米空軍大学CASI中国航空宇宙研究所の少佐研究員の論文
探知センサー技術と中国産ステルス機開発への偏重を指摘
情報・電子戦・作戦計画・指揮統制・操縦技量等のシステム全体を軽視
対策全体は「米ステルス機は対策可能な技術的課題」との、ステルス機探知とステルス機国産技術にのみ焦点を当てたものとなっており、ステルス機探知技術の課題やステルス機を含む作戦システム全体での作戦運用ノウハウ不足を軽視する傾向があると指摘し、このような中国側の過度な自信が、台湾海峡や南シナ海での中国による危険な行動を誘発する可能性を注意喚起しています
以下ではボリュームのあるレポートの概要を、いつものように誤解や誤訳を恐れることなく、「まんぐーす」の「好みに沿ったつまみ食い」でご紹介いたします。ご興味のある読者の皆様には、レポート本体をご確認いただくことをお勧めいたします。
レポート「Chinese Perceptions of Stealth: Shaping Defenses Against U.S. Capabilities and Indigenous Developments」は・・・
●中国軍は米軍のF-22、F-35、B-2等のステルス機を重大脅威と認識も、適切なレーダーやセンサー網を整備すれば対抗可能と考えている。また米軍機を模倣するように、中国産ステルス機(J-20、J-35、将来のH-20など)の開発を同時並行で進めている
●中国側の「ステルスは対処可能」との認識は、1999年のユーゴスラビア紛争でのF-117撃墜が背景にあり、中国文献は同事案の頻繁に引用して「ステルス機は無敵ではない」「低周波レーダーで発見可能」と主張している。ただ本撃墜事案の主因はF-117運用上の問題(同じ飛行ルートの反復使用や任務計画の欠陥)であり、ステルス技術そのものの限界を示すものではないことへの認識が欠落している
●中国のステルス機対策は、レーダー性能やセンサー監視網構成の技術的側面に特化しており、実際に「VHF/UHF帯レーダー」「パッシブセンサー」「テラヘルツセンサー」「AIを活用した統合防空システム」などの技術開発に取り組んでいるが、これらセンサー等技術に関し科学的に明確に指摘されている「探知できても追尾できるとは限らない」「射撃管制に必要な精度は別問題」「実戦環境での性能は不明」等の問題に触れていない
●更に、米軍ステルス機投入と一体的に実施される「妨害電波・デコイ・電波管制」等によってセンサーに生じる問題も無視している様に見える
●また中国製ステルス機開発に関しては、ステルス形状・ステルス塗装などの機体自体のステルス技術や「レーダー・ミサイル・センサー」関連の議論が頻出するが、「電子戦、ISR、ミッションプランニング、指揮統制(C2)、パイロット訓練」を含んだ議論や、敵を先に発見して必要な行動
に備える重要アセット「AWACS・衛星・電子戦機・空中給油機」等との連携についての検討が見られない
●また「戦術開発・部隊訓練&練度」に関する議論は極めて少なく、「敵防空網への侵入方法・電子戦との連携・脅威回避」など「戦闘経験」を必要とする事項に関しては未成熟で、「運用上の無形要素(intangibles)」を軽視している。これに伴い「作戦適応力・指揮官の判断能力」にも疑問符が付く
●つまり、中国軍はシステム戦(systems warfare)との概念を最近重視しているにもかかわらず、ステルス問題になると技術偏重の議論に終始する傾向が強く、「ステルス機探知技術」「米軍ステルス機の模倣」に相当投資をしているが、「ステルス機を運用する側の思考」「実戦での適応」「電子戦・ISR・C2を含めた総合運用」の理解は十分ではない可能性がある
●米軍も、ステルス機の機体技術や対ステルスセンサー技術側面だけに注目して依存するのではなく、統合作戦能力・電子戦能力・ネットワーク力・作戦計画力・訓練演習等の分野での優位を維持する着意が不可欠
●以上のように、中国側のステルス認識は「中国の対ステルス技術は大きく進歩し、米国ステルス機は探知可能で、米軍のステルス優位は縮小している」と考える傾向があり、台湾有事などでより強気な判断を下す可能性がある。また中国が自軍の能力を過大評価していれば、米軍介入を過小評価し、より高いリスクを取る可能性や危機がエスカレートする可能性がある
●中国軍はステルス技術面で確実に進歩している。しかし、その進歩を作戦全体の中でどのように位置づけ理解するかには問題がある。上記の分析は関連する中国軍の文献レビューに基づくもので、中国側の分析には誤解・過信・偏った解釈が含まれているが、今後もこのような西側から観察可能な手段で継続したモニターが必要だ
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米軍によるベネズエラ大統領捕獲&逮捕作戦で、ベネズエラが配備していたステルス機も探知可能との中国製レーダー網(中国製JY-27レーダーやロシア製S-300VM防空ミサイルなど)が、あっさりと電子戦を伴ったステルス機攻撃により破壊され、中国製センサー網の信頼性が話題となりましたが、Ecklebe少佐はレポート内で言及していません。しかし同少佐の分析はベネズエラ事案と合致している様に思います。
「Operation Absolute Resolve:絶対的な決意作戦」では、事前の電子情報収集(SIGINT)→EA-18Gによる電子攻撃→ステルス機侵入→防空網指揮統制への攻撃→SEAD(敵防空制圧)との流れが戦端が開かれ、その後のヘリによる特殊部隊突入作戦を成功に導いています
本レポート筆者の米空軍大学CASI(China Aerospace Studies Institute)のDerek Ecklebe少佐は、2008年空軍士官学校入学(推定36歳)で、士官候補生時代に中国語を専攻したほか、中国に1年滞在経験がある中国語(北京語)能力がある人物で、CASI所属前はB-2ステルス爆撃機の戦術・運用・ステルス性・電子戦等担当の兵器システム幹部だったとのことです。
2025年にCASI配属になったばかりですが、前線でのステルス機運用は、電子戦・任務計画・指揮統制・訓練・経験を含めた総合作戦能力だとの強い思いが前面に出ているレポートは、同少佐の部隊経験に基づくもののようです。このような中国脅威を煽るような視点でなく、中国軍の実態に迫ろうとする取り組みは、内容の是非に関わらず、大いに歓迎されるべきものだと思います。
ベネズエラ大統領捕獲作戦
「統合参謀本部議長のブリーフ」→https://holylandtokyo.com/2026/01/05/13611/
ご紹介したCASIレポート掲載のURL
https://www.airuniversity.af.edu/CASI/Display/Article/4500883/chinese-perceptions-of-stealth-shaping-defense-against-us-capabilities-and-indi/


6月8日付で米空軍大学CAIS(中国航空宇宙研究所)のDerek Ecklebe少佐が、「中国におけるステルス技術の認識」との実質35ページのレポートを発表し、中国軍は米軍ステルス機を重大な脅威と感じ、米国ステルス技術を深く研究しており、ステルス機探知センサー網と国産ステルス機の開発に注力しているが、
