米が「ドローン支配」狙うも試験場確保困難でメーカー育成多難

「米国製ドローンでの支配」を狙い運用者対象Top Gun school計画
ただ無人機産業振興面では妨害試験環境準備で中霧ウクライナに遅れ
米国防省がFCC(連邦通信委員会)と FAA(連邦航空局)に働きかけも・・

7月18日付DefenseOneが、米国防省は「American drone dominance:米国製ドローンでの支配」を目指し、企業が開発する新型ドローンや最新技術の披露デモ試験「Technology Readiness Experimentation, or T-REX」を半年毎に実施しているが、8月のT-REXでは攻撃ドローン操作技術を参加者が競い学ぶ場(Top Gun school)が設けるなど、ハードだけでなく人的ソフト面にも取り組み始めていると報じています。

一方で同記事は、低コストで優れたドローンを大量製造する体制確立を目指す米産業界を巻き込んだ取り組みが、前政権による2023年開始の「Replicator 計画」で口火を切ったが、狙った成果が上がらなかった現状分析を試み、

大きな障害の一つとして、ロシアや中国やウクライナが潤沢に使用している、実戦に近い無人機妨害を再現可能な訓練場や開発試験エリアの確保が、演習場不足と、FCC(連邦通信委員会)やFAA(連邦航空局)の厳しい規制から困難で、ウクライナに試作品を持ち込んで現実の厳しさに直面した米企業が、ドローン事業から撤退する事例が少なくないと指摘しています

更に同記事は、詳細な説明を行っていませんが、中国によるドローン製造に不可欠なデジタル部品や電気部品市場の支配も、「米国ドローンでの支配」に立ちはだかる課題だと示唆しています

記事が語る戦場でのドローン急拡大
●2014の露のウクライナ侵攻時に、ウクライナが砲撃目標の位置偵察にドローンを投入したことを皮切りに、ISISのような過激派組織がドローンで手りゅう弾を投下する作戦を編み出し、ドローン活用範囲が急激に拡大。
●そして 2023年後半、ウクライナ国防省が一人称視点(first-person viewer, or FPV)の攻撃ドローン製造を強化し、ウ軍にドローン活用の大規模訓練を命じたことで、ドローンは戦場の新参者から戦術的勝利の決定要因へと激変し、ロシアの戦場損失の7割をもたらしたと言われるに至っている。

●各国のドローン製造能力に注目すると、CAN研究のSam Bendett氏は、ロシアは最前線部隊に総計で約 150 万機の小型ドローンを供給と推計し、昨年より今年はその製造量が増加すると分析している。一方で、ウクライナが月間 20万機の製造能力を確立し、ロシアを凌駕しているとも見積もっている。

米国防省が目指す「American drone dominance」の現状と課題
●7月7日の週にヘグゼス国防長官は、各軍種や各種戦闘コマンドが、独自により迅速にドローン調達を可能にする政策変更決定を行い、「大小あらゆるクラスのドローンで、我々は世界レベルになる必要がある」、「多様なシステムを迅速にテストし、部隊配備するための道を開き、決定を下層リーダーに委ねる」政策だと強調
●新任のEmil Michael 国防省研究開発担当次官は、国防省中庭に展示した様々なドローンのモデルや試作品を指差し、「American drone dominance」の開始を宣言しつつ、ドローン製造における「米国製部品の割合は増加する一方だ」とアピールしたが、そのペースや具体的数字には明言を避けている。

●ウクライナと協力しているドローン企業創業者 Brandon Tseng氏は、「米国は年に2~3回の電子戦環境試験を考えているようだが、この回数増加こそが改善すべき点だ」、「ウクライナで試験してないなら、その機器は十分ではない。欧州の軍指導者も証言している。多くの企業がウクライナに進出したが、ほとんど撤退したのではないか。あの電子戦環境は非常に過酷だ」と取材に述べている
●また先述の CAN 分析官 Bendett 氏は、「我々が(多数の中国企業を束ねて英知を結集し、膨大な試験を重ねた中国企業)DJIの成功を完全再現することは不可能だろうが、我々の創造性と戦術ドローン開発の膨大な努力を結実させなければいけない」と精神論を語っている

●国防省の Alexander Lovett 試験試作担当次官補代理は試験環境の重要性を認めつつも、「試験可能な場所は限られており、政府の射撃場が利用可能かで決まる。これが現実だ」、「FCC(連邦通信委員会)とFAA(連邦航空局)に働きかけ、より多くの試験と試験場確保のための規則とガイドライン変更を試みている」と述べるにとどまっている
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記事は、「FAAとFCCは、携帯電話やその他の重要な通信機器への影響を避けるため、米国のほぼ全域で妨害電波や電子戦の試験を禁止している。ドローンや対ドローン技術の開発者たちは、これが彼らの研究にとって大きな障害になっていると長年訴えてきた」と紹介しています。あの広大な米国大陸でも・・・だそうです。

「American drone dominance:米国製ドローンでの支配」は、今後どのような展開を見せるのでしょうか?
またウクライナは、どのようにドローン部品を調達し、大規模な製造能力を獲得したのでしょうか? 今後の勉強課題としておきます

小型安価ドローン大導入 Replicator 計画
「Replicator 計画の現在位置」→https://holyandtokyo.com/2025/01/09/10455/
「CCA 補完のETV無人機も急速」→https://holylandtokyo.com/2024/06/21/5988/
「再びReplicator計画を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/09/08/5016/
「副長官が Replicator構想を発表」→https://nolylandtokyo.com/2023/08/31/4997/

中国はドローン対処にも総力対応か!?
「ドローン対処に 3000社投入」→https://holylandtokyo.com/2025/05/28/11509/

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