米軍を動かすAIシステム(MSS)の現状と将来方向

最先端の軍事AI意思決定支援システム:MSS:Maven Smart System
2026年3月に米国防省が正式国家事業に指定し次年度数千億円予算化
対イラン作戦やウクライナ作戦支援を劇的に加速したMSS
担当責任者が今後は兵站・調達管理・装備選定・契約業務等への応用狙う

9月8日、米国防省でデジタル人工知能責任者CDAO(chief digital and artificial intelligence officer)を務めるCameron Stanley氏がイベントで講演し、対イラン作戦やウクライナ軍事作戦支援で作戦サイクル迅速化や指揮官の意思決定支援で画期的な能力を発揮した、米国防省がPalantir Technologies社等と開発&運用している「MSS:Maven Smart System」の今後の適用範囲拡大の方向性について語っています。

軍事意思決定支援AIシステム「MSS:Maven Smart System」についてご紹介するのが初めてですが、例えば対イラン作戦では、衛星・ドローン・地上&空中レーダー・通信傍受・人的情報等々の150以上の情報ソースからの膨大な生データを一元処理し、移動ミサイル発射台、射撃管制レーダー、弾薬庫等の位置を特定&追尾して、1000カ所の攻撃目標抽出を「24時間以内」で可能にしました。

更に、これら多数の抽出目標を精密攻撃する具体的作戦計画案として、どこに展開している、どの戦闘機や巡航ミサイル等の攻撃アセットで破壊するかについても、短時間で案を作成して中央軍スタッフや指揮官に提供したとされており、従来であれば数カ月間かかっていた生センサー情報分析から兵器割り当て、そして具体的な同時・連続的な精密空爆計画を「時間単位」で可能にしたと言われています

また攻撃戦果の確認から次の攻撃計画に関しても、必要なセンサーデータを膨大な生データから効率的に抽出して継続フォローし、画像認識技術や電波情報解析技術を連動させ、友軍アセットの稼働状況や気象状況までを総合的に判断して、これまで「数時間」必要だったプロセスを「数分」で完了するほどになった言われているところです。

8日にStanley CDAIOが語った今後のMSSの力点は
9日付DefenseOne記事によれば)
●MSSは最近、GoogleのGeminiに加えてOpenAIとxAIのツールを追加し、国防省内IT環境に、真に最先端のAIロジックをユーザーが使用しやすい形で展開している。

●(これまでセンサーと攻撃兵器を結びつけるために、)米軍関係者が使用していた既存の10個程度のITシステムに取って代わり、画期的な成果を上げたMSSだが、今MSSは兵站支援、部隊の即応性把握、サプライチェーン管理、調達管理、装備品選定、予算編成業務等の支援にも取り組んでいる

●新展開分野への取り組みで感じることは、既存プロセスの単純自動化ではなく、AIを新手法で導入し、業務要領を進化させた部署に大きな成果の芽が出始めている。
●装備調達プロセスでは、従来の情報提案依頼RFIや提案依頼RFP公示形式から、「transaction authoritiesやmarketplaces」活用により、業者選定プロセスが数カ月間から数日に短縮された事例も報告されている。国防省marketplaces「Tradewinds」での5分間映像使用で、大幅にRFIやRFP対処時間が短縮されている
●約90%が標準的なパターンに沿った内容とされる契約書等の公式文書作成を迅速化する手法として、「AI pilot programs」の検討も進めている

●これら行政的業務の効率化への取り組みのボトルネックは、「AI pilot programs」を既存の国防省ネットワーク上で試行使用するための「承認を得る時間」で、18ヵ月も必要なケースがある。粘り強い調整が必要な分野であるが、各業務の特性や関係民間部門の要望も踏まえつつ、着実に進めたい
●MSS自体はあくまでソフトウェア所有ではなく、ライセンス料支払による利用なので、開発は業者に任せることが可能で、余計な心配は不要。ライセンス期間内であれば、繰り返し開発を求め進めることが可能

●同盟国等(Five Eyes:米英加豪NZ、少数のNATO加盟国、アジアの同盟国を含むパートナー国)は、同じ方向を向いているが、米国のような資源、経験、規模を持ち合わせていない。各同盟国等のニーズを理解し、米国の教訓も伝えつつ支援したい
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初紹介のMSS:Maven Smart System」:「まんぐーす」が「ググった」概要をご紹介
●MSSは、2017年に始動の、ドローンや衛星映像をAIで自動解析する「Project Maven」計画から派生。当初はGoogleが中核も、社内からの倫理的反発から撤退。その後、米国防省の要求に理解を示すPalanti社を中心にAnduril社等が開発を引き継ぎ、単なる画像認識分析ツールから「総合的な軍事意思決定支援AIシステム」へ進化。対イラン作戦やウクライナ支援で絶大な成果を上げる

●2026年3月に米国防省は、MSSを実験的な試行プログラムから、長期的な予算が保証された公式事業に指定。2027年度予算に3500億円の巨費を投入
●MSSは米国防省内に留まらず、NATOや英国防省にも導入や各国システムとの融合の動きが進み、西側共通の国防基盤となりつつある。また様々なドメインのセンサー情報や攻撃アセットを連接させる動きが拡大中

●ただAI企業の中には、自社AIの軍事や監視システムへの利用を拒否する動き(Anthropic社など)や法廷闘争に至る事例もある。米国防省としても、社会通念上の倫理的規範を意識しつつ、軍事への活用を慎重に進める姿勢も示している
●日本でも、安保3文書の改訂や2027年度予算策定の流れの中で、2026年6月に防衛省が自衛隊指揮統制システムへのMSS導入検討に入ったとの報道あり

日本の米国MSSへの参画に関しては、以下のような論点が想定されます
●自衛隊が収集した各種情報(レーダー・電波・画像等々)を、米国企業が運営するMSSに提供することの是非と提供範囲の整理
●対イラン作戦でも指摘され検証中の、AI判断ミスからくる民間施設への誤爆の恐れ。大量のデータ処理に基づくAI指示を、人間がどこまで精査可能か。最終的な責任の所在

●米国と同じAIインフラの上に乗ることで、戦闘行為に巻き込まれる恐れ。
●極めて重要なAI技術において、米国依存で良いのか。日本独自の「国産防衛AI開発」の必要性

⇒以上の危惧に対し、米国MSSと完全に一体化するのではなく、必要部分のみを「リンク」させ、コア部分については日本独自開発のAI技術インフラ(一例:Sakana AI)を活用する案などを模索中

そういえば、2024年の対露開戦当初からウクライナ国防相を務め、ウクライナ防衛を八面六臂(はちめんろっぴ)の大活躍で支えてきたミハイロ・フェドロフ氏(なんと驚きの35歳!)が7月に国防相を解任され話題となりましたが、同氏が9月に国防テック企業立ち上げた際、資金を提供したのがPalantir Technologies社のCEOアレックス・カープ氏でした。Palantir社も、SpaceXと並び、今後目が離せない企業です。

MSS:Maven Smart System関連の記事
「フーシ派対処に活用で好評」→https://holylandtokyo.com/2025/03/11/10867/
「2019年9月頃の状況」→https://holylandtokyo.com/2019/09/09/6644/

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