今年の同校卒業生比率は海軍少尉776名と海兵隊少尉258名
現校長は史上初女性校長で次は海軍司令部作戦計画部長(N3-N5-N7)
次期校長は海兵隊のヘリ操縦者で人材募集のプロ
着任式でPhelan海軍長官は、「海軍飛行士(ヘリ操縦者)であり、イラクとアフガニスタンで3度の戦闘任務を経験し、各級指揮官として米海軍と海兵隊兵士を率いてきた歴戦の勇士」で、「(前職である海兵隊司令部人事募集部長としても、)海兵隊史上最高の新兵採用と定着率を達成」した「海兵隊の現代戦術と伝統の精神を融合させた軍事的ハイブリッド人材」だと紹介し、「士官学校で勝利と戦闘の文化を更に育んで行くだろう」と全学生の前で語っています。
海軍長官が「軍事的ハイブリッド人材」と表現した興味深いBorgschulte海兵隊中将のご経歴ですが、
●ヘリ操縦者としては、海兵隊の攻撃ヘリ(AH-1Z “Viper” Cobra)操縦者として、沖縄勤務2回(作戦計画部長やキャンプバトラー司令官)を含む経験があり、飛行部隊指揮官として少将で加州に拠点を置く第3海兵航空団司令官まで務めています
●特に興味深いのは、最前線の「募集事務所」勤務を中尉と少佐クラスで4年も経験している点で、その後も准将で海兵隊Recruiting Command司令官を務め、校長就任直前は中将として海兵隊司令部の人事募集部長(deputy commandant for Manpower and Reserve Affairs)まで勤めている点で、上記でご紹介した「海兵隊史上最高の新兵採用と定着率を達成」はこの際の功績です
●更に教育訓練職では、准将として海兵隊大学校長と海兵隊教育訓練コマンド司令官を務めており、人材育成面でも期待の人材のようです
冒頭でご紹介したように、米海軍士官学校の卒業生数比率(海軍3:海兵隊1)からすると、なぜ180年間も海兵隊出身者が校長職についていなかったのか「不思議」ですが、同校長職に関しては2つの奇妙な規定「同校長職を務めた後は退役しなければならない」&「校長職は3年間勤めなければならない」があり、海軍長官が規定免除を申請する道はあるようですが、この辺りも海軍に比して小規模な海兵隊から校長が出なかった理由に関係ありそうです
8月15日まで校長を務めていたのは、2024年1月に就任した初の女性海軍士官学校長(初のヒスパニック校長:同校1989年卒業)だったYvette Davids海軍中将で、この方は上記2つの規定の両方の免除を申請中で、大栄転で海軍司令部の最重要ポストの一つ作戦計画部長(通称N3-N5-N7)に推薦されており、議会の承認が得られれば9月に就任予定とのことです。
なおDavids校長は、トランプ大統領指示に従い、DEI関連書籍を図書館から直ちに撤去したことで話題となった方でもあります
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「なぜ180年間海軍人だけが?」と「なぜ今海兵隊中将が?」についてコメントしている報道やコメントが見当たらず、以下はまんぐーすの100%邪推です。
推測理由①→→現在の米軍の士官学校は「性的暴力」や「様々な規律違反(カンニング等)」の問題への対応に苦慮しており、海兵隊から新たな人材を投入して「組織文化の改革」を狙っている
推測理由②→→「米海軍トップ人事の2代にわたる混乱(就任直前の退役辞任や就任中の更迭)」の影響で、米海軍高級幹部レベルの人繰りが難しくなっており、理由①もあり海兵隊にポストを譲った
推測理由③→→Davids校長がDEI関連書籍を士官学校図書館から直ちに撤去した功績(女性でヒスパニックである点を逆手に評価)
興味深いご経歴で、日本にも所縁のあるBorgschulte海兵隊中将のご活躍に期待したいと思います
新校長Michael Borgschulte海兵隊中将のご経歴
https://www.manpower.marines.mil/About/Leaders/Biography/Article/3864243/deputy-commandant-manpower-and-reserve-affairs/
米軍士官学校の根深い問題
「続々カンニング事案」→https://holylandtokyo.com/2021/09/02/2157/
「士官学校の性的襲撃に変化なし」→https://holylandtokyo.com/2020/02/06/823/
「米3軍長官がセクハラ議論」→https://holylandtokyo.com/2019/04/19/6764/
「性犯罪対処室が捜査対象」→https://holylandtokyo.com/2017/07/11/7239/
米海軍トップ人事の2代連続混乱
「国防長官がそっけない更迭説明」→https://holylandtokyo.com/2025/06/27/11952/
「女性初の海軍制服トップ」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「異例:大将に適任者なく中将から」→https://holylandtokyo.com/2019/07/22/6695/
「最終手続き中に候補者突然の辞任」→https://holylandtokyo.com/2019/07/10/6686/

