現在ICBMと戦略爆撃機部隊を指揮するGSC司令官
Slife前副参謀総長更送後、5か月間の空席でやっと
空軍年間予算3年分のコスト超過でドロ沼の次期ICBM 事業を
米空軍副参謀総長ポストの前任者は、トランプ政権発足1か月後の2月21日に突然更送されたSlife大将で、同日更迭されたBrown統合参謀本部議長や米海軍トップのFranchetti女性海軍大将とともに、大統領や国防長官の権限の範囲で「正当な理由で職を解いた」との議会説明のみで更迭されており、広くメディが報じている「DEI(多様性、公平性、包装性)への取り組みに肩入れしすぎた為」とか「トランプ大統領を批判した為」等の「噂」の真偽は全く不明なままです
次の副参謀総長候補のBussiere 大将(推定で62歳以上)は、1985年に一般大学を卒業後戦闘機パイロット課程に進み、F-15C戦闘機乗りとしてイラクでの実戦を経験して約10年間を過ごした後、30代前半の 1996年にB-2やB-1爆撃機操縦に転換し、その後はほとんどが核兵器を扱うB-2爆撃機部隊、その上級部隊である Global Strike Command、更に統合の米戦略軍の主要ポストで仕事をしている人物です
7月16日付米空軍協会web 記事はBussiere大将の推挙に関し、
●B-2 操縦者のキャリアを持つ同大将は、これまでの勤務で、米国防省の核兵器事業に関連するポストを、米空軍および統合部隊の指導的立場で多数歴任してきた。
●同大将の推薦は、国防省が核戦力3本柱全て(センチネル ICBM、コロンビア級戦略原潜、B-21 戦略爆撃機)と、核戦力指揮統制システム近代化が進める中で行われ、その2本が米空軍管轄である。
●米空軍は、現在試験中のB-21ステルス爆撃機と、配備済み 400発のICBM ミニットマンⅢの後継機となるLGM-35A センチネルの配備準備を進めている。B-21開発は順調だが、センチネルは「大幅なコスト超過と遅延」に直面している。
記事で「大幅なコスト超過と遅延に直面」と表現された次期ICBM システムですが、「ICBMミニットマンⅢ」の後継である「LGM-35Aセンチネル」ミサイル開発は比較的順調なのですが、問題は 400発のICBMを格納する地下サイロ再整備(日本の中国&四国地方を合わせた面積の辺鄙な地域に分散配置:イメージで縦横 130kmx640km))や、地下サイロや指揮所を連接する地下施設や地下管制システム等の通信システムインフラの近代化で、
余りにずさんな管理状況から、建設当時の資料散逸や技術者の途絶、高度なセキュリティー資格を求める作業者確保の困難性など、検討すればするほど新たな問題が噴出する状態で、契約時の当初予算が約11.5兆円だったものが、2024年1月時点で15.7兆円に膨張し、サイロの再利用不可が判明した 2025年6月時点で「24兆円以上」との「天井が見えない」状態となっています
この金額は当初計画を15兆円近くも超過するもので、米空軍の年間予算総計5兆円の3年分以上の「天文学的コスト超過事業」となっており、原因根本には米空軍による「ICBM 部隊への無関心と放置」があることは明らかですから、米空軍として取り組み姿勢を示さざるを得ない状況に追い込まれている現在です
/////////////////////////////////////////////////////////
Bussiere大将との人物に異議を唱える意図は全くありませんが、これだけ専門性の高い経歴(経歴に偏りがある:戦略兵器や核兵器関連が大半)の人物が、空軍No2に就くことは普通ありません。
実質的に、米空軍副参謀総長を専従リーダーに指定して問題に対処するとの「対外説明」と理解すべき人事でしょう。
(重箱の隅をつつくようで恐縮ですが、大将に昇進する人物だと通常6年の大尉勤務を、8年も務めて点が気になります。)
Thomas A. Bussiere 大将の公式経歴表
→https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/article/108798/thomas-a-bussiere/
超巨大事業・次期ICBM整備の苦悩
「サイロ利用不可判明」→https://holylandtokyo.com/2025/05/14/11544/
「ずさんすぎる承認」→https://holylandtokyo.com/2024/07/10/6109/
「国防次官あきらめムード」→https://holylandtokyo.com/2024/06/05/5929/
「米空軍だけでは対応不能」→https://holylandtokyo.com/2024/03/01/5591/
「法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「長官が苦悩を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/
2月下旬の米軍高官更迭
「米軍高官を複数更迭から4か月:後任未定」→https://holylandtokyo.com/2025/06/27/11952/
「統参議長や海軍トップ等を解任」→https://holylandtokyo.com/2025/02/25/10900/
「米軍大将の2割削減指示」→https://holylandtokyo.com/2025/05/07/11517/

