昨日に続き、元外務省国際情報局長、元イスラエル大使、元朝鮮半島問題担当大使であった茂田宏さんのブログ「国際情報センター」から思いっきり引用させていただきます。
後編の本日は、密約議論の中、米国の核拡大抑止が有事に機能するか、日本は如何に対応すべきか、について茂田さんのご意見を紹介します。
●米による核抑止提供の難しさ
米は核の傘、拡大抑止を日本に提供することを、「あらゆる手段で日本を守る用意がある」という形で約束している。しかし、米による核兵器使用の決断はそう簡単ではない。
たとえば、米の識者のなかには、日本にある米軍基地が核攻撃されたからといってピョンヤンを破壊するのは均衡を失すると言う人がいる。
この背景には歴史の教訓がある。ソ連がSS-20(Holyland注:中距離核ミサイル 米には届かず、欧州だけに脅威)を配備した際に、ドイツのシュミット首相がデカプリング(米欧の安全保障が切り離されるとの論)の恐れを主張し、米はそれを受け入れて、パーシングIIと核搭載巡航ミサイルを欧州に配備した。これはベルリンやロンドンを守るために、米はニューヨークやワシントンを犠牲にすることはないとしたのと同義である。
これと同様に、東京を守るために、ロスやニューヨークを犠牲にする用意は米にはないだろう。SS-20の議論の際に、日本は米の中央抑止(米国内配備の核戦略のこと)に頼るとの政府答弁があるが、これは根拠のない答弁であると私は考えている。そこまでの核の傘は日本に提供されていないと考える方が常識である。
日本への核の傘は、有事の際に核を搭載する米艦船あるいは米軍基地に持ち込まれた核によって、その実効性が担保されざるを得ないのではないかと考えられる。
●有事の際の核持ち込みを全面拒否した場合は?
この点については、私がよく意見交換をする有識者の意見も分かれている。
一方では、核の傘の提供はなくなるという駐米大使経験者を含む有力者の意見がある。
先例としては、1984年ニュージーランドが非核化ということで核搭載艦船の寄港を拒否した際、米はアンザス条約に基づくニュージーランド防衛義務を停止したことがある。また、核戦略上、実施に困難があると言う人がいる。
他方では、ニュージーランドと日本は違う、日本との関係上、核の傘を日本に提供し続けるという意見がある。
私の意見を言うと、これは究極的選択の話であり、そういう事態はすぐ来るわけではないので、核の傘の問題を米が今すぐ明確化することはなく、どちらかというと暫くは核の傘があるように振舞うのではないか。
なお北朝鮮には対米攻撃力はないので、北が日本に核使用すれば、米は報復してくれるだろう。
中国の場合は、対米攻撃力があるので、中央抑止力よりアジアにある核が頼りになるだろう。中国はソ連のSS-20に相当するいわゆる中距離核戦力も保有しており、日本はSS-20が欧州に配備された頃のドイツと同じ立場に中国との関係では立っていることを認識しておく必要がある。
●エピローグ
非核3原則は国会で国是とされてきたが、それが大きな穴のあるものであったことがいまや明らかになった。
日本の安全保障上、核の傘を重視すべきか、非現実的であるがゆえに破られてきた「国是」を重視すべきか、どちらかの修正を含め、どちらかを選択すべき時がきている。両立させようという試みはごまかしのようなことになってしまう。
なお、12月10日付インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に、ボウリング論説委員は米のアジアでの役割を論じて、「どれくらいの期間、日本は米の核の傘に隠れながら、核兵器への反対を言い続けることを許されるべきなのか」と問題提起している。
茂田宏さんのブログ「国際情報センター」は、超超上質のインテリジェンスを提供するサイトですので、是非日常的にご覧ください。
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