トランプ大統領が統参議長や海軍トップ等の解任発表

米空軍副参謀総長や陸海空軍の法務部門トップもクビ発表
次の統参議長候補は昨年12月退役のCIA軍事担当次長(空軍中将)
首切りリストは今後も追加発表の見込み

2月21日、トランプ大統領が自身の SNS「Truth Social」で、現在の米軍人トップである統合参謀本部議長 Charles Q. Brown Jr 空軍大将を解任し、2024年12月にCIAの軍務担当次長(Associate Director for Military Affairs)を空軍中将で退役したJohn “Dan” Caine 氏を次の同議長に推薦すると明らかにし、

併せて大統領の指示を受けた Hegseth 国防長官が、初の女性米海軍トップに就任している Lisa Franchetti 海軍大将や、米空軍副参謀総長のJames C. Slife 空軍大将、陸海空軍の法務部門トップ(Judge Advocates General) 3名も解任するとの発表を行いました。なお、米軍事メディアによると、今後追加で複数の解任対象者が発表される模様です。

同SNS発信の冒頭で大統領は、Brown統参議長の40年間に渡る軍務への貢献を讃え、「立派な紳士であり、傑出したリーダーだ。彼と彼の家族の素晴らしい将来を願っている」と綴っていますが、普通であれば2027年9月まで同ポストを務めるはずだったBrown 大将が、具体的にいつ業務を離れるかは不明だということです。

後任候補のCaine退役中将を、親しみを込めF-16パイロット時のコールサイン「Razin」で呼ぶトランプ大統領は、自身最初の大統領任期中の 2018年~19年に、イスラム国に対する作戦「生来の決意作戦:Operation Inherent Resolve」の特殊作戦担当副司令官を務め、当時から頻繁に大統領として賛辞を送っていた同退役中将を、

「彼は熟練パイロットであり、国家安全保障の専門家であり、成功した起業家であり、省庁間および特殊作戦で豊富な経験を持つ戦士だ」、「私の最初の任期中、RazinはIS完全壊滅に尽力した。わずか数週間という記録的な速さで成し遂げたのだ」と同中将を紹介し、Razin を大将に昇任させなかったバイデン前大統領を「居眠りバイデン」と痛烈に非難しています。

米国の関連法令によると、大統領は統合参謀本部議長に、以下の3タイプの人物を推薦できます
(A)統合参謀本部副議長
(B)陸軍参謀総長、海軍作戦部長、空軍参謀総長、海兵隊司令官、または宇宙作戦部長、
(C)統合または特定戦闘軍司令官の経験者
ただし、「大統領が国家の利益のために必要だと判断した場合」には、これらの要件は免除されるとも規定されており、今回の Caine 退役中将はこの「免除」ケースに該当するようです。当然、議会承認は必要になります。

一度退役した将軍が復帰したケースは、2000年に統合特殊作戦軍司令官で一度退役したPeter Schoomaker 陸軍大将が、ラムズフェルド国防長官により2003 年に陸軍参謀総長に召還された事例や、1959年に陸軍参謀総長を退役したMaxwell D. Taylor 陸軍大将が、3年後にケネディ大統領により統合参謀本部議長に就任するため現役に召還された例があるようです。

なお、Hegseth国防長官は2024年発表の著書「The War on Warriors」で、解任されるBrown 統合参謀本部議長と米海軍トップのFranchetti 大将について厳しく批判し、
Brown 大将について「左翼政治家の過激な立場を忠実に追求し、その見返りとして昇進を果たした」、「人種問題を自身の最大の売り文句の一つにしている」と言及し、
Franchetti 海軍大将については「2023年に海軍人トップに選ばれたのは主に女性だからだ」 と酷評しており、解任は時間の問題ともされていました。
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確かに、統参議長のBrown 大将は、太平洋空軍司令官から何名もの先輩対象を飛び越して突然米空軍参謀総長になり、そののち統参議長に就任していますから、それまでの米空軍将官の人事の流れとは異なる「力学」が働いたものと推測できます。

また米海軍トップのFranchetti 海軍大将(写真の右側はSlife空軍副参謀総長)についても、現在の太平洋軍司令官である Paparo 海軍大将が、海軍トップに就任する既定路線で国防省と米海軍各方面が準備を進めていた中、突然のどんでん返しでFranchetti 女史が就任した経緯が当時はありました。

ただ、ご両名の仕事振りや関係者の評判を直接見聞きする立場にはなく、噂があったとは言え、その現実にただただ驚くばかりで、この後もしばらく続きそうな「解任の嵐」を眺めることになりそうです。

統参議長の後任候補 Caine 退役空軍中将は、以下の米空軍公式経歴表からすると推定58歳で、空軍士官学校卒ではありません。

F-16 操縦者としての技量を少佐までに極めた後は、中佐時に農業省・ホワイトハウス勤務で見識を広め、その後は特殊作戦分野で中東や統合作戦勤務が続き、最後は州空軍司令部とCIAの上級スタッフ長を経験した米空軍戦闘機パイロットの本流ではない経歴で、泥臭い実戦も政府官僚機構での業務も承知した人物のようです

John D. Caine 退役中将の空軍公式経歴
https://www.af.mil/About-Us/Biographies/Display/Article/2942633/john-d-caine/

Brown 空軍大将関連
「軍人トップ候補の Brown 大将」→https://holylandtokyo.com/2023/05/09/4618/
「行動指針を小冊子で」→https://holylandtokyo.com/2020/09/02/471/
「次期空軍トップ候補に」→https://holylandtokyo.com/2020/03/04/773/

Franchetti海軍大将関連
「女性大将が米海軍トップに就任へ」→https://holylandtokyo.com/2023/07/24/4888/
「海軍トップ人事のドタバタ」→https://holylandtokyo.com/2023/06/13/4747/

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