でたらめな2つのプロジェクトが交錯する混沌
種々の細部が非公開で不明な状況をご紹介
米議会から「ボーイング契約の2機が納入される2028年までの短期使用のために、推定1500億円以上も税金を投入するのか?」、「ボーイング契約の機体改修が難航する中、カタール寄贈機の改修が短期間で可能なはずがない!」、「不十分なカタール寄贈機改修版を国内移動用のみに使用するつもりなのか?」、「ボーイング機が納入されたら、カタール機をトランプ図書館に寄贈するとの計画はおかしい?」等々との質問が投げかけられました。
これに対しMeink空軍長官は、
●カタール寄贈機の大統領専用機への改修には、議員指摘の1500億円もの経費は不要で、現時点では600億円以下で、改修開始から1年以内に完了する見積もりだ
●改修費用はICBMミニットマンⅢの後継次期システムを構築するSentinel計画の2024年度予算の余剰金を充当する予定である。明確にしておくが、Sentinel計画の当該年度予算は十分確保済で、この資金流用により、Sentinel計画への影響は皆無である
●ボーイングと契約済2機の納入は、早くても2028年なので、カタール機改造版は1年以上使用される。米空軍は航空機を受領し、改修を開始する準備ができているが、改修内容や想定する機体運用要領には言及できない
●米国とカタール間で合意された機体贈与の詳細や、手続きの進捗状況についても言及できない。
ちなみに次期ICBMシステムSentinel計画とは・・
●LGM-35A Sentinel計画は、当初予算が約11.5兆円だったが、2024年1月時点で見積が15.7兆円に膨張し、事業管理不適切な計画の再検討を求める「Nunn-McCurdy法」に抵触したため国防省が事業計画の再精査を行い、2024年7月の精査結果で21兆円にまで膨らむ結果が出たにもかかわらず、「米国核抑止の3本柱の最重要事業だから、止めるオプションはない」説明で事業を再承認した「でたらめの極致」な超大型プロジェクト。
●なお、Meink空軍長官の上院証言を報じる7月1日付Defense-News記事によれば、Sentinel計画は現存のミサイル格納用サイロの再利用が不可能と判明し、新規採掘の必要性が生じる等で経費が更に膨張し、総経費が24兆円となっており、当初計画を10兆円以上超過し、米空軍の年間予算総計5兆円の2年分以上の「天文学的コスト超過事業」となっている
ついでに、米大統領専用機のでたらめ具合も振り返ると・・・
●1990年導入の老朽米国大統領専用機(Air Force One:VC-25A)の後継機は、オバマ政権が2015 年にB747-8型機改良型「VC-25B」3機を約5700億円で導入決定。しかし価格高騰もあり、トランプ政権が2017年に3機を2機に削減し、かつ中古機再利用に変更して約4200億円に価格を抑え、2024年に引渡す契約にボーイングと「ディール」して更新
●しかし2022年5月、ポーイング下請け業者の業務遅延や能力不足で、納入が2024年から2〜3年遅れることが判明し、その後もSecurity基準を満たす作業者確保の問題や、サプライチェーンの混乱等々の理由により事業は遅延し、計画から5年遅れの2029年まで納入がずれ込む可能性が報じられるなど、同じくボーイング担当のKC-76空中給油機やT-7ジェット練習機と並びデタラメ事業の代表例入り
●2025年に入り、本計画に強い不満を示すトランプ大統領が、米空軍とボーイングが納入を2027年に早めるため、要求性能や各種製造要件の緩和を議論しているとの報道もあった中、5月21日に米大統領府と米空軍が、カタール政府が使用した中古 B-747-8機の寄贈を受け、その機体を改修して米国大統領機として利用すると発表していたところ。
●そのほか報道ベースでは、ボーイング製専用機が完成後は、数百億円かけて改修した機体がトランプ大統領図書館財団に移管されるとの情報や、L3ハリス社がカタール寄贈機の改修に関する暫定契約を交わし、2025年後半に契約締結予定との情報あり
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「犬も食わない」レベルの混沌具合になってまいりましたが、白髪が急増しているとメディアが心配するTroy Meink空軍長官のお写真が出回っている状況です。
「F-47導入決定」後は、米軍全体で大将ポスト2割削減、E-7導入中止、次年度のF-35調達機数半減などなど、「トランプ暴風」に巻き込まれている米空軍ですが、引き続き「生暖かく」見守っていきたいと思います
大統領専用機巡るゴタゴタ
「カタール贈与機を一時大統領専用機に」→https://holylandtokyo.com/2025/05/23/11626/
「トランプは遅れに不満」→https://holylandtokyo.com/2025/02/26/10890/
「2024年予定から 2-3年遅」→https://holylandtokyo.com/2022/05/31/3291/
超巨大次期ICBMシステム整備の苦悩
「サイロ再利用不可判明」→https://holylandtokyo.com/2025/05/14/11544/
「ずさんすぎる再承認」→https://holylandtokyo.com/2024/07/10/6109/
「国防次官あきらめムード」→https://holylandtokyo.com/2024/06/05/5929/
「米空軍だけでは対応不能」→https://holylandtokyo.com/2024/03/01/5591/
「法抵触の議会通知」→https://holylandtokyo.com/2024/01/29/5478/
「長官が苦悩を語る」→https://holylandtokyo.com/2023/11/22/5244/

