ロシア製ステルス機の初飛行をどう見るか

●事実関係・・・
pak-fat-502.jpg29日ロシア国営テレビなどによると、ロシアのスホイ社は、開発・製造した「第5世代」新型ジェット戦闘機PAK-FAの試験飛行を行い、成功したと発表しました。
インタファクス通信によると、試験機はロシア極東コムソモリスクナアムーレの空軍基地から発信し、47分間にわたって試験飛行を実施しました。
ステルス性、高度のアビオニクスシステム、超音速巡航が一般的な第5世代戦闘機の条件ですが、実戦配備されているのは現在、米空軍のF-22戦闘機だけです。ロシア軍は米国に対抗し、2015年の実戦配備を目指すと言われています。
●1月28日付ワシントン・タイムズ紙は・・・
ロシア軍がこの航空機の最初の機体を最終的に入手するまで多分5―7年はかかるだろう。スホイはロシアの武器輸出の4分の1を担っている。
pak-fat-50.jpgロシアの専門家は「米のみ保有しているので(F-22の最初の飛行は1997年)、この戦闘機はロシアの防衛能力にとりよいことである」としつつも、新型ディーゼル潜水艦とイスカンダール・ミサイルの軍への供給が遅れたこと(また、新型SLBMブラバの一連の実験も失敗した)を指摘し、「配備まで5-7年かかり、それまではSU-35に頼ることになるだろう。この新戦闘機はインドとの協力のもとで生産されることになろう」と述べた。
専門家は「この航空機の大量生産と改造は若い技術者を航空部門にひきつけ、武器輸出の増大につながる。PAK-FAはこの種のものの世界市場の少なくとも3分の1を簡単に取れる
欧州は同種のものを作っていないし、中国が作るコピーは技術水準で太刀打ちできない。米の第5世代戦闘機の輸出は安全保障上の要請でイスラエル、サウジ、日本など緊密な同盟国に限られるだろう」と述べた。
●デプテューラ米空軍情報部長(中将)は・・・
「ロシアや中国が生産する高性能戦闘機は、今後米国が30年間輸出しようとしているF-35より安価で輸出されるだろう」と昨年9月に発言しています。
●米国防省は最近・・・
gates1photo.jpg同盟国との兵器システム共同開発を強く推進し始めています。この2週間ほどの間に、ゲーツ長官はインドへ、リン副長官は英国へそれぞれ、経費節減のための共同開発を持ちかけたところです。今回の特徴は、米国が国内法でこれまで輸出等制限されていた規制を緩和してまで相手を呼び込もうとの姿勢を示しているところです。
日本でも北澤防衛大臣や経団連の「武器輸出3原則」緩和を求める発言や、BMD分野での日米防衛次官級協議など、米国の要請を受けたと思われる動きが見られる所です。
どの産業分野もそうですが、新規開発が1社ではまかなえず、企業間協力や国家間協力が急ピッチで進んでいます。国防軍需産業も例外ではありません。
deptula_da3.jpg5世代機の出現どうこうも重要ですが、各国の軍需産業の連携に注意が必要です。日本は乗り遅れると、零細な防衛産業は死滅しますし、同盟関係上も更なる衰退への一歩となりかねません。
米空軍情報部長の懸念は間違いではないでしょう・・・、5世代機は空軍にとっては一つの脅威であり無視は出来ません。しかし今後予想される多様な脅威のほんの一面に過ぎず、投資分野の中の一つに過ぎません。聖域ではないと強く主張します。
(付録)
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
QDRにおける対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定
   → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-09

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