米空軍がボーイングとF-15戦闘機に関する約20兆円の包括契約

日韓イスラエルサウジ等のFMS国も対象範囲
機体製造・近代化・維持管理・整備拠点構築・システム融合など多様な範囲を包括
この包括的マスター契約で個別事業が軽易な発注書で迅速実施可能に
企業側に長期的需要の安心感で関連投資を促進
20兆円の全額使用を保証するものではない
基本発注2031年8月まで(5年延長選択肢あり)で、作業完了2037年8月予定

8月24日、米空軍と国防省がボーイング社と、F-15戦闘機の「機体製造・近代化・維持管理・整備拠点構築・システム融合など多様な範囲を包括」する、1312億3,000万ドル(約20兆円)上限総額の「IDIQ(indefinite-delivery, indefinite-quantity、無期限納入・不定量)」契約(通称契約名:F-15 Eagle Crest)を締結したと発表しました。

この聞きなれない巨大契約は、基本的な発注期間は2031年8月までで、追加で5年間延長オプションが用意されており、全ての関連作業は2037年8月までに完了予定と設定されていますが、あくまで「IDIQ不定量・不定期間契約」であるため、契約上限金額約20兆円まで、米空軍や州空軍、またはFMS国により、今後具体的な細部は決定され、案件毎に発注されため、必ずしも20兆円全額の発注を確定保証するものではありません

例えば本契約により、対外有償軍事援助FMS(Foreign Military Sales)対象となる同盟国にも、米国防省を窓口としてF-15購入等が可能となりますが、現在F-15を保有運用する日本、韓国、イスラエル、サウジアラビア、シンガポールだけでなく、現在同機を保有せず、将来導入も未定のインドネシア(2026年2月に交渉決裂)とポーランド(関心あり程度)も包括契約の対象として恩恵にあやかれるほどの「ざっくり」契約となっています。

同種の「ざっくり」契約には、国防省がロッキード社とF-16戦闘機「輸出」に関し、10年間で約10兆円の包括契約を2020年に締結した例があるようですが、このような「ざっくりIDIQ契約」が行われる背景や理由を、米空軍報道官発言や「ググって」見たところ、以下の4点に「ざっくり」整理できそうです

●先の見えない、つまり装備ニーズを確定できない国際情勢の中でも、一定の需要が確実な特定分野で包括契約(マスター契約)を結び、企業側に安心感を提供
●受注先のボーイングや関連下請企業は、「ざっくり」でも「今後10年以上、最大20兆円の仕事受注可能性」のお墨付きを得て、より安心して設備投資や人員確保が可能に

●同時に米空軍は、包括契約(マスター契約)の存在により、個別の発注案件には、長期間で複雑な審査や交渉が不要となり、簡単な注文書だけでOKとなり、迅速調達が可能に
●またFMS国側にとっては、米国防省が契約の大枠を準備してくれたことになり、同盟国からF-15部品や能力向上改修キットの購入要請があった場合は、米軍と同様の迅速調達メリットを享受でき、更に米国や他同盟国を合わせた大量発注による価格低下も期待可能

ただ単純に「全てよし」とはならないのは当然で、例えば、米空軍協会ミッチェル研究所のHeather Penney女史は、この「F-15 Eagle Crest」契約に関し、以下のような注意点を挙げています。

●米空軍戦闘機の老朽化と規模縮小が続き、空軍が予算難で新型機導入に苦慮する中、企業が必要なのは「需要のシグナル、安定性、リソース(資金等)」であり、IDIQ契約であっても、本アプローチが効果を発揮するには、近未来の発注数やレートを伝える努力を継続する必要がある
●空軍側がIDIQ契約を振りかざし、企業の生産量が安定せず、将来の受注予測が困難となれば、企業側はサプライチェーン全体で事業活動を縮小することとなり、長期契約のメリットが失われる
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「IDIQ契約」と「F-15 Eagle Crest」契約に関し、極めて大まかにご説明しましたが、本来は、本契約によって国側と企業側に課されている、契約履行に関する「罰則」や「要遵守事項」など、「縛り」に関する部分も把握しておく必要があると書きながら強く思いました。調べていませんが・・・

また、FMS国として本包括契約の恩恵を享受可能な立場となった、防衛省や航空自衛隊の反応も気になるところです。ご興味のある方は、是非関連キーワードを手掛かりに、ご自身で「深堀」してください。

「F-15 Eagle Crest」契約に関する米国防省公式発表
https://www.war.gov/News/Contracts/Contract/Article/4581800/contracts-for-aug-24-2026/

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