WSJ紙「米中緊張の中心的位置を占める」
2014 年当時の中国輸出規制にWTOが厳しい判決
新制度でWTO 違反や混乱なく任意に輸出承認遅延拒否援和を
取引の即時報告義務と最終用途申告により、中国が世界取引把握でツボに作用
約3か月前に中国政府が導入した新制度は、ジスプロシウム、テルビウム、サマリウム、ガドリニウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウム等々の特定のレアアース(およびその酸化物、合金、化合物)の輸出に際し、中国輸出業者に案件毎の許可取得を義務付け、その許可権を巧みに運用したことから、翌5月の輸出量が74%も減少する衝撃的な影響と、業界や外国政府に「完全なバニック」を与えたと記事は紹介しています。
具体的な制度変更について記事は触れておらず、まんぐーすも説明できないのですが、記事は、「環境問題を理由に正当化することが多かった従来の割当制度からの戦略的な転換」と表現し、新制度は資源ガバナンスを主権責任、国際協力、そして国家安全保障の問題として捉え、「国家の安全保障と利益をより良く保護し、核不拡散などの国際的義務を果たすため」と許可制の必要性を中国が説明しているとし、WTO 違反や恒久的な混乱を引き起こすことなく、ケースに応じ恣意的に輸出を承認、遅禁、又は拒否でき、供給を抑えたり緩和することを可能とした模様で、高度な官僚機構の能力を感じるとしています
中国政府は新制度について、「国際的な監視に耐えうる新たなアプローチを打ち出した」、「軍民両用輸出に関する国際規範を準拠した」と説明してアピールしていますが、公式声明や政府系評論家は、この新たな輸出許可制度が米国防省のサプライチェーンに対する中国の影響力を高めることを目的としていることを隠しておらず、中国当局は外国企業や政府の行動に応じて、インセンティブを与えたり、圧力をかけることが可能で、そのメッセージは明確となっていると記事は指摘しています。
また新制度は、ほぼ独占的に中国(世界生産の約 99%)が生産し、国防技術やグリーンエネルギー技術に不可欠な戦略的鉱物資源、シスプロシウムやテルビウム等のレアアースも対象としており、理想的な交渉材料となる「ボトルネック」を中国が握れる機会を提供しつつ、これらも国家安全保障上の理由から正当化されているとのことです。
更に新制度には、リアルタイムの輸出取引報告義務と最終用途の申告が含まれており、中国当局は世界のレアアースの動きをほぼ完全に把握可能となっており、この監視能力と輸出許可裁量権を組み合わせることで、北京は外交上または通商上の交渉カードとしてレアアースを持ち出すことが一層容易になったとしています。
そしてこの高等な交渉手段としてのレアアース新制康を、輸出管理組みの運用事例として中国当局は参考にしており、中国のアナリストたちは既に、国家安全保障を謳うレトリックに包まれた標的型規制の対象を、電池材料、航空宇宙用合金、バイオテクノロジー分野に拡大してどのように応用可能かを議論していると記事は懸念し、
米国への提言として、本件をサプライチェーンの問題としてだけでなく、より広範な戦略的競争の構成要素として扱い、対応策として国内の採掘精錬能力への投資、信頼できる国際的パートナーシップの構築、そして中国が応用範囲の拡大を狙う経済政策手段分野を監視する必要があると主張しています
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レアアースに関する基礎知識に欠けた中でのご紹介で、冗長でストレスがたまる記事となりましたが、中国による、「国際的な監視に耐えうる新たなアプローチ」や、「合法性、曖昧さ、そして正確さを融合させた、粗雑な妨害ではなく、体的に統制され武器化された制度」追及に注意すべきとの記事でした。
話はさておき、中国に関するまんぐーすの現状認識は、
●習近平は息のかかった部下や組織を次々と反習近平派によって排除され、急速に権力基盤を失っており、体調不良も重なって名誉ある退位を望んでいるとの情報もある状況で、「元老」達が権力を握り後継者を探るフェーズに移りつつある
●ただし、「元老」達や反習近平派はまとまりに欠けており、ますます混迷を深める中国内政や、特に経済対策で何も打ち出せないでいる。
●上記のように中国の権力構造が大きな転換点を迎えている中でも、日本の地上波 TV、新聞等のオールドメディアは何も報道せず、中国経済が回復傾向にあるかのような、現実から目を背ける「中国もち上げ」報道をNHKを筆頭として垂れ流している
レアアースを巡る米中関係
「中国依存脱却に大統領令」→https://holylandtokyo.com/2020/10/07/427/
「中国がレアアース輸出規制へ」→https://holylandtokyo.com/2019/07/08/6684/

