題ですが、F-35製造関連企業や工場を政治家対策のため全米に分散させた結果、地元利益誘導の米議員集団が「亡国のF-35」計画の推進を要求しており、「民主主義の悪夢」の様相を呈しています
Brown空軍参謀総長は初の黒人軍種トップとして話題の大将ですが、予算の現実を直視しない前線部隊や政治屋からの大反対を受けつつ、「今決断せねば勝利はない」との強い決意で戦闘機問題に臨もうとしていますが、黒人ゆえの悲哀を感じつつ、孤独な戦いが続いています。重鎮である下院軍事委員長の発言を「追い風」として、改革が進められるのかに注目しているところです
Adam Smith下院軍事委員長はブルッキングスで
●F-35は我々に何を与えてくれるか? 我々の損失を断ち切る道はあるのか? このような問題の多いアセットへの多額投資を止める方法はないのか? 皆さんも知っているだろう。この機体の維持費は暴力的だ!
●私は最も費用対効果の高い戦闘機の構成(a mix of fighter- aircraft)を検討したいと考えている。今後35年間、問題山積のF-35に依存しないために、何かを見つけたいと考えているのだ
●我々はこれまで、期待通りに機能しない兵器システムに驚くほど巨額の資金を浪費してきた。我々が受け入れてきてしまった過ちは、唖然とするほど巨大なものである。F-35は・・・
●しかし、(地元利益誘導の)米議員からのF-35支援の声が強く、米国がF-35に縛られる状況に陥りつつあることを情けなく思う。米国議会はコストが高騰し続ける兵器システムをチェックする役割を担っているはずなのに・・・
2月25日Brown空軍参謀総長は戦闘機問題について
●(2月17日に「TacAir study」を発表したのは、)今後調達していくF-35だけでなく、今後10-15年のスパンでF-35を補完していく他の方法も含め、総合的な検討を行いたいと考えたからだ
●必要な能力を確保するため、F-35を計画通り1763機導入するオプションから、予算で対応可能な4世代機プラス(5世代機マイナス)を利用するオプションについても、幅広く検討したいと考えている
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米空軍は1763機調達予定を、1070機まで減らす検討をしていると昨年末に報道され、「火の無いところに煙は立たず」で、そうならざるを得ないと思います・・・
まんぐーすも、いつまでもグダグダとF-35の負の話題をお伝えしたくはないのですが、日本は世界第2位のF-35購入国になる計画を持ち、共同開発国でもないことから米国以上の調達&維持コストを強いられることが明らかだから触れずにはおれません
おまけに、主に海外に展開して戦う米軍とは異なり、日本を拠点として戦う自衛隊の性格からすれば、有事に飛行場等の機能喪失が容易に予想できる中で、F-35に多額の投資を行うことが如何に「亡国の政策」かも、くりかえして口にせざるを得ません
前線で真摯に国防に取り組みたいと汗を流す隊員の皆さんが、これ以上「亡国のF-35」で苦しむ姿は見るに堪えません・・・。時すでに遅し‥でしょうか? 日本も「TacAir study」を、いやより大きな戦力構成再検討を行ったらどうでしょうか?
2月17日Brown参謀総長発表の「TacAir study」関連
「戦闘機世代混合比や5世代マイナス機の検討」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-19
「戦闘機族ボスがNGADへの危機感を」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-02-27-1