米国会計監査院GAOが報告書で厳しく指摘
宇宙における米国との協力関係強化を妨げる要因とは
新興分野に起こりそうな「生みの苦しみ」か?
記事は端的に現状での課題を、「米国防省内の多数の関連機関で役割と責任の重複が多すぎること、機密指定が行き過ぎていること、そして重要なポストに空席が目立つこと等が、宇宙における米国と同盟国の協力を損なっている」と表現し、米国と最も緊密な同盟関係にある「Five-Eyes」国の豪州やカナダ、またフランス関係者への聞き取り結果等も含めて紹介しています
記事の主要ポイントを列挙すると・・・
●米国防省内の多数の関連機関で役割と責任の重複が多すぎる
→国防省の宇宙関連部署は急速に拡大しており、この問題を整理する意味もあり、2019年に米宇宙軍と米宇宙コマンド創設され、理論上は整理統合による合理化が進んでいるはず。しかしGAOは、同盟国等が訓練演習や情報共有などの際に、米国に多数存在する各種機関や軍部隊の誰と連絡を取るべきかに苦慮している
→問題は、関与する国防省組織が多すぎ、しかも業務の重複や組織の縦割り化で、同盟国等から見て複雑すぎる点にあり、報告書は「非効率を招き、同盟国等の調整機会を逸した」と指摘。
●過剰な機密指定や指定解除の煩雑さ
→同盟国等との協力強化には、必要な情報共有が不可欠であるが、米国は情報共有のための「機密解除」に苦労している。例えばGAOの聞き取りによれば、宇宙分野での重要演習Space Flagに昨年参加していた多くの国が、2025年の演習では「演習用の作戦計画が同盟国等に公開できなかった」ために参加不能になったとのこと。
→本件に関しては、米国と情報共有面で最も緊密な「Five-Eyes」国の豪州から不満が出ており、同じくカナダの上級幹部や担当者も「改善も見られるが、情報アクセス面で障壁が増加している」と指摘しており看過できない。またフランスは非常に厳しく米国の姿勢を批判している。
●重要なポストに空席が目立つ
→宇宙事業の重要性から官僚機構は増殖しており、ポストは増加しているが、よく見ると(人材不足や人材育成の遅れから、)、同盟国等との重要な連絡役職(key liaison positions)が未充足のままであることが判明した。
GAOは調査結果を受け国防省に以下3点を勧告
●同盟国等との協力関係強化の具体的マイルストーンを設定せよ
●宇宙軍内の重要な国際関係ポストを埋めよ(又は空席ポストの必要性を再精査せよ)
●同盟国等との関係担当部署を公式ガイドラインで明確に示せ。(重複するポスト排除も検討せよ)
ただし国防省は、「重複するポスト排除も検討せよ」との勧告は受け入れを拒否したとのことです
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宇宙軍は2019年に発足したばかりで、宇宙軍内部や他軍種&国防省内外の関連部署との任務の切り分けや、重複部署の「整理統合による合理化」が「道半ば」との言い訳が現時点では可能かもしれませんが、GAOが指摘した問題点は、社会学者マックス・ウェーバーが提示した「官僚制の逆機能」、つまり「縦割り・セクショナリズムに陥りがち」&「権威主義や過度な形式主義に陥りがち」そのものであり、
宇宙という、予算やポストが獲得しやすい新ドメインを「食い物」にしている「やから」が湧いて出ているとの解釈も可能でしょう・・・。官僚制に更に軍事が乗った、「軍事官僚制」を体現する硬直化しやすい組織ですから
7月8日付発表のGAO調査報告webページ
タイトル「DOD Is Pursuing Efforts to Collaborate with Allies and Partners but Needs to Address Key Challenges」
→https://www.gao.gov/products/gao-25-108043
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