国家防衛戦略NDSに対する厳しい批判

「まとめて文書化する価値無し」「実施計画が存在可能か?」
「第1期トランプ政権と第2期の戦い」
「国内コンセンサスがない方針」「継続可能な方針ではない」
「次の政権がどの政党であれ、脱トランプが大きな負担となる」

1月27日と29日付のDefenseOne記事2本が、大寒波襲来で米国首都機能が実質停止していた23日金曜日夜に「説明会もなく」「e-mailで突然送られてきて」発表された国家防衛戦略NDS(National Defense Strategy)について、複数の専門家(共和党系と民主党系の両方)からの「辛辣な批判」満載の内容となっていますので、ご紹介しておきます

DefenseOneはトランプ政権に厳しい意見の記事が多いのですが、それを差し引いても、ワシントンDCの様々なシンクタンク研究者やメディアの軍事担当関係者の間で、第2期トランプ政権下で編成された国防省スタッフの考え方に対する評価は極めて厳しいものがある、と考えていただくのが良いかと思います。

1月29日付記事「国家防衛戦略NDSのポイント箇条書き」もご参考に、以下をご覧ください。

【国家防衛戦略NDSの全般】
●AEIのTodd Harrison上級研究員
・このNDSに示された内容は、過去数十年で確立され共和&民主党が掲げてきた国防政策から180度転換した大きな逸脱で、持続可能ではなく、永続的な変化にはならないと考える。
・ルールに基づく国際秩序、自由民主主義的価値観と外交を推進し、新たな世界大戦を阻止することを米国は政策として取り組み、現在でも共和党支持者の6割以上が強く支持している方向だが、これを「非現実的な幻想」「雲の城のような抽象概念」「国際秩序は曖昧な抽象概念」だったと評価するElbridge Colby政策担当次官的な思考に基づく方針転換である。

・ある意味、この第2期トランプ政権のNDSは、第1期NDSと対立しており、「確かな政策かじ取り手腕を持たない人材配置」や「素人と過激派の集団」が生んだもので、第1期NDSで1回も登場しなかった「トランプ」の名前が、第2期NDSで47回も登場する点にも表れている

●CNASの上級研究員Stacie Pettyjohn氏とBecca Wasser氏
・皮肉を込めて表現すれば、文書にする価値もない内容だ。トランプ大統領はやりたいことを好きにやり、NDSに沿って行動しようとしないだろうからだ。だから(吹雪の金曜夜に)説明も宣伝もなしに発表されたのだろう。
・従来から、NDSは複数名のチームで作成されるが故に、文書内に多少の対立点や矛盾が存在するが、新NDSは同時に複数の方向へ進んでいるようだ

【中国関連】
●CNASのBecca Wasser上級研究員
・これまで主張してきた規範的部分を削ぎ落とし、中国を締め付けたり、屈辱を与えることなく、第一列島線の防衛強化などの純粋な力で、アジアで軍事力行使に関心を持つ中国の能力を否定し、西半球での中国の経済的進出拡大を阻止しようとしている。
・NSSの表現を借りれば、「米国に有利だが、中国も受け入れ可能な条件での適切な平和」を確保するための外交を提案している。ただ、中国がそのように認識している訳ではなく、第一列島線の防衛強化を進めれば、多くの矛盾を呼ぶことになる

【具体的な軍事態勢や優先順位に言及ゼロ】
●AEIのDustin Walker研究員
・ルールに基づく国際秩序の世界への普及を放棄した後に、何を次に追及するのか文書は言及していない。そのためか、従来戦略からの変化を強調するのみで、今後の方針を支える国防体制や投資の優先順位に関する記述がほとんどない
・米軍の規模や編成をどのように変えていくのか、また具体的な兵器や装備品の調達や開発優先についてもほとんど示していない。唯一言及があるのは謎と疑問が多い「Golden Dome構想」に対してだけ

●CNASのStacie Pettyjohn上級研究員
・新NDSは、米軍戦力が不断は主に西半球に留まることを示唆しているようだが、例えば、中国が台湾に侵攻する一方で、ロシアがNATO領土に侵攻した場合等に対処する能力について議論していない。ベネズエラ作戦を実施中に、イラン国内で衝突が激化した最近の事例が教訓になるように考えるが・・・

・また大統領が恣意的に軍事力行使を行えば、協力国が減ることも予期できる。これにより、海外拠点に依存しない軍事力、つまり長距離爆撃機や空中給油機の増強や、空母攻撃群の稼働率向上が必要になるかもしれない
・一方で、ベネズエラで実行した圧力作戦に力点を置くとなれば、対中国用に準備してきたアセットとは異なる装備のニーズが固まる可能性があるが、大国との紛争準備重視してきた姿勢の変更は、米議会の理解を得る困難が予期される。このように様々な疑問が浮かぶが、新NDSはこれら疑問に何の答えも方向性も示していない

【同盟国との関係】
●CNASのStacie Pettyjohn上級研究員
・新NDSは、世界各地に駐留する米軍の削減や撤退を示唆し、同盟国に「あなた方は独り立ちすべき」とのシグナルを発信することになるが、これは米軍の海外での作戦拠点やアクセスポイント減少につながる。また大統領が恣意的に軍事力行使を行えば、協力国が減ることも予期できる。
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移民対策からグリーンランド関連やFRB議長人事等々まで、最近のトランプ大統領の指示や発言に対する「疑問」や「反発」が、共和党関係者からも上がるようになり、混乱と混迷度合いを深めている米国情勢ですが、国家防衛戦略NDSに関しても、現時点で不明確な具体的政策について、今後明らかになるについて日本への影響も明らかになるのでしょう・・・

小さくない影響が考えられる日本ですから、2月8日の衆議院選には国民の一人として心して臨みたいと思います。

NDS:国家防衛戦略の現物(表紙など34ページ)
https://media.defense.gov/2026/Jan/23/2003864773/-1/-1/0/2026-NATIONAL-DEFENSE-STRATEGY.PDF

第2期トランプ政権の安保文書関連
「国家防衛戦略NDSのポイント」→https://holylandtokyo.com/2026/01/29/13808/
「新NDSの方向性事前説明」→https://holylandtokyo.com/2025/12/09/13392/
「欧州酷評の米国新NSS」→https://holylandtokyo.com/2025/12/08/13382/

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