トランプ政権が追求する効率化の対象候補
21世紀以降だけで士官が2割も急増中
にもかかわらず開発調達や施設管理等で改善なし
肥大する司令部の典型である米陸軍の「施設管理司令部IMC:Installation Management Command」(兵士3万人と文民職員7万人が勤務)や、「陸軍調達団:Army Acquisition Corps」(1600名の士官や高級文民職員が所属)が、期待された任務を適切に果たしているとは到底言い難いと酷評しています。軍事記者の主張のみの非常に短い記事で注意してみる必要がありますが、スタッフ組織の肥大化は組織の典型的な非効率化の兆候ですので、ご紹介しておきます
12月10日付DefenseOne記事によれば
●2000年以降で陸軍士官の数は2割増加し、そのほとんどは前線部隊ではなく各種司令部で勤務する幕僚ポストに充足され、かつ、実際に作戦を遂行する前線部隊勤務の中堅士官を引き抜いて司令部勤務の幕僚数を増やしてきた結果、9.11事案以降に司令部勤務の士官数は6割も増加。1965年から2018年の間では、米軍の士官数は46%増加し、将官の数は大将が114%、中将で149%増加している
●結果として、2024年には陸軍兵士の6人に1人が士官となり、陸軍人件費の約3分の1は、士官以上の給与と手当が占めるに至っている。ただ中堅士官を吸い上げて拡大している各種司令部は、効果的に機能しているとは言い難い。以下で2例を示す
●2006年に創設された陸軍施設管理司令部(IMC)は、それ以前に各駐屯地司令官が上級司令官の監督下で施設管理業務を行っていた体制を改め、IMCが一元的に専門的知見を基に同業務を遂行し、「統一された事業構造を適用して米陸軍施設を管理し、環境を維持し、軍事コミュニティの福利を向上させる」ことを使命として設立された
●IMCは中将をトップとし、副司令官に少将、准将が参謀長を配置した3万人の兵士と7万人文民職員を擁する巨大組織だが、2006年以降の結果は期待を大きく下回り、陸軍は近年、施設管理の「危機」の中にある。
●1989年創設で、1,600人の士官と多くの上級文民職員がリードする陸軍の調達部隊Army Acquisition Corpsは、創設以来、Crusader野戦砲システム、将来戦闘システム、Ground Combat Vehicle、RAH-66コマンチヘリ、XM1299延長射程砲システムなどの開発に数千億円を浪費して大失敗を繰り返しており、ある陸軍長官が死屍累々の状況を「失敗の物語」と表現するほど成功からほど遠い存在である
●そしてその改善のためと称し、陸軍はもう一つ大将が率いる司令部「Futures Command」を2018年に立ち上げ、既存の調達組織の指導監督を強化することとした。ただ、配下に置かれた既存開発調達組織「将来構想センター」「戦闘能力開発司令部」「戦闘研究所」「研究開発工学司令部」「資材システム分析局」を含め、米陸軍開発調達分野でのパフォーマンスか改善されたとは到底言い難い
●これら司令部組織の拡大とそこで勤務する幕僚数の増加により、前線部隊に対する報告要求事項などの業務要求が増え、前線勤務の下級士官たちに処理不可能な負荷業務を押し付けることとなっており、前線部隊が本来優先すべき訓練や教育が疎かになったり、報告データの捏造など不正を誘発する原因となっている。そして不満がたまった若い士官達の離職増加を招いている
●米陸軍は肥大化した司令部を合理化し、民間企業が合言葉にしている「スリムでフラットな組織」の導入を考えるべき。これはトランプ新政権の優先事項でもある
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施設管理など米5軍全てに似たような問題があるようですし、開発調達に至っては「何をやってもダメな」米海軍や、「史上最悪のコスパ装備F-35」とイーロンマスク氏から酷評される米空軍も、同様の症状を呈している現状です
トランプ政権が如何なる手法で「政府の効率化」を進めるのか現時点では見えませんが、これは米軍だけの問題ではないことを忘れてはなりません・・・
トランプ政権を見据えた動き
「NGADの検討決定は次期政権に」→https://holylandtokyo.com/2024/12/09/10419/
「イーロン・マスク氏の影響や如何に?」→https://holylandtokyo.com/2024/12/02/10368/