当初は2000年代に退役予定も、F-22導入打ち切りとF-15EX導入遅れで
米空軍が8月に議会報告した「戦闘機長期構成計画」流出で明らかに
10月末に米軍事メディア「Inside Defense」が入手して暴露報道した8月議会提出の「戦闘機長期構成計画」によれば、米空軍は2026年度予算案説明資料(春頃提出)では「2026年度中には
F-15C/D型を段階的にすべて退役させる」としていたものを、「2028年まで42機のF-15C/Dを維持使用し、更にその内の21機を2030年まで使用する」計画にこっそり差し替えられていた・・・とのことです
本件に関するメディア側からの質問に対し米空軍担当部署は、「F-15C/Dは2031年度にF-15EXに更新され、完全退役する計画となった。退役までは、加州空軍第144戦闘航空団の本拠地フレズノに、機体疲労で維持が困難な機体が多い中でも信頼性の高い21機のF-15C/D(Platinum Eaglesと表現)を維持する予定」で、「airspace control mission(米本土の領空保全任務)には使用可能」だと説明したようです。
「Airspace control mission(米本土の領空保全任務)」とは、日本でいう「対領空侵犯措置」に該当するスクランブル発進対処任務で、「米国の防空識別圏に侵入する未確認航空機や敵機を迎撃・識別し、脅威となる場合には撃墜すること」が求められる任務ですが、記事では元空軍パイロットが「激しい機動は不要ながら、必要な場所に早く到達することが求められる任務」で、老朽化F-15C/D型でも遂行可能な任務と補足説明しています
また記事は、最後まで維持される21機は、本格紛争が発生した場合でも前線に投入されることなく、米本土に留め置かれる扱いを受けるだろうと説明しています
///////////////////////////////////////////////
戦略的環境が多少異なるとは言え、日本の航空自衛隊戦闘機族が「最後の命綱」としてしがみ付く「対領空侵犯措置」任務を、退役直前で「部品共食いcannibalization維持」の「有事に投入不可能」な戦闘機で対応している米空軍との対比が目を引く記事ですのでご紹介いたしました
ところで、米空軍が議会要請で8月に提出していた「戦闘機長期構成計画:Long-Term Fighter Force Structure」は、「全く節操のない」報告文書として米軍事メディアが「嘲笑」を込めて10月末に報じていましたが、米空軍全体の他事業との整合性など全く考えていない、「戦闘機命族」だけの「戦闘機がこれだけの機数ほしい」との一方的な主張を並べた文書です。
米軍事メディアはこの文書を、米空軍による「ずさんな」な「戦闘機開発管理」と「導入戦闘機の維持整備計画」を棚に上げ、また、戦闘機優先の予算配分方針の陰で冷遇&放置されてきた「ICBM維持整備&近代化」や「(ミサイル防衛や無人機対処や掩体整備など)基地防衛」や「電子戦やサイバー戦」等々への投資との整合性に全く配慮のない「時代錯誤も甚だしい内容」だと酷評していたところです
メディアから嘲笑された同計画の柱部分は・・・
●米空軍はこれまで、15%を占める減耗予備機やBackup機を含めない「Primary Mission Aircraft Inventory」との数値で戦力数を表現してきたが、今後は真に必要な戦闘機数を示す数値として、必要予備機等も含めた「Combat-Coded Total Aircraft Inventory」との指標数値で議論する
●この基準で現在の米空軍戦闘機保有数は「1271機」と史上最低レベルに落ち込んでいるが、この数値には退役直前の約100機のA-10攻撃機や約50機のF-15C/Dも含まれていることに留意する必要がある
●米空軍の評価では、現在の厳しい戦略環境下で、仮に任務未達の恐れを「リスク中」まで許容したとしても「1367機」が必要で、「リスク小」で遂行するためには「1553機」が必要だ。つまりより確実に任務達成するには300機以上の戦闘機増強が必要だ
高市政権と小泉防衛大臣への高評価を受け、防衛費の爆増が予期されますが、ここは本当に注意が必要です。「戦闘機命族」の暴走を、誰でもいいから止めてほしいです。
嘉手納基地のF-15C/D型
「正規軍最終機が嘉手納でラストフライト」→https://holylandtokyo.com/2025/04/23/11203/
「後継F-15EX 部隊完成は 2026年」→https://holylandtokyo.com/2024/09/18/6281/
米空軍関係者の本音
「幹部の発言:嘉手納には期待なし」→https://holylandtokyo.com/2024/05/22/5868/
「日本とグアム島の滑走路に期待できず」→https://nolylandtokyo.com/2025/01/06/10547/


11月3日付米空軍協会web記事は、米空軍が8月に議会提出していた「戦闘機長期構成計画:Long-Term Fighter Force Structure」の中で、今年沖縄の嘉手納基地での運用を終え、米空軍全体での運用も2026年には終了する計画だったF-15C及びD型戦闘機が、遅れているF-15EX導入が完了する2030年まで約4年延長し、米本土領空保全任務用(米本土に接近するロシア機等へのスクランブル対処用)として加州の州空軍基地で使用される計画になっている、と報じています