静止衛星の補給延命技術確立へ2026年に4つの計画

軍事衛星と民間衛星への補給延命技術RSGSの同時開発
官民共同の団体COSMICが官民の協力を推進
MRVとMEPによる延命補給技術を中心にご紹介
他3計画には日本企業開発技術も

12月24日付米空軍協会web記事が、様々な国防省機関と民間企業連合が協力し、2026年に計画されている静止衛星への燃料補給を通じた延命技術(RSGS:Robotic Servicing of Geosynchronous Satellites)の実証予定を4つ取り上げていますので、その一つ「MRVとMEPによる延命補給技術」を中心にご紹介いたします

地球の35000㎞上空の軌道上に位置する静止衛星は、地球上の所定の広範囲を継続的にカバーし、通信中継や画像提供で官民の多様な分野で重要な役割を担っていますが、打ち上げ費用が高く、衛星自体も高機能多機能で高価であることから、数十年の寿命を念頭に設計され、現在500機以上が軌道上にあります。

しかし、毎年10~20機が軌道修正や衛星機能維持用の燃料切れで機能喪失に至っており、静止衛星への燃料等補給による延命技術確立は官民共通の大問題です。なお、静止軌道GEO上の衛星とは対照的に、低軌道LEOを周回する衛星は安価で打ち上げコストも低いことから、費用をかけて補給&延命するより、使い捨ての方がコスパ良しと考えられているようです。

世界中で静止衛星の延命に関心が集まる中、中国が2025年6月に静止衛星への衛星2台ドッキングによる軌道上燃料補給に史上初めて成功し、世界を驚愕させました。米国は2007年に低高度軌道LEO衛星への燃料補給を実証したことはありましたが、静止衛星には実績がなく、正に「お尻に火が付いた」状態となっています

米国が官民協力で2026年に予定する4つの関連打ち上げの一つ、「MRVとMEPによる延命補給技術」実証は、ロボットアームを装備したMRV(Mission Recovery Vehicle)が、延命補給機能を持ったポッドMEP(Mission Extension Pod)を対象衛星にドッキングさせ、燃料補給や軌道修正の推進力を付与する手法の試みで、以下3分YouTube動画(担当企業はNorthrop Grumman傘下のSpace Logistics社)が全体イメージを解説しています

MRVとMEPの連携と顧客衛星へのMEP装着イメージ(約3分)

なおMRVは、ポッドMEPを対象衛星に装着するだけでなく、年に数回発生して関係者を悩ませる「原因不明のトラブル」が生起した対象衛星に接近し、例えば「展開途中で関節に当たる部分が機械的な引っ掛かりで伸びきらない太陽光発電パネルやアンテナ」の状況を撮影し、これまでトラブル把握が困難だった地上管制室での原因究明と対応検討を支援する役割も期待されているとのことです

政府、産業界、学界の代表者で構成され、軌道上での様々な対処能力向上やサービス提供に取り組む官民連合のコンソーシアムCOSMIC(Consortium for Space Mobility and In-Space Servicing, Assembly, and Manufacturing Capabilities)のGreg Richardson事務局長は、「MRVとMEPによる静止衛星に対する延命補給技術サービス」をガソリンスタンドに例え、

静止衛星保有者や運用者が、それぞれ別々にガソリンスタンドを静止軌道上に配置することは非効率極まりないことから、皆がコストを分担負担して軌道上でガソリンスタンドを営業し、会員が何時でも利用できるような仕組みが理想的であり、官民の多くの顧客が存在する静止軌道上ではその実現が可能だとし、2026年の試験への期待を語っています

2026年計画その他3つ(12月24日付米空軍協会web記事より)
●Astroscale U.S. Refueler →静止軌道上の軍事衛星への米国初のヒドラジン燃料補給作戦を実施。日本企業Astroscale Holdingsの米国支社が、米宇宙軍のSpace Systems Command 資金を得て計画

●Tetra-5 →静止軌道上での衛星への燃料補給や衛星検査のほか、自律的なランデブー、近接運用およびドッキングを実証。米宇宙軍と空軍研究所の共同事業
●Kamino →静止衛星への燃料補給に必要な、ヒドラジン燃料の輸送・配送目的衛星の打ち上げ。米国防省DIU(Defense Innovation Unit)が資金提供
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中国に「史上初」で先手を取られた衝撃は大きかったものと思われますが、ここは気を取り直し、中国経済の崩壊模様を横目で見つつ、日本企業「Astroscale Holdings」のご活躍を期待しながら、本分野の2026年の進展をフォローしていきたいと思います。

衛星への補給延命SM&L
「燃料補給方式異なる2企業と」→https://holylandtokyo.com/2024/02/20/5554/
「軌道上補給に企業活用」→https://holylandtokyo.com/2023/03/01/4320/
「宇宙軍は衛星のSM&L重視」→https://holylandtokyo.com/2023/01/18/4130/
「延命に企業と連携」→https://holylandtokyo.com/2021/11/10/2350/
「推進力衛星とドッキングで」→https://holylandtokyo.com/2020/02/28/839/

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