毎年約200億円を支払うことで英とモーリシャスが合意
1965年に力で併合した同島含むChagos諸島の領有権は放棄
元々は英領モーリシャスの一部だったChagos諸島は、モーリシャスが 1968年に独立する3年前に英国に約6億円で(強制的に⁉)売却され、同諸島の住民約4000名はモーリシャスなどに強制移住させられた経緯があり、旧島民の救済などに向けてモーリシャスと移譲交渉が長年続けられてきたところでした。
Diego Garcia島の基地は、米英軍が共同利用するインド洋の重要拠点で、B-2ステルス爆撃機のステルス表面整備が実施可能な特殊格納庫4棟が設置され、港湾施設も水深を深く改良し大型艦艇や潜水艦が補給や修理作業可能に整備される等々の投資を経て、軍事的に極めて重要な拠点となっており、
過去には 1991~93年の湾岸戦争、2001年の米中枢同時テロを受けたアフガニスタン空爆、最近ではイエメンの親イラン民兵組織フーシ派に対する攻撃の出撃基地となっているほか、イランのテヘラン(約4200kmの距離)等を爆撃機の行動半径内に置くことが可能なこともあり、米英軍にとって不可欠な前線基地です。
また「通信・情報」面でも重要な位置を占めており、細部は不明ながら、通信電磁スペクトル衛星の管理施設、GPSの重要地上局、宇宙軍の地上型電気光学式深宇宙監視システム(GEODSS)の一部が設置されているほか、核実験監視装置も設置されている模様です。
最近では、中国がChagos諸島への関与を求めて様々な動きに出ているようで、22日発表のモーリシャスとの合意に向けては、米英だけでなく、インドや Five Eyes partners(米、加、豪、NZ)にも支持を取り付け、万全の態勢で臨んだと米国防省がコメントを発表しているようです
この合意はあくまで英国とモーリシャス間のものですが、米軍基地が存在する点から米国が深く絡んでおり、最近の英国首相訪米時にも、トランプ大統領との会談の重要議題として取り上げられ、22日の合意発表に際してはルビオ国務長官やヘグゼス国防長官がコメントを寄せています
以下では合意内容から簡単に、Diego Garcia 島利用に関連する部分をピックアップいたします
Diego Garcia島と同島の基地及び周辺の島に関する合意概要
・英国は Chagos 諸島の主権をモーリシャスに移譲する一方で、英国と米国は今後 99年間、Diego Garcia島の軍事インフラへの排他的アクセスを確保し、更に40年間の延長オプションの権利を保有する。
・英国政府は年間リース料(約 200 億円)を支払う一方で、英国はモーリシャスによる基地運用へ如何なる干渉も認めない
・モーリシャスは島の周囲 24mmに緩衝地帯を設定し、その内部では、英国の同意なしに如何なる建物や物も建設・設置できないし、基地運用を妨げる活動は許可されない
・また、厳格な共同意思決定プロセスと英国の承認なしに、Diego Garcia島近傍の Chagos 諸島内で開発を行うことはできないし、外国の治安部隊の駐留は、民間人、軍人を問わず厳重に禁止する。更に、基地運用低下を決して招かないように行動する義務を負う。
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英国は1965年にモーリシャスから 6億円でChagos 諸島を購入したと主張し、今まで無理やり維持してきた「Chagos諸島に対する主権」を維持しようとしましたが、様々な国際裁判所や法廷は、英国の主張を退けてきており、訴訟において「英国が主権に関する法的立場をうまく守れる現実的な見込みはない」と判断した結果が今回の合意ということらしいです。
それでも上記合意は上から目線の「えぐい」内容で、これが国際政治の厳然とした一側面でもあります。
Diego Garcia島関連の記事
「ミニ原発の候補地」→https://holylandtokyo.com/2022/04/19/3147/
「事例:B-2爆撃機展開」→https://holylandtokyo.com/2020/08/13/522/

