25年以上経過のM1戦車改修の迷走から脱却可能か?
6年半計画を2年半に短縮の調達改革に挑むM1E3の現在位置
今年中の試作車部隊展開を期し自動車ショーで初披露
M1 戦車は、初期型「M1A1」が40年前に導入開始で、最新型「M1A2」でも導入開始から25年以上経過の旧式装備で、既に製造中止のため、当該戦車の修理に車両部品の共食いが常態化している装備で、当然米陸軍は改修計画「M1A2 System Enhancement Package」を検討していましたが、やり直しを繰り返す迷走の末に2023年秋に
中止が決定され、「米陸軍の存在意義をめぐる迷走」の象徴と嘲笑を浴びました。
この汚名を返上すべく、米陸軍の威信をかけ代替案として提示されたのが、ご紹介する戦車の機動性や生存性を改善する「(2025年情報で)以下の特徴」を持つ「M1E3」計画で、これも当初は「6年半」もの開発期間予定のところ、George参謀総長就任後に「2年半」への短縮が2025年に指示され、昨年末には2026年中に最初の試作車が部隊配備と発表されたところです。その2025年公表の開発期間1/3を目指す方針は・・・
●リスクは常に存在するが、ゼロリスクを追求してリスク全ての管理を追求するな。現実的リスクは責任をもって受け入れ
●現場責任者が適切なリスクを負うことを許容。このソフトウェア開発手法をハードウェアにも適用トライ
●性能とコストのトレードオフ処理は、官側が知ったかぶりをせず、企業側の発想にゆだねて良い方向に迅速に進む可能性も追求
・部品や部材選択を企業側に任せ、現実的で安定性と柔軟性のあるサプライチェーン構築を迅速に行う
・現場の組織編成や人材配置を企業に任せ、官側の過剰な縛りを排除し柔軟性確保で様々な決定や技術導入の迅速化
非公開で不明点が多い「M1E3」の性能や新装備は(2025年時点)
●車体重量を現在の73トンから 60トン程に抑える野心的発想で機動性追求
●新たな駆動機関(powertrains)として、燃費改善や静粛性追求のためハイブリッド推進機関も検討
●省人化に直結する自動装てん装置や遠隔操作タレット追求。技術的に困難も、産業界の現状を見極める
●ドローンや対戦車兵器発展を受け、Active Protection System統合導入
●戦車制御システムや照準装備や主砲や車両外装を、最新技術や車内人間工学で大幅改善
1月20日に陸軍参謀総長や陸軍関係者は講演で
●(12日の週に自動車ショーに展示された試作の)M1E3は、当初計画より5年早くプロトタイプ
段階に達しており、多くの新機能を搭載している
●現状4名搭乗のM1A2とは異なり、M1E3は自動装填装置を備えて乗員3名で運用可能で、M1A2より25%の軽量化が可能(73トンの25%減は約55トン)
●(M1E3の操縦席は、)F1レース車両のコックピットのようで、ビデオゲームX-Box操作コントローラーのような操縦者インターフェイスを搭載している。モジュール式でアップデートが容易に可能
●そして戦車の戦場認知度を高めるために「多数の企業」が関与したAIデジタルソフト「GenAI」が搭載され、継続的な更新が可能
●以下はデトロイト自動車ショーでのプレゼンや報道情報
・キャタピラー社製の新型エンジン。ハイブリッド電気駆動システムとSAPA社製の最新型トランスミッションで、車両の燃費が50%向上
・「当局者は敵のドローンや長距離兵器など現代脅威対応の高度な防御力とアピール」
・「砲塔は遠隔式で、M1A2と同じ120mm滑腔砲のほか、Mk.19 40mm擲弾発射機とジャベリンミサイル発射装置搭載」
そのほか20日の講演でGeorge参謀総長は、「調達と契約機能を1人の担当者に集約」することで「性能とコスト等のトレードオフの柔軟かつ迅速な見極め」に取り組んでいると説明し、例えば、要求性能「時速100マイル」設定に対し、「時速90マイル」ならコスト3割減でかつ6ヶ月で納品
可能との「極めて重要な」情報を得て判断ができるようになってきたと、「複雑な国防調達プロセスの迷路」からの脱却をアピールしています
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当初の計画から「どの程度前倒しになったのか」に関しては、いろんな数字が飛び交って明確にご説明できていませんが、2025年末の米陸軍発表では「2026年中に最初の試作車を部隊配備」して要改善点を見極め、量産型仕様を決定して早期量産&部隊配備・・・との流れとなっているようです。
米国が悩んだ末に、ウクライナに支援提供した米陸軍のM1A1戦車・約30両が、ロシア軍の1基約5万円のドローン攻撃でほぼ全滅したとのことで、戦車自体の存在意義を問う声が日増しに高まっている現状の様ですが、米陸軍による装備品開発の「汚名返上」となるのか、今後の展開を「生暖かく」も見守りたいと思います。
米陸軍の迷走:戦車・大砲・航空機
「M1E3戦車開発期間を1/3に」→https://holylandtokyo.com/2025/05/12/11341/
「迷走米陸軍M1戦車の発展型にM1E3」→https://holylandtokyo.com/2024/06/19/5977/
「航空部隊の事故率過去最悪」→https://holylandtokyo.com/2025/02/07/10760/
「部隊大幅削減含む改編不可避」→https://holylandtokyo.com/2024/01/04/5394/
「3000億円投入済もFARA中止」→https://holylandtokyo.com/2024/02/22/5567/
「とん挫済:軽戦車MPF」→https://holylandtokyo.com/2022/03/29/2914/
「やり直し歩兵戦闘車Bradley後継選定」→https://holylandtokyo.com/2020/07/21/577/


1月20日、Randy George米陸軍参謀総長らが米陸軍協会イベントで講演し、迷走が続いている各種陸軍装備開発迷走の流れを断ち切り、新たな開発調達業務の進め方を示す試金石として米陸軍が取り組む、M1戦車の改修型「M1E3戦車」開発状況について説明し、前週にデトロイト自動車ショーで披露した民生技術を柔軟な発想で大胆に導入した試作車の仕様や、要求性能等とコストのトレードオフを迅速に見極め、リスクを恐れない開発取り組み等について語っています。
