産経新聞政治部論説委員の野口裕之氏が、田母神前空幕長の論文とその後の状況を講演で語られています。講演自体は昨年の5月ですからずいぶん昔ですが、基本的に状況に変化はないと思われるので紹介します。
●田母神さんの指揮統率は立派だった。当時の航空自衛隊は見事に統制が取れていた。
●田母神さんの論文に学説的な異論はあるが、これだけの問題になること自体がこの国の病巣。ただ、彼の戦術は間違っていなかったが、一面でメディアを甘く見すぎていた。
●(しかし)正直に言って人を説得するには不十分な内容。彼のスピーチはおもしろいが、文章はそうはいかない。3週間後、私が単独インタビューして咀嚼してしてアレンジし、田母神氏から自分のより真意が反映されているとの公認を得て新聞に掲載し、より多くの人の理解が得られた事実有り。
●現在の一番の問題は、本件を通じて保守が内部分裂を起こしたこと。あの事件の際、保守や自衛隊の人に、敵を間違えちゃいけない、敵は田母神さんではないといいましたが、非常に迷惑だという人もおり、結局保守が分裂する結果になった。
●保守系メディアは経営危機の中にあり、センセーショナリズムで書くメディアのみ受けがよい。いま田母神さんの周りにいるのは、センセーショナリズ保守メディアか立派でも直球しか投げない人達。
●我々は左翼から学ばなければいけない。テレビキャスターの口のうまさを見習わなければ。過激な左翼思想を持っているのに、テレビに出るとお利口になって、主婦や若い人達の間にスーと入ってしまう。我々は、もっと上品で、もっと人の耳に入りやすい心地よいスマートなやり方を学ばなければならない。
●改憲が放置され、(拘束する)法律が増殖しつつける中で、自衛官が官僚になる現象を抑えなければならない。田母神発言は将来は評価されようが、短期的には副作用があることも事実。恐れるのは、自衛隊がどんどん萎縮してお伺いばかりたてる組織になること。
●欧米は真のシビリアンコントロールを良く活用し、制服同士のミリ・ミリ関係を国際協議にも活用している。米には大統領に直接助言する役割の将軍が20人近くおり、仏でも16人、独には8人の現役軍人が大統領府や首相府に勤務している。米国議会にも軍人出身者が2割ぐらいいる。日本は二人だけ。
●このままでは自衛隊の官僚化は避けられないと考える。
そのほか、浜田前防衛大臣は安保問題のエキスパートであり、自衛隊と隊員のことを必死でやってきた人であり、今回のことで誤解されるのはかわいそうである。返す返す小泉総理だったら・・・との発言もありました。
あえてコメントすれば、自衛隊は既に官僚化がかなり進んでいる・・ということでしょうか・・・田母神さんの時から。
(付録)
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
QDRにおける対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定)
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-09
コメント