就任2日目のGolden Dome 計画直属担当大将が語る

「2029年1月までに完了」に向け、まずは指揮統制 network の構築
宇宙配備迎撃兵器は、技術的に困難も実現不可能ではない

トランプ政権が 5月に打ち出した米本土の新しいミサイル防衛構想「Golden Dome missile defense program」で、国防副長官直属の担当責任者(direct reporting program manager)に任命された Michael A. Guetlein 大将(直前は米宇宙軍 No2)が、就任2日目の7月22日に早速初講演(@ Space Foundation conference)し、

「Golden Dome計画で目指すビジョンはこれです」と詳細に説明できるような「客観的な全体像:objective architecture」を就任60日後までに提出するよう Feinberg 国防副長官から求められており、米宇宙軍での経験を振り返りながら、核兵器開発(Manhattan Project)に比類する米国防省史上最大級のプロジェクトである同計画を、如何に遂行するか熟考していると述べました。

Golden Dome構想は、従来の米本土ミサイル防衛計画を拡大発展させ、弾道ミサイルだけでなく、極超音速ミサイルや巡航ミサイルの全てから米本土を防衛するもので、米宇宙軍が中心となり、そのミサイル管戒衛星やミサイル追尾衛星の他、敵ミサイルを打ち上げ初期段階(boost-phase)で無効化する宇宙配備の迎撃兵器配備までを視野に入れた壮大な計画であり、

米宇宙軍のアセットだけでなく、ミサイル防衛庁 MDAや陸海空軍が保有する各種レーダーやネットワークや迎撃兵器全てを束ねて米本土防御網を構成するプロジェクトでもありますが、2029年1月(現大統領の任期末)までに完了するとの野心的な目標(無茶苦茶な)を掲げており、その総経費は$100 billion (15兆円)を裕に上回るだろうと言われる中で、5月の Golden Dome 構想発表以降、内外から大きな注目を集め、その巨額資金を目当てに様々な「輩」や「思惑」がうごめいている代物です

そんな中で就任2日目のMichael A Guetlein 大将は・・
●(宇宙軍装備の開発や調達を担う) Space Systems Command 司令官や National Reconnaissance Office副長官やミサイル防衛庁MDAの計画幹部としての経験を踏まえ、60日後には Golden Dome 計画の全体像を皆さんに説明できるようでありたいと考えている
●本構想を実現可能にする技術は既に存在していると思うが、その技術を米本土防衛の実用に耐え得るレベルに実現できたことは一度もない(never been brought to bear on this problem set, to protect the homeland)

●Golden Dome 計画実現には、核兵器開発のManhattan Project級の国家レベルの努力と調整が必要で、その組織作りこそが最大の課題だ。そのため、国防副長官は私に、予算・調達・雇用・技術や施設整備に関する権限を付与してくれている。

●まず米軍全体の既存システムの連携連接に注力する。指揮統制という基礎的問題を解決して前進することが重要。このネットワークの「段階的なデモンストレーション」を6ヶ月ごとに行う
●そして、陸海空軍そして海兵隊の間で、一度も統合されたことのない迎撃ミサイルの統合ネットワークと統合センサーネットワークを構築し、射撃管制ループを完結させる必要がある。

●Golden Dome 計画で最も注目を集め、物理的にも技術的にも不可能と専門家が批判する「宇宙配備型迎撃ミサイル構想」は、最大の技術的課題である。
●しかし、物理的原理については全ての要素で実現可能性は証明済。未証明なのは、まず経済的に実現可能かどうか、そして次に大規模に実現可能かどうか、である

以上の発言に対し7月23日付米空軍協会web記事は
●対中国を念頭に、指揮統制に関し米軍は、既に全ドメイン指揮統制 JADC2との名のもとに、(最低限の)連接に取り組んでいるが、困難を伴い、未だ道半ばである

●「宇宙配備型迎撃ミサイル構想」に関し、軍需産業界はその証明に躍起になっており、Northrop Grumman 社 CEOは7月22日に、同社は既に迎撃ミサイルの地上試験を開始とアビール

●「宇宙配備型迎撃ミサイル構想」に関し、空軍省幹部は7月22日に議会で、業界に斬新なアイディアを募集する等を計画中で、宇宙軍も迎撃ミサイルに関する市場調査を実施中で、企業との集中面談実施イベントも準備中と説明
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「未証明なのは、まず経済的に実現可能かどうか、そして次に大規模に実現可能かどうか、である」・・・このような課題を、大将とは言え、1人の米軍人に丸投げする、乱暴な話だと思います

トランプ大統領の任期が切れる「2029年1月までに完了」が期限ながら、今から「斬新なアイディアを募集」「市場調査」「業界への聞き取り」とは、この時点で既に$100 bilion(15兆円)以上の投資を予定するに相応しいテーマとは言い難いと思います。

そんな中でも、辛い立場を顔にも出さず、真摯に粛々と職務に取り組む姿勢を見せているGuetlein 大将に、頭の下がる思いです。

お願いですから、同盟国に「関税カード」を絡めて、無理難題を吹っ掛けないでね・・・。

NG 社もロッキード等の軍需産業の皆様・・・、巨額資金に目がくらんで、実現可能性がない提案をアピールするような「悪乗り」はしないでね・・。

トランプ政権「Golden Dome 構想」
「ミサイル防衛テコ入れ加速の大統領令」→https://holyandtokyo.com/2025/02/14/10810/
「米北西部に OTH レーダー設置へ」→https://holylandtokyo.com/2025/07/10/11377/

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