防研論考:中国軍2トップ(張又俠と劉振立)粛清と軍人不在の中国指導体制

「真相は闇の中」「解き明かすことは不可能」と潔く大前提を確認しつつ
1949年中華人民共和国成立以来初の中央政治局と中央軍事委員会に実質軍人不在を解説
短期的な作戦能力低下を容認し、軍を完全統制下に置くこと選択か

2月3日付防衛研究所「NIDSコメンタリー」が、中国研究部・五十嵐隆幸専門研究員による「中国軍最高幹部粛正と統制の行方」との論考を掲載し、1月24日に中国共産党中央委員会の決定事項として発表された、中国軍の2トップと言える張又俠(党中央政治局委員兼中央軍事委員会副主席)と劉振立(中央軍事委員会委員兼連合参謀部参謀長)の「重大な紀律・法律違反の疑いで立件」について取り上げ、

結果として、1949年に中華人民共和国が成立以来初となる、中央政治局(約25名編成で軍人ゼロ)と中央軍事委員会に実質軍人不在(7名編成中、現在は習近平と軍監視役の政治将校2名のみ)との前代未聞の状態となった経緯や、習近平の狙いについて「考察を試みて」いますので、筆者が「真相は闇の中」「解き明かすことは不可能」と潔く認める、中国の現状を見る基礎参考資料として、文書表現を一部簡略化してご紹介いたします。

【胡錦濤による軍人事「制度化」から、習近平の恣意的人事への回帰】
●2004年から8年間、中央軍事委員会を率いた胡錦濤は、鄧小平の人事制度に基づき、高級軍人幹部選考において情実を避けた公平な選抜を追求し、この間に昇任基準等が守られる「軍人事の制度化」が進展
●しかし2012年に習近平が就任後、当初は「制度」に従ったが、政権長期化に伴い、台湾侵攻正面部隊がある福建省の部隊経験者を「抜擢や優遇」するケースが増え、同人脈は「福建閥」と揶揄されるようになった。

【習近平就任1期目と3期目の反腐敗撲滅の違い】
●就任当初から習近平が取り組む「腐敗一掃」における腐敗軍人排除において、主席第1期目には江沢民や胡錦濤時代に選抜された軍人を「粛正」することで、「歴代指導者の影響力排除」を狙ったと説明されてきた
●しかし2022年の主席第3期目以降に摘発の軍幹部は、いずれも習主席が選抜した軍人や「福建閥」系列で、1月26日摘発の軍人トップ張又俠は、主席の幼馴染で腹心とされてきた人物である(表1)
●以上の様に、習近平の軍人事は、軍内で影響力を持つに至った実力者を排除し、他に忠誠と服従を求め、軍の直接的掌握を試みる動きとして位置づけることができる

【建国以来初の中央政治局と中央軍事委員会に実質軍人不在状態】
●1月の張又俠と劉振立の失脚により、中央軍事委員会は習近平と副主席1名のみの体制となり、中国共産党の最高指導機関である政治局からも軍人(張又俠)が姿を消し、中華人民共和国成立以来の党軍関係の制度的安定を支えてきた枠組みが様変わりした(表2)
●注目すべきは、張又俠と劉振立が1979年の中越戦争を経験した最後の世代で、戦争の惨禍や混乱を実体験として知る軍人として、軍事行動に慎重な判断を行い得る存在であった点である。張又俠が台湾への大規模軍事行動に慎重と見られていたことも、世代的背景を考えれば不自然ではない。両名の失脚により軍事的判断に対する慎重論や異論を述べる層がほぼ消滅し、抑制や修正や過信を防ぐ機能脆弱化が懸念される

【腐敗問題としてだけでなく、習近平が何を最優先しているのか】
●台湾想定訓練を積んだ福建省部隊経験者や、中越での実戦経験世代を含め、習近平が影響力と人脈を有する層を一挙に排除した事実は、短期的作戦能力低下を許容するリスクを冒しても、軍を完全統制下に置くことを優先選択した可能性を示唆
●または、習近平が、過去の実戦経験誇示の老兵より、近年の厳しい軍事環境下で育ち、ハイテク兵器を使いこなす若手に期待している可能性もある。短期的戦力低下を許容し、中長期的な軍再編を目指すものとの読みもある。ただ、若手の軍事行動への心理的ハードルが下がるのであれば、中国の危機管理が不安定なものへと転じる可能性を示唆する
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中国経済の崩壊が加速度を増す中、2025年半ばころから、習近平体制の弱体化や中国指導部内の権力闘争の噂が漏れ聞こえ、中南海に軍隊が派遣されクーデター作戦が・・・といったYouTube映像まで流布する2026年の年明けを迎え、日本が衆院選で大騒ぎの中、習近平亡き後の後継有力候補だと主張する研究者もいた張又俠(Zhang Youxia)失脚が発表されるなど、中国国内情勢がどうなっているのかさっぱりわかりません。

2月12日には、米中央情報局CIAが中国軍に情報提供を呼び掛ける動画を公開(https://www.youtube.com/watch?v=lLixHCrkot0&t=1s)するなど、明らかに普通ではない「異常」な局面を中国が迎えていることに間違いないと思われます。

中国特派員を駐在させているはずの日本メディアは、相変わらず「報じない自由」を行使していますが、日本の中国研究者の皆様には、日頃の研究成果を踏まえ、情報発信をお願いしたいと思います。

防衛研究所の中国関連論考
「レーダー照射事案」→https://holylandtokyo.com/2026/01/06/13587/
「空母福建EMALS と操縦者育成課題」→https://holylandtokyo.com/2025/10/23/12952/
「イラン核施設攻撃に中国はなぜ抑制的」→https://holylandtokyo.com/2025/07/30/12246/

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