F-35を酷評するイーロン・マスク氏の影響や如何に?

次期政権の政府効率化省主導のマスク氏
11月26日にXで「史上最悪の軍事コスパ」と批判
「多様な人が多様な要求をして設計時から破綻」
「何一つ専門的にできない機体」等々と

11月27日付米空軍協会webサイトは、次期トランプ政権で政府効率化省(Department of Government Efficiency)を主導するイーロン・マスク氏が、同26日から冒頭でご紹介したような言葉で「F-35批判」を再開していることに関し、John A. Tirpak編集長自らの筆による状況整理記事を掲載しています

「再開」とご紹介したのは、マスク氏が4年前の米空軍協会総会(AiroSpace & Cyber Symposium)に講師として招待され、一堂に会した米空軍幹部やOB、更に軍需産業幹部らを前に、戦闘機を支えてきた皆さんには申し訳ないが・・・と丁寧な表現をしつつも、ストレートに「戦闘機の時代は終わった」「将来は自立型ドローンによる戦争となるだろう」「(不可逆的な現実で、)単にそうなるだけだ」と語って聴衆に衝撃を与えたからです。

直近11月26日のX(旧Twwiter)では・・・
●F-35は、多種多様な人々からの、多種多様な要求を強要された、設計時点で壊れたシステムで、何でも出来ると言うが、何一つ専門的にできない機体だ
●いずれにせよ、ドローン時代に有人戦闘機は時代遅れだ。パイロットが死ぬだけだ
(別の投稿では同機を、「史上最悪の軍事コストパフォーマンス」、「自律型無人機との戦いでF-35に勝ち目はない」と表現)

一方で記事はトランプ氏は過去F-35を讃え、
●「レーダーに映らない美しい飛行機で、非常に特別で毎回勝利する」と呼び、前回の大統領時には「非常に多くのF-35を購入した」と自慢
●一貫して武器輸出事業の重要性を強調してきた姿勢から、海外でのF-35の好調な販売実績を繰り返しアピール
●前回の大統領時に、ロッキード社幹部と直接交渉し、F-35の初期ロットの大幅な割引を獲得したことを自慢

また現実のF-35商業的側面に関し記事は、
●米海空海兵隊のほか、共同開発国7か国(資金の協定締結済で計画変更は容易ではない)、FMS購入国は11か国で更に増加の方向にあり、10年以内に欧州では700機(米軍60機を含め)が配備
●F-35製造計画変更には米議会承認が必要だが、ロッキードは全米45以上の州にF-35部品や組み立て工場を分散して地域経済に食い込み、共和党・民主党を問わず、テキサス州、ジョージア州、カリフォルニア州、ユタ州、コネチカット州とフロリダ州等を中心に、熱烈なF-35支持議員も多い

ただ記事は、次期制空機NGADが米空軍内で再検討中とも
●米空軍は(ウクライナや中東での無人機の台頭等を受け)制空権確保策を再考中で、その将来の中核予定だったNGADも、その莫大なコスト推計から再検討中。Kendall空軍長官は9月に、1機450億円レベルだったNGAD価格について、F-35並みに抑制する方向追求を示唆。

●仮にNGAD価格抑制が可能なら、空軍の F-35 計画は根本的見直しの可能性が。空軍は 2001 年設定の調達機数1,763 機変更に一度も言及したことはないが、トランプ前政権下では、空軍調達担当幹部のウィル・ローパー氏が、運用コスト高騰のF-35に関し、最終的な調達数を500 機程度に削減する案を示唆(現時点で米空軍は450機受領済)

●11月18日の週に国防省F-35計画室は、ロッキード社とロット18と19の価格と支払いについて合意に達したと発表しているが、具体的な機数や価格は不明で、契約書への署名も時期未定である。300機程度と推定されるこの契約に、マスク氏の発言等が影響する可能性は十分考えられる
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以上が記事の概要ですが、米国防省も米空軍も、本音ではF-35調達機数を削減したいはずですが、ご紹介したような様々なしがらみの中で、機数を削減すれば1機の価格が跳ね上がるので言い出せないのが現実です。

そんな中で誕生するトランプ次期政権で、イーロン・マスク氏が「政府効率化省」をけん引する人物として現れました・・・。トランプ氏の基本姿勢を加味すれば、海外のF-35購入国に負担を押し付け、米軍はF-35調達を縮小へ・・・との恐ろしい方向性も懸念されます

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