米陸軍は2026年度に戦闘車両搭載レーザー防空兵器を選定予定
国防省の数十年に渡るレーザー研究の一つの成果も・・・
前線部隊の兵士が信頼して使ってくれるかが課題とか
これまで試験に参加した前線兵士の同種レーザー兵器への反応からすると、従来のドローン、ロケット、ミサイルを撃墜するミサイル(次世代迎撃ミサイルNext-generation interceptors、Coyote迎撃ミサイル、Stinger 携行ミサイル等)との比較において、兵士のレーザー防空兵器に対する「信頼感」が薄く、複数の兵器選択肢があった場合に兵士が「手を出さない」懸念がある実態を、米陸軍担当幹部の発言を基に紹介しています
米陸軍で本件担当の迅速能力導入室(Rapid Capabilities and Critical Technologies Office)のRober Rasch 陸軍中将によれば、2024年夏に陸軍演習場で行った試験で、「多層防衛網」形成のため、防空兵器として50KWレーザーと小型ミサイルを提供された兵士は、レーザー兵器よりも実績のある小型ミサイルを選択する傾向を強く示したとのことです
背景には、レーザー兵器の従来からの課題である射程距離と出力の問題があり、高工ネルギーレーザーであっても、地表や海面に近いほど大気中の粒子状物質が多くレーザーの指向性が低下し、標的との距離が遠ければ迎撃効果が不十分となりがちな点から、また雲や雨の影響を受けやすいことから、前線兵士にとっては命を預ける兵器として「頼りなく」映ってしまう兵器特性があると同中将は説明しています。
そしてこの改善策として、まず使用する兵士にレーザー兵器に慣れさせてその特性を良く把握させ、成功体験を積ませて同兵器への「信頼感」と兵器を使用する「自信」を与える必要がある、と同中将は述べています。
また別のアプローチとして、レーザー防空兵器を無人車両に搭載し、兵士よりも前線に配置して遠隔操作する方式を検討しているとも述べ、「レーザー兵器の射程距離を更に3km延伸するに必要な莫大な研究費を投入することなく、兵士の安全を確保する」ことも検討中とも述べています。
なお同中将は、機種選定の重要ポイントとして、レーザー兵器の性能と共に兵器の整備容易性を上げ、前線での修理のために、清潔で粒子のないクリーンルームを必要としないメンテナンス性を求めると述べています
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レーザー兵器の特長は、電力さえ確保できれば「弾切れを恐れることなく」無限に射撃が継続でき、弾薬輸送や補給の負担を無くすこともでき、発射後に目標へ光速で到達して効果が迅速に期待でき、多数目標への対処可能性が他兵器に比して高いこと等々が挙げられます
逆に装置が精密で振動に弱い、目標に打撃を与えるには高エネルギーを生む相当の電力確保が必要で、打撃を与えるには一定時間の連続照射が必要、雲や雨や大気中の埃で減衰すること等の、短所克服が容易でない点がマイナス面とされています
長所に目が向きがちな上層部に対し、短所の影響をまともに受ける現場の兵士は、理想だけでは自分の命が守れないので、厳しい評価が出るのは当然と言えば当然です。今後も相当尾を引く、「根本中の根本の課題」のような気がします
米陸軍の取り組み
「レイセオン社製を一度断念」→https://holylandtokyo.com/2024/05/16/5780/
「300KW級開発をロッキードと試作契約」→https://holylandtokyo.com/2023/10/18/5138/
「50KW級レーザー搭載車両3台試験導入」→https://holylandtokyo.com/2022/01/21/2623/
「議会が無人機対策詰問」→https://holylandtokyo.com/2021/08/17/2063/

