中国軍機関紙がトランプ級戦艦構想を冷静にバッサリ

コスト面・技術面・建造能力面から指摘し、海軍戦術変化にも言及
米国の資源を浪費する自滅的計画だと示唆
8月下旬の「中国国防報」記事を米大学の専門家が解説

8月21日付で中国軍機関紙である「中国国防報」が「米国の新型戦艦は3つの大きな課題に直面」との記事を掲載し、「コスト面・技術面・建造能力面」の視点から、2025年12月にトランプ大統領自らが発表会見を行ったトランプ級戦艦15隻構想を批評しています。

西側専門家による本構想批評(まんぐーすが末尾過去記事でもご紹介)と同様の方向性ではありますが、中国からの反応は、本構想トランプ発表翌日に中国官営英語紙Global Timesが、中国海軍研究所研究員による「この戦艦はDF-21D弾道ミサイルを含む中国対艦兵器の格好の標的になるだろう」、「弾薬満載時ならより脆弱で絶好のタイミング」とのコメントを掲載して以来で、より冷静に分析した批評記事でもありますので、ご紹介いたします。

同中国記事のご紹介に当たっては、Brown大学の中国専門家Lyle Goldstein氏が同記事を解説した投稿記事(9月3日付Defense-News)を活用し、「中国国防報」記事概要と、「この中国記事は、米国がこの途方もない愚行とも言える構想を追求することで弱体化することを、中国の戦略家が切望していることを示唆している」と考えるGoldstein氏のコメントと併せ、取り上げます。

「中国国防報」記事はまず「ト戦艦構想」を少し持ち上げ
●(米海軍が近年推進の分散型海上作戦では小型や中型艦艇を重視も、)小中型の分散型艦艇は安定したデータリンクに過度に依存するが、大型艦艇は通信妨害下でも特定の戦闘任務を継続できる
●また小中型艦艇に比べ、大型艦艇は船体損傷の影響が小さいとの利点がある
●ト戦艦は原子力推進であり、核弾頭ミサイルも搭載する可能性があることが示されている点も注目に値する

Brown大学Goldstein氏は上記肯定的評価に関し、
●米国内の「ト戦艦構想」支持派も、同様の主張を展開中と解説

 

「中国国防報」記事指摘の「ト戦艦構想」の課題
●コスト面
・2028年~2056年に建造予定のト級戦艦15隻の総費用は約44兆円に達し、一番艦は約2.8兆円と推計され、従来型エンジン推進から原子力推進への変更で経費が5割増加
・ちなみに総計約44兆円には、通常艦艇より遥かに巨額になるであろう、同戦艦退役後に必要な「核廃棄物処理と艦船解体費用」は含まれていない

●技術面
・設計が未確定で技術的成熟度が不十分であるため、遅延やコスト超過が重大な問題になる可能性大
・プラットフォームを構築し、後から装備を付加するアプローチは、Zumwalt級駆逐艦と沿海域戦闘艦(LCS)の失敗例からしても特に高リスク

●造船能力面
・主要な米国造船所では、海軍艦艇1隻納入に必要な期間は、2000年代初頭の約5年から、現在では約11年にまで延び、平均5年の遅延が生じている
・従って「ト戦艦構想」は、米海軍の他の優先度の高い空母や潜水艦の建造計画に連鎖的な負の影響を及ぼす可能性がある。

●更に分散型海上作戦理論からの変化指摘
・この設計は、近年米海軍推進の分散型海上作戦の概念とは異なる。分散型は、探知、指揮、攻撃能力の複数拠点への分散を重視し、少数の大型艦艇が損傷した場合の、艦隊全体への影響軽減を目的としている
・しかし大型水上戦闘艦は、静音潜水艦、極超音速ミサイル、ドローン群等に対してあまりにも脆弱

Brown大学Goldstein氏は上記批判的評価に関し、
●Zumwalt級駆逐艦と沿海域戦闘艦(LCS)の失敗を踏まえ、技術的成熟度が不十分で、船体優先がリスクとの指摘は、ト戦艦がレールガン、極超音速兵器、レーザー等の未知の装備を多数搭載予定している点から妥当な批判
●米造船業界の現状を的確に把握しており、中国の戦略家達は、ドミノ倒し的な艦艇建造遅延がアジア太平洋地域の海軍バランスにさらなる影響を与えることを間違いなく認識している

●米海軍の基本的な戦闘教義パラダイムの潜在的変化に注目している点は特筆すべき。
●この中国記事は、米国がこの途方もない愚行構想を追求することで弱体化することを、中国の戦略家が切望していることを示唆している
/////////////////////////////////////////////

「中国国防報」記事の指摘はごもっともです。特に付記することはありません。

上記の他にGoldstein氏は個人的な米海軍への提言として、「米海軍は、水中戦やドローン分野で強みを活かす方が賢明」、「戦力構造を再構築すべき。高コストのプレゼンス任務を削減し、費用対効果の高いリスク分散戦略を採用すべし」との主張を展開されています。ご興味のある方は元記事をご確認ください。

トランプ級戦艦の復習は「過去記事をご覧ください」ですが・・・
●排水量3万5000トン級の世界最大の水上戦闘艦で、WW2以降の海軍艦艇で最大規模となる。Arleigh Burke級イージス艦(DDG-51)の約3.5倍、Zumwalt級ステルス駆逐艦の2倍に相当
●原子力推進で、「対空&対地&対艦ミサイル」に「高出力レーザー兵器」に「極超音速兵器」に「レールガン」に加え、「核搭載巡航ミサイル」までテンコ盛り搭載
●海軍は、2028年から2056年の間に15隻建造する予定

●2025年12月22日に建造発表時ト大統領は、黄金艦隊「Golden Fleet」構想推進のため「最速、最大、そして100倍強力になろう」、「1994年以降、米国は戦艦を建造していないが、トランプ級は最強な水上戦闘艦の一つとなる」、「米国は海軍艦艇を切実に必要としている。現艦艇には老朽化し疲弊したものもあり、この状況を180度転換する」、「設計は米海軍が主導するが、美的感覚に非常に優れた私も参加し進めていく」と発言

●8月5日付米議会予算室CBOレポートでは、要求性能から推定する建造コストは、1番艦が約3.5兆円で、その後の14隻は約2.8兆円。ちなみに最新原子力空母フォード級の一番艦は2兆円
●トランプ戦艦1番艦の建造費用見積りは、2025年12月の建造発表以降に上昇を続けており、CBOレポート記載の3.5兆円は、米海軍の初見積りより約1兆円も増加

中国メディアが転載した8月21日付「中国国防報」記事:中国語
https://finance.sina.com.cn/wm/2026-08-21/doc-ininztwx8290357.shtml

トランプ級戦艦の関連
「米議会が価格予想:空母の150%」→https://holylandtokyo.com/2026/08/19/15408/
「米海軍幹部が苦しい説明」→https://holylandtokyo.com/2026/01/22/13703/
「犬も食わないトランプ戦艦」→https://holylandtokyo.com/2026/01/05/13521/

グダグダの米海軍艦艇計画
「沿岸警備隊Legend級を基礎に」→https://holylandtokyo.com/2025/12/26/13499/
「Constellation級2隻で中止」→https://holylandtokyo.com/2025/12/01/13315/
「沿岸戦闘艦LCS 削減へ」→https://holylandtokyo.com/2015/12/22/7818/
「Zumwalt級2隻で中止」→https://holylandtokyo.com/2016/10/29/7540/
「新海軍制服トップ」→https://holylandtokyo.com/2025/08/04/12453/

世界の安保・軍事情報を伝えたい ブログ「東京の郊外より」支援の会
米国を中心とした世界の軍事メディアが報じている、世界の標準的な安全保障情報や軍事情報をご紹介するブログ「東京の郊外より・・・」を支援するファンクラブです。ご支援お願いいたします。
ブログサポーターご紹介ページ
お支援下さっている皆様、ありがとうございます!そのお気持ちで元気100倍です!!!●赤ちょうちんサポーターの皆様(3000円/月)なし●ランチサポーターの皆様(1000円/月)mecha_mecha様kenj0126様●カフェサポーターの皆...
タイトルとURLをコピーしました