休刊が決定している月刊情報誌「フォーサイト」の2月号に、中国経済に関する高村悟氏の分析記事「ピークアウトが近づく中国経済」が掲載されました。昨年11月に掲載した本ブログ記事の上野泰也(みずほ証券エコノミスト)等の意見と方向を同じくするものです。中国経済に関しては、楽観論派がムード先行で客観的根拠説明が薄いのに対し、悲観論派はより具体的に問題点を示している点が論断で見られる特徴です。
以前の記事はこちら → 「VOICE12月号が「中国経済」特集」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-25
記事では中国経済の現状を・・・
●中国に巨大企業はある。しかしほとんどが石油、電力、通信、銀行、海運、食料関係の国有企業で、国策で巨大市場を独占しているだけ。
●レノボや家電のハイアールの活躍は国内が主力で、国外分は買収した外国企業我になっていた部分。純粋の民間企業で世界に羽ばたいた企業はない。
●中国経済の成長の原動力は、90年代から現地進出した安い土地と労働力目当ての外資企業である。中国の輸出の6割は外国企業が担う。
●中国国内の部品産業も外国企業向けに発展。国民所得が工場、税収も増えてインフラ投資が加速している状況。つまり外資牽引型。
●世界経済危機の中で成長を維持している現状は、4兆元の財政出動と金融緩和によるバブルである。ただ、財政赤字はGDP5%程度で、先進国の50%程度や日本の180%よりは余裕がある。
明らかになりつつある問題・課題
●世界の工場たる中国の条件が揺らぎ始めている。つまり、かつて安かった人件費がベトナム、カンボジア、バングラ、インドネシアよりも高くなりつつあり、更に、人口の高齢化で若年労働力不足が迫っている。人口構成でみると、自然成長が期待できるのは2015年ぐらいが最後になるのでは。
●他の先行する先進国は、高度成長期の終わりまでに、高付加価値製品やサービスへの成功したが、中国は次の段階への準備が出来ないまま、高度成長の終焉を迎える。
●最近5年ほどの外資中国進出は、中国国内向けの生産拠点や流通センター、小売店舗であり、輸出の拠点となる工場進出は激減している。自動車メーカがその典型。輸出拠点として成り立たなくなりつつあり、ユニクロなどアパレルも中国を脱出し始めている。
●経済発展の先頭を走っていた広東省では、労働集約型産業の衰退が始まっている。
●一見グローバルな競争力を付けつつあるような鉄鋼、アルミ、セメント、自動車などの産業は過剰設備で「利益なき繁栄」状態に近い。
必死の産業高度化・・・
●台湾を取り込もうとする必死の取り組みはこの現れ。手っ取り早く高度な技術を獲得しようとする手段。
国内市場の拡大があるだけでも外国企業にとっては「よだれが出る」市場でしょうが、一波乱あるのは間違いないでしょう。同記事は「非連続的な変化」とのぼんやりした表現を使っています。
冷戦当時のソ連へのアプローチと同じ脅威論のみで安全保障を議論している現在の状況には限界がありますね・・・・。
(付録)
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
QDRにおける対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定)
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-09
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