6月1日のウ軍によるロシア爆撃機等攻撃に対する反応
対ドローン防衛強化を主張も米空軍の戦闘機と爆撃機計画に影響なしと
米空軍の応援団である米空軍協会の6月3日付web記事が、お抱え研究機関の専門家を動員し、敵ドローン攻撃に対する航空基地防空システム整備は喫緊の課題で、本件への取り組みが鈍重な米陸軍には任せておけず、実用性に疑問符が付く陸軍の「極超音速兵器開発プロジェクト」などへの投資を中止し、対ドローン防御システム開発予算として米空軍に付け替える等の措置が直ちに必要だと主張するとともに、
ウクライナ軍はステルス性や必要な攻撃兵器を備えた航空アセットを保有していないがために、このように準備に時間のかかる作戦を発案し、それはそれで革新的なアイディアではあったが、米空軍はより柔軟で迅速な対処がが可能で、攻撃オプション選択が可能で、他国が保有不可能な B-21ステルス爆撃機や F-47 次世代戦闘攻撃機の開発導入で任務遂行を目指しているわけであるから、
ウクライナの事例は、今後の方向性に影響を与えるものではなく、米空軍が見習う事例ではない(is not necessarily a template for the US Air Force to follow)・・・と「必死の防御線」を張る主張を展開しています
以下では、まだ謙虚な姿勢が垣間見えるAlIvin 米空軍参謀総長の反応をご紹介した後、上記でご紹介したような主張を展開する、米空軍協会ミッチェル研究所のDeptula 所長と Mark Gunzinger 将来戦研究部長の見解をご紹介します
Allvin 米空軍参謀総長の反応(6月2日の講演)
●戦闘における技術革新は非常に急速な発展を見せている。・・我々はその事実に謙虚になるべき
●敵からの攻撃を心配する必要のない「聖域」が存在しないことを肝に銘ずるべき。また、軍隊が目標に到達するために長距離を戦わなければならないという考え方も消えつつある
●ウクライナから学ぶことを考えるべき
Mark Gunzinger 将来戦研究部長の見解
●革新的な攻撃で、「敵空軍を排除する最良の方法の一つは、それが地上にいる時だ」との真理を改めて示したが、過剰に評価すべきものでもない。
●欧州では大きな意味を持つかもしれないが、関連ドローンは地上を車両でロシアに輸送されており、西太平洋での戦闘において同様の手段で長距離攻撃を行うのは現実的ではない
●ウクライナのドローンは、強固に防された空域に到達して突破するに必要な航続距離、ステルス性、武装を備えた戦闘機や爆撃機ではなく、自走砲や巡航ミサイルの役割を果たしたのだ。
●米国も同様の能力を持つべきだが、近距離攻撃が可能な小型ドローン部隊に資金投入するのではなく、米空軍は「他空軍が保有できない紛争地域を深く攻撃する能力、突破力のあるB-21爆撃機やF-47 戦闘機」に投資すべき
●米空軍は自身の航空基地と部隊の防御態勢を整備すべきだが、本来この任務を担当すべき米陸軍は数十年にわたり空軍基地防衛任務を「怠り」、長距離攻撃ミサイルや固定機(情報監視偵察機)への投資を優先してきた。
ミッチェル研究所のDeptula 所長は
●突破力のある爆撃機やステルス機、ISR攻撃キルチェーン、敵防空網の制圧能力を保有しないウクライナは、必要な効果確保のため、戦力投射のための革新的な手段を考案する必要があった
●今回のドローン空襲は野外駐機の航空機の脆弱性を改めて露呈させたが、歩兵、戦車、船舶、兵站倉庫なども、同様の脆弱性を持っており、このような敵攻撃を受ける可能性がある
●安価で小型、かつ多数の精密読導兵器による脅威は重大で、米軍全体が基地と地域の防衛を優先して革新的な防衛手段で対処準備を行い、作戦を分散化し、空軍に関しては老朽航空機の早期退役による捻出資金を補充するだけでなく、基地防衛強化に迅速に行動しなければならない。
●ヘグゼス国防長官は、米陸軍の極超音速ミサイル開発を中断し、その資金を効果的なドローン対処能力と基地防衛の構築に活用すべきで、今こそ強いリーダーシップと率直さが必要だ。
●極超音速ミサイルは、平時には地域の軍事バランスを不安定性する要素が大きすぎて同盟国に配備できず、戦時にはエスカレーション効果が大きすぎて実用的ではない兵器だ。
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読者の皆様は、米空軍応援団であるミッチェル研究所主要幹部のご意見を、どのように受け止められたでしょうか。
ウクライナによる革新的なドローン攻撃の脅威や航空アセットの地上での脆弱性を認め、航空基地防衛強化の重要性と緊急性を確認している点において、軍事専門家としての姿勢は評価いたしましょう。
しかしそれにしても、従来型の航空アセット投資(B-21次期爆撃機やF-47次期戦闘機やF-35 戦闘機等への投資)に議論が及ぶのを恐れるあまり、議論すべき論点の一つだとは考えるものの、「地上輸送が可能な欧州大陸と西太平洋の違い」にまず言及したり、「米陸軍が航空基地防衛を怠ってきた」ことを殊更に強調するなど、白ら「墓穴を掘る」展開に持ち込んでいるような気がしてなりません。
従来型の航空アセット投資に関して、米空軍予算内でのシェア見直しや別分野への配分が必要なことにも言及してほしかったですし、ミッチェル研究所として重要な検討・研究対象とする決意を披露していただきたかったところです。
ドローン対処の苦闘
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