仏独中心に核抑止含む欧州安保体制再構築に向けた動き

仏大統領が「核弾頭増と核の前進配備」構想発表
英独の他欧州6か国と協議へ
また仏独が中心となる戦略協議体(steering group)設置共同声明も

3月2日にマクロン仏大統領が、フランスの核弾頭保有数を拡大し、欧州同盟国への核戦力の配備(deploying nuclear-capable forces)を含む先進的抑止(advanced deterrence)を進める構想を発表し、英独の他、欧州6か国(Poland, Netherlands, Belgium, Greece, Sweden, Denmark)とGreater Nuclear Cooperation協議を行うと表明するとともに、同2日に仏独は、通常兵器やミサイル防衛等も含む広範な安保戦略協議体(nuclear steering group)を設置する共同声明を発表しました。

世界の目がイラン情勢に向いていた3月2日の週の出来事ですが、米国の「西半球重視」と「欧州突き放し」姿勢を受けた、欧州諸国による「安保体制再構築」の動きが急加速したということです。

なお3月5日には、米国防省のキーパーソンであるColby政策担当次官がCFRでの講演で、これら欧州諸国の動きを支持する姿勢を明確にし、イランの件も含め、世界全体での安全保障環境の変化を印象付ける1週間となりました。

【3月2日のマクロン演説】
●露が極超音速核兵器、核魚雷、加えて宇宙配備核兵器を開発し、中国は他のどの国よりも多くの兵器を生産している。
●仏は複合的脅威に直面し、核抑止力強化が必要。そのため、仏の「主権」を十分尊重しつつ、「advanced deterrence:先進的抑止力」を段階的に導入し、欧州大陸奥深くの抑止戦略を検討する必要がある

●敵対国の軍備強化、地域大国の台頭、敵対国間の協力強化の可能性、更に核拡散リスクを踏まえれば、仏は核弾頭数を増やす必要があり、増やすよう指示した。ただし、これは軍拡競争突入を意味しない。仏の核兵器は依然として戦略兵器に留まる。ただし仏は今後、核弾頭数について公表しない

★ご参考:仏の核戦力
・SIPRI発表によれば、核弾頭配備数を280発、予備数を約10発
・Rafale戦闘機搭載の核弾頭巡航ミサイルASMPA(極超音速巡航ミサイルASN4Gも開発中)
・Le Triomphant級戦略核ミサイル潜水艦4隻(内1隻が常時哨戒:16発のM51弾道ミサイル搭載:射程9000㎞)
・1996年に地上配備型ICBMは廃棄

●仏は「死活的利益」(注:ドゴールが唱えた定義不明確な表現)を共有するつもりはなく、「厳密な意味での保証」は提供しない。厳格な保証の提供は軽率で、核兵器使用の閾値を下げ、敵対国の不確実性を軽減することになるから。
●また、核兵器使用に関する「最終決定」は仏憲法の下で仏大統領のみが行い、この決定権を他国と共有するつもりはない。仏は同盟国の利益を考慮しつつ、核の閾値を意図的に越える行為には常に単独で対処する

●今後の「advanced deterrence:先進的抑止力」は段階的プロセスで、まずパートナー国の抑止力訓練参加を認め、「シグナリング」と呼ぶ、同盟国による仏核活動への通常参加により実現される
●最終的に「advanced deterrence」には仏戦略戦力の同盟国展開も含まれる可能性がある。これにより、仏の空中核抑止力(ラファール戦闘機搭載の核弾頭巡航ミサイル)が欧州全域に分散することで「敵の計算を複雑化して我に大きな価値をもたらす」と同時に、仏防衛力に「新たな戦略的深み」をもたらす

●仏の「advanced deterrence」に対し、パートナー諸国は早期警戒、防空能力の拡大、縦深攻撃などの面で能力強化に貢献でき、「努力の公平な分配」となる。また、抑止力強化のために、あらゆる面で通常兵器強化が必要

【3月2日の仏独nuclear steering group設置共同声明】
●仏大統領と独首相による共同声明で、声明が示すSteering Groupは「ドクトリン対話と戦略的協力の調整」のための二国間枠組みとして機能する。
●Steering Groupは、通常兵器、ミサイル防衛、そして仏核兵器の適切な組み合わせに関する協議を行う。また、両国は今年の具体的措置として、仏核演習への独の通常参加と、戦略的拠点への共同訪問実施に合意した

●この両国合意は、「NATOの核抑止力と核兵器共有取り決めに代わるものではなく、強化するもの」であり、「NATO核兵器における英国の役割も再確認」し、仏の核兵器がこれらを代替するものではなく、補完するものであることを強調
●また両国はNPTの義務を今後も順守していくことを確認

【3月5日のColby政策担当次官発言】
●NATOの核抑止力に欧州の要素がより強く加わるのは全く適切であり、米国防省の観点からも合理的だと思う
→ https://x.com/i/status/2029357693874405803
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繰り返しになりますが、世界の目がイラン情勢に向いていた3月2日の週は、米国の「西半球重視」と「欧州突き放し」姿勢を受けた、欧州諸国による「安保体制再構築」の動きが急加速した週になりました。イランの件も含め、世界全体での安全保障環境の変化を印象付ける1週間とも言えましょう。

 

第2期トランプ政権の安保文書関連
「NDSへの酷評」→https://holylandtokyo.com/2026/02/03/13834/
「国家防衛戦略NDSのポイント」→https://holylandtokyo.com/2026/01/29/13808/
「新NDSの方向性事前説明」→https://holylandtokyo.com/2025/12/09/13392/
「欧州酷評の国家安全保障戦略NSS」→https://holylandtokyo.com/2025/12/08/13382/

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