防衛装備移転三原則と日本製航空機の外国軍使用事例

2026年4月21日、日本政府(高市早苗内閣)は、殺傷能力のある防衛装備品の輸出を原則可能とする「防衛装備移転三原則」の運用指針改定を閣議決定しました。

これにより、これまで制限されていた救難・輸送・警戒・監視・掃海の「5類型」が撤廃され、戦闘機やミサイルなどの輸出への道が開かれました。

【閣議決定の要点と背景】
●目的: 防衛産業の復活や国際共同開発の促進、防衛面での国際協力強化を狙いとする。
●殺傷武器の原則解禁: 敵を殺傷したり物を破壊したりできる「武器」の輸出が、厳格な審査のもとで原則可能となる。
●「5類型」の撤廃: 非戦闘目的に限定されていた従来のルール(救難・輸送・警戒・監視・掃海)が撤廃された。
●厳格な審査: 殺傷能力のある武器の輸出は、NSC(国家安全保障会議)の4大臣会合で審査され、国会へ通知される仕組みとなる。

以下では、この機会を捉えて歴史を学ぶべく、防衛研究所による2025年1月の論考を掘り返してご紹介いたします。
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防衛研究所のNIDSコメンタリーからご紹介
日本から外国軍に直接移転(輸出)された事例ないが

2025年1月31日付の防衛研究所「NIDSコメンタリー」枠で、海上自衛官で戦史研究センター研究員の石原明徳氏(立命館大史学専攻卒)が「1980年代に軍事運用された海外移転航空機 —— 過去事例が語る防衛装備移転への歴史的示唆」と題する論考を発表し、日本製造航空機が外国軍で使用された事例として、「YS-11」「MU-2」「F-104J」の3ケースを紹介していますので取り上げます。この3ケースは、このほど閣議決定された「防衛装備移転三原則」によって可能となった、日本から外国軍に直接移転する事例ではありませんが、先人の苦労を学ぶべくご紹介しておきます。

本来であれば、石原氏が卵の「殻」「白身」「黄身」に例えて説明を試みている、「対外経済政策」「ココムなど安全保障貿易管理政策」「防衛装備移転政策」の歴史的背景や経緯に関する部分や、上記3例ケースの主舞台となる1980年代の「新冷戦」時代が、1976年の「武器輸出三原則等」設定後の日本にとって、米国からの強い期待(圧力?)を受けた「防衛費増額」「デュアル・ユース技術の技術供与」「米国に対する武器輸出三原則等の例外化」の時代であった等の解説にも触れるべきですが、まんぐーすの知識不足もあり省略させていただきます。(ご興味のある方は、ぜひ原文をご覧ください。)

まず、石原氏が様々なしがらみから「輸出」ではなく「移転」との用語を使用し、「『汎用品』海外移転航空機が二次移転され、軍事運用されたもの」と分類する「YS-11」と「MU-2」のケースをご紹介。

【YS-11の事例】
●1965年に就航開始し、計182機が製造された戦後初の国産旅客機である「YS-11」は、自衛隊機として海上・航空自衛隊が計23機を運用した
●世界的評価が高かった同機は、(民間旅客機として)就航直後の1965年からリース契約を含み世界12カ国、16社の航空会社に計75機が海外移転(輸出)された

●中でも欧州最大の導入航空会社となったのがギリシャのオリンピック航空で、最大10機を保有していた
●同機の優秀さを見たギリシャ空軍は、「C-130」輸送機を補完する狙いで、1980-81年に同航空会社から6機のYS-11を購入し、VIP専用輸送機などとして2010年まで運用した
●ギリシャ空軍webサイトでは、欧州唯一の日本製軍用機使用国として、YS-11を紹介している

【MU-2の事例】
●三菱重工が民間機として開発した小型多用途機「MU-2」は、1965年就役から1987年生産終了まで762機も生産され、陸上・航空自衛隊でも計53機が運用された。
●MU-2は米国を中心に小型民間機市場で高い評価を受け、計26カ国に703機も海外移転(輸出)されている。同機は今も現役で、三菱重工は米国内に3カ所、欧州、南米に各1カ所のサポート拠点を維持している

●1980年代に少なくとも4カ国の軍での軍用事例が確認されている。
アルゼンチン軍は1982 年のフォークランド戦争時、多数の民間機を指揮下で運用していたが、民間機航空隊「不死鳥航空隊」(Escuadrón Fénix)等に所属して計4機のMU-2が作戦投入され、細部は不明ながら、フォークランド諸島周辺で「プカラ」軽攻撃機編隊の先導任務等に従事したことが記録されている
ドミニカ空軍で1985年から、軽輸送機としてMU-2J型機を少なくとも1機が使用されていた模様だが、機体の来歴等は不明

スウェーデン軍では、軍事支援役務(OPS:Operational Contract Support)のため、民間軍事会社(Private Military Company または Private Military Contractor:PMC)保有機が軍指揮下で運用された事例があり、1980年代に2つのPMC提供の10機の「MU-2」が標的曳行・電子戦訓練役務のために使用された記録がある
(なお、欧州には10カ国に計35機が直接移転(輸出)されているが、10機すべての来歴はわかっていない)
米空軍も1987年からフロリダTyndall空軍基地で、PMC提供の7機を訓練支援のため使用した記録がある。

次は石原氏が、一般的な海外移転とは異なる、「返還義務により米国に返還された用途廃止品が、米国により二次移転され軍事運用されたもの」と紹介する「F-104J/DJ」の事例を取り上げます。

【F-104J/DJの事例】
●同機は完全輸入、ノックダウン/ライセンス生産の形式で航空自衛隊に導入され、国内生産の主契約は三菱重工が担当し、1962年から1967年の短期間に230機が製造された
●このライセンス国産には米国から資金援助が行われことから、用途廃止後には米国に返還することと定められており、実際には再利用不能として日本で処分されたものも多かったが、状態の良い機体は米軍への返還指示を受けた

●1979年にカーター政権が米中国交回復と米台湾断交を行ったが、「台湾関係法」により台湾の安全保障への関与と武器売却継続は保障し、台湾空軍の老巧化「F-104」の更新用に、米国から「F-104」が台湾に提供されることとなった。台湾はF-16を熱望したが、次のレーガン政権になっても、対ソ優先でF-104提供を進めた
●台湾には、米軍が使用した同機以外に、世界各国から用途廃止で米国に返還された様々な形態の「F-104」が提供され、例えば西独の「F-104G」66機、デンマーク空軍「F-104G」18機、ベルギー空軍の用途廃止「F-104G」24機であり、日本が使用した37機(「F-104J」31機、「F-104-DJ」6機)も台湾に売却された。ただ欧州のG型と日本のJ型は部品互換性が低く、1991年までの5年間のみ使用された
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石原氏は論考の最後に、タイトルの「過去事例が語る防衛装備移転への歴史的示唆」部分を語ろうとしていますが、「現在の防衛装備移転の枠組みに当てはめると、双方とも、卵の「黄身」にあたる防衛装備移転政策には完全には合致しない態様だと言えよう」とのご本人の言葉にあるように、なかなか書き辛そうな厳しい部分で、まんぐーすの知識不足もあり取り上げません。

本ブログでもご紹介した1月21日付Defense-Newsが、日英伊3か国戦闘機(GCAP)開発を巡る、日本国内の「陰鬱」な「GCAPへの沈黙」を紹介し、同サイトで10日間ぐらいアクセス数1位を保っていましたが、別の側面から「防衛装備移転」(つまり武器輸出)にアプローチを試みました。

GCAPと英国巡るゴタゴタ
「暫定契約で息継ぎ&時間稼ぎ」→https://holylandtokyo.com/2026/04/06/14400/
「米報道:遅延と経費増」→https://holylandtokyo.com/2026/03/13/14152/
「伊が英国の姿勢を酷評」→https://holylandtokyo.com/2026/02/02/13845/
「英が踏みとどまる」→https://holylandtokyo.com/2024/11/12/6529/
「英伊が日本に:逃げるな!」→https://holylandtokyo.com/2023/02/14/4299/

その他GCAP関連
「ポーランド参画希望」→https://holylandtokyo.com/2026/03/31/14284/
「伊が開発費3倍増審議」→https://holylandtokyo.com/2026/01/23/13760/
「No2伊代表が語る」→https://holylandtokyo.com/2025/06/13/11826/
「陰然な雰囲気のGCAP」→https://holylandtokyo.com/2025/01/24/10678/
「やっと管理体制に合意」→https://holylandtokyo.com/2023/12/18/5352/

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