米空軍は大きな変革の中にあります。
雑誌等メディアで報道されている所から見ると・・・・
●2007年11月、統合作戦コンセプトを司る統合作戦軍のマッテス司令官が、空軍が積極的に推進し湾岸戦争やイラク戦争でも適応されたEBO(効果基盤型作戦)重視の考え方を否定。
●2008年6月、ゲーツ国防長官が空軍の将来構想を巡る対立から空軍参謀総長と空軍長官を同時にクビにし、輸送機出身で特殊作戦支援の経験豊富な異例の新参謀総長人事を行う。表向きには核弾頭搭載爆撃機の運行不手際に対する処分になっていますが、実態は上記対立と言われています。
●2008年9月、米空軍内の「大将会議」で同参謀総長は「隔離病棟に置かれている無人機文化や無人機運用者を、日の当たるところに」と発言
●2008年10月、統合のマッテス司令官がEBO用語の使用禁止を宣言する一方で、空軍はEBOを主要なコンセプトとして堅持する旨発表
そのほかにも、2010年度予算案の中でのF22製造終了、爆撃機開発の中断、次期救難機の選定やり直し、空中給油機選定のやり直しなど、端的に言えば、ゲーツ長官から「根本的に考え直せ」と言われている状態です。そんな中、無人機は、比較的安価でイラク・アフガンの戦いに直結する分野としてゲーツ長官一押しの力点であり、空軍幹部としては何らかのアクションを起こさざるを得ません。
そこで23日に記者発表されたのが「無人機Flight Plan」と名付けられた2047年までの空軍の無人機計画です。2047年は米空軍100周年にあたる年で、100周年の将来像を描くとの意味でアメリカらしいアピールの仕方です。中身はhttp://www.af.mil/shared/media/document/AFD-090723-034.pdf からダウンロード可能(15MB 22ページ)です。
中身はHolylandの斜め読みによると・・・空軍が無人機の世界全体を統制し、引っ張ってゆくにふさわしい、といっているように見えます。
●無人機は、その耐空性、人命を危険にさらさない、発見されにくい、センサーとシューターを一つに出来る等々の利便性と実績から、最近6年間で6.6倍に需要が拡大
●米空軍はその使い方や空域管理まで経験豊富で、統合に役立てる方法も良く承知している。
●運行の自動化等により、今後同様の任務を現在の4割強程度の人員で実施可能
●多目的無人機の開発により、1機種を4軍が使用可能。輸送にも特殊作戦にも・・・
●「蚊」サイズの偵察センサーから輸送用や空中給油用無人機まで、多様な応用範囲有り
●空軍は、無人機を有人機に置き換えて有効に使用でき、自動化や耐用性の向上により有効な戦力を統合軍に提供でき、他軍種・同盟国・研究者・企業を有効につないで無人機の特長を発揮させることが出来る
本プランの中には言及されていませんが、戦闘機の無人化に関し、本プランを発表したデプテューラ空軍参謀次長(中将 ISR担当)は「現段階の無人機は、ちょうど1920年代の有人機と同程度の発展段階にある。従って無人機には多くの潜在能力があるが、戦闘機とそのパイロットを無人機で置き換えるのはまだまだ先の話である(a long way off)」と明確に否定しました。写真はEBO概念の創設者デプテューラ空軍次長(中将)です。
ゲーツ長官の要望に応えつつ、無人機分野で米軍内の主導権を握り、聖域「戦闘機と戦闘機パイロット」を死守・・・・といったアイデアでしょうか・・・
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