米英の潜水艦発射戦略核SLBM共有の将来に懸念の声

米欧関係の不協和音受け、米英トライデントSLBM共有の将来に危機感
核兵器専門家が英首相の辞任表明受け共有体制継続の重要性主張
米国製核兵器の米英共有は英国のただ乗りではなく米国にも重要と説く

6月23日付DefenseOneが、米シンクタンク(Carnegie国際平和財団)の核政策担当研究員の意見投稿を掲載し、6月11日の英国防相の辞任(不十分な国防予算に怒りの辞表)や22日のスターマー英首相の辞任表明、またトランプ米国政権と欧州諸国との不協和音が伝えられる中、米英だけでなく、米NATOや米欧安保関係の中心に位置する「米英によるトライデントSLBMの共有配備」の維持に危機感を抱く同研究員が、

60年以上の歴史を持つ同核兵器の共有は、一般に英国による米国依存の典型の様に理解されることが多いが、米国にとっても極めて重要な意味を持つ政策であり、両国に確固たる利益をもたらすこの核政策が断絶するようなことになれば、米国も大きな損失を受けることになる、と警鐘を鳴らしています。

「まんぐーす」は、両国の高度な核兵器政策がどの程度危機に直面しているのか等について語る知見を持ち合わせていませんが、英国が極めて深刻な経済的状況に直面し、過去10年で6名も首相が交代する異常事態にある中で、このような安保政策上の極めて巨額で重い案件が英国首相に突き付けられている現実を学び、それに比して日米伊の次期戦闘機開発GCAPが如何に「無理筋な案件か」を考える機会とすべく、取り上げることとしました。

まず前提となる「英国の核兵器体制」は
●英国は、米国から提供の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「トライデント」搭載可能な戦略原潜を4隻保有し、常時1隻以上を海中に配備し、核攻撃を受けた際の「第2撃能力」を確保する政策
●核兵器使用の判断は、基本的に米国と歩調をそろえるものの、英国独自の判断で核使用を決定するオプションも保持する方針維持

●現在はヴァンガード級原潜4隻を保有も、老朽化に伴い、ドレッドノート級原潜4隻の建造に着手し、1番艦を2030年代初頭に実戦配備予定。この原潜更新の総経費は約6兆円
●英国原潜に搭載の弾道ミサイル(SLBM)「トライデントD5」は、米海軍戦略原潜にも搭載のロッキード社製で、英は初期調達費用、ミサイル延命費用、毎年の維持費など数千億円を負担

Carnegie財団Jamie Kwong研究員は米国にとってのSLBM共有の意義を・・・
●前述したように、英国は米国のSLBM技術を利用するため多額のコストを負担している。無論、英国が独力でSLBMを開発し維持するには、遥かに莫大で負担不可能な投資が必要だったろうが、米軍が同兵器を維持する上で必要不可欠な部分を担っている。
●英国は、核兵器関連技術において世界最高水準の専門知識を保持しており、米英研究者間の同兵器に関する検討会や演習等を通じ、米国は同兵器維持改良における効率的な手法を英から学んできた。特に2024年に改訂された関連協力協定により、艦艇用原子炉技術分野で英が大きな貢献をすると期待されている

●米から英への核兵器の提供は、NATO防衛に寄与する前提で開始されたが、米国は今も英国核戦力が「西側同盟の核防衛力を強化する」と評価している。
●英国の核兵器は英国独自判断で使用可能なオプションを残しており、抑止対象であるロシアの意思決定を複雑化させる点で、ロシア抑止に貢献しており、NATOの核政策の中核をなすとみなされている。ロシアが英国独自判断での核使用の可能性を信じている程度は不明だが、ロシア側の脅威見積もりに影響を与えていることは間違いない

●仮に米英同盟の中核をなす「SLBM共有」が途絶えた場合、両国関係に大きな打撃となり、例えば対イラン作戦でも米軍航空機の重要拠点となったロンドン西方のFairford空軍基地やインド洋の大型爆撃機展開拠点Diego Garcia島へのアクセスにも影響が出る等、欧州戦域を超えた軍事的影響が出る懸念が生じる

「まんぐーす補足」
●米英豪のAUKUS枠組みで決定済の「豪州への攻撃原潜(通常兵器の未搭載)提供」で、英は攻撃型原潜の派遣や新型艦開発でも大きな投資を約束済
●まず「豪西部の拠点に英攻撃原潜をローテーション展開」し、次段階として「新型潜水艦SNN-AUKUSを3国で共同開発:英国SSN-AUKUSはBAEシステムズのバロー造船所で建造」
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日英伊の次期戦闘機共同開発GCAPは、3か国政府機関連合GIGOと3国合弁企業Edgewing間の開発事業請負契約が、本来は昨年2025年中に締結完了予定だったにもかかわらず、英国の資金確保難で遅れに遅れており、4月2日にギリギリで、6月末までの「時間稼ぎの」暫定的3カ月間契約(約1400億円相当)で息をついているところです。

2026年6月15日から17日まで開催されたG7エビアン・サミットの直前に、高市総理が英国とイタリアを訪問され、GCAPもアジェンダになったと報じられておりました。GCAPは多忙な総理の力を借りるような重要案件なのでしょうか? 私は日本や世界にはびこる「戦闘機命派」の存在を、心の底から疎ましく思います。

暫定契約が切れる6月末までに、どのような形でGCAP契約が「落としどころを見出す」のかわかりませんが、3か国の「体面」を守りつつ、「2035年提供開始」を「より細く長く」の「形だけ存続」形態になるのでは・・・と邪推しております

仏独主導の核抑止に関する「欧州安保体制再構築」
「Nuclear Steering Group設置」→https://holylandtokyo.com/2026/03/10/14095/

GCAPと英国関連
「3か月暫定契約」→https://holylandtokyo.com/2026/04/06/14400/
「米報道:遅延と経費増」→https://holylandtokyo.com/2026/03/13/14152/
「伊が英国の姿勢を酷評」→https://holylandtokyo.com/2026/02/02/13845/
「英が踏みとどまる」→https://holylandtokyo.com/2024/11/12/6529/
「英伊が日本に:逃げるな!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/

仏独西のFCAS空中分解
「中止決定:体面を保ちつつ」→https://holylandtokyo.com/2026/06/10/14959/
「仏中核企業トップもあきらめ感」→https://holylandtokyo.com/2026/03/09/14076/
「独首相はもう終わりだと」→https://holylandtokyo.com/2026/02/27/14019/
「独がGCAPへの参加を検討」→https://holylandtokyo.com/2026/02/13/13929/
「FCASは仏独対立で分裂危機に」→https://holylandtokyo.com/2025/07/03/11970/
「ベルギーも関与へ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/26/4766/
「独仏中心に第6世代機開発」→https://holylandtokyo.com/2018/04/11/7020/

防衛省のGCAP説明webページ
https://www.mod.go.jp/j/policy/defense/nextfighter/index.html

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