今後3つの分配(作業・収益・費用)に関する困難な交渉が
「GCAPへの沈黙」や多くの未決事項が日本には存在
日本の関係者は GCAP が注目されることを望まない
記事は、GCAP(Global Combat Air Program)の現在位置と、日本が2014年に戦後の武器輸出禁止政策を緩和して以来、日本にとって最大かつ最も高額な装備品開発プロジェクトを取り巻く様子を海外に紹介する内容となっており、日本の読者にとっては周知の、日本の兵器開発に伴う陰鬱な雰囲気や現在の少数与党の状況、更には容易ではないトランプ政権との折り合いなどに触れ、日本の「GCAPへの沈黙」事情を紹介しています
3か国次世代戦闘機 GCAP開発の現状
●2035年就航を目指し、GCAP用の日英伊3国合同本部がロンドンの西50kmのReading に開設され、開発、生産、将来の輸出を監督する国際機関として活動を開始し、中谷大臣も訪問した
●3カ国は同本部で今後、今後3つの分配(作業・収益・費用)や独白情報と技術の移転、更にはサウジなど第三国の関与など、協定でより細部を煮詰めることになるが、各国とも「仕事の分担と利益の最大化を望む一方、財政的負担を最小限に」との思惑があり、非常に困難な交渉となる
英国の状況
●英国政権は13日の週に発表した国防報告書で、数十年にわたる遅延、開発の障害、巨額の費用超過を経験した過去の兵器開発の悪習を打破し、支出を抑制する必要性を改めて強調。
日本の状況
●欧米と日本の国防産業を結びつける役割を担う国際安全保障産業協議会の Angelus会長は「2024年に同協議会はGCAP計画の日本での認知を高める活動に取り組んだが、多くの反対に遭遇し、日本当局もそのような活動を望まず、日本企業も困惑気味で、webサイトからGCAP との言葉さえも削除することを迫られた」と振り返る
●日本は2022年にGCAP 協定に署名して以来、今後5年間の研究開発費として毎年数十億円を割り当て、数百人の技術者や専門家を投入してきた。また中心となる三菱重工は 2024年 7月、日本の航空宇宙産業界と共同で、GCAP 関連の国内企業の統一組織である日本航空機工業強化株式会社(JAIEC)を設立して体制づくりを進めている
●しかし、日本には「日本は平和国家であるべきで、軍需産業は不要」と考える人は多く、一部の政治家はこうした声を非常に懸念している。2024年秋に当時の岸田政権は、GCAPに対応すべく防衛装備移転規則を緩和したが、それでも輸出に厳しい条件は残っており、専門家らは 2035年までに条件の更なる緩和が不可欠だと疑念している状況
●石破首相率いる与党は昨年の選挙で過半数議席を獲得できず、防衛力移転規則見直しの余裕はなく、現内閣での改正は期待薄で、GCAPは今後も政治的抵抗と国民の監視に直面する可能性が高い。それ以前に、防衛費に国内総生産(GDP)の2%を充当するとの5か年計画がとん挫する可能性もある
トランプ政権との折り合いは可能か?
●日本の安保専門家は、GCAPが米国製戦闘機より安価だと証明できれば日本国民の説得材料にはなろうが、トランプ大統領の出現は本件を更に複雑にすると見ている。前トランプ政権時は、安倍首相がトランプ氏と良い関係を構築できたが、石破首相にはそれを期待しにくく、米国からの圧力をどの程度吸収できるか予測できない
●また、安倍首相は米国から多くの戦闘機を購入すると約束しており、トランプ氏の大統領就任で、GCAPは米国製戦闘機との競争に直面する可能性がある。また別の専門家は、日本政府は安全保障戦略と欧州と組むGCAP の重要性について、トランプ政権を説得する必要がある
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アジア担当Defense-News 特派員(フィリピン女性)の目から見た、GCAPと日本の状況給介も「一興」かと思い記事を取り上げた訳ですが、その前に大前提として、日本が巨額の費用と貴重な人材を投入し、日英伊にサウジまで絡めて今更戦闘機を開発しようとしていることに、まんぐーすがため息 1万回相当の「やるせなさ」を感じていることを強調させていただきます。
年頭にご紹介したStimson Centerのレポートが、「中国のミサイル兵器の存在を考すれば、有事に日本やグアムの滑走路には期待できない。日本には滑走路に依存しないアセットや無人機中心体制への変革を要求せよ」と訴えているように、また本ブログで約 15年かけて「戦機命派」を非難する中で繰り返し述べてきたように、日本の防衛にとって戦闘機は「オワコン」な代物です
記事は「トランプ氏の大統領就任で、GCAP は米国製戦闘機との競争に直面する可能性がある」との日本の専門家の懸念を紹介していますが、その米国は「脅威の変化を受けた航空優勢の実態変容」を受け、自国の次期制空機 NGAD 開発の再検討を迫られ、トランプ政権にその結論をゆだねて先延ばしにしています。そんな現状を本ブログで知った GCAP 関係者の胸中に去来する「陰鬱さ」を察するに、いたたまれない気分になる今日この頃です。
更に付言すれば、イーロン・マスク氏が現在の英国政権を左翼的だとして、対抗勢力を支持する姿勢を明確に打ち出すなか、中国べったりの石破政権がトランプ政権と良好な関係を作れるとは考えられず、日本のGCAP関係者が期待するものは何も見当たらない現状です
Stimson Center による当然の帰結レポート
「日本やグアムの滑走路には期待できず」→https://holylandtokyo.com/2025/01/06/10547/
GCAP関連の記事
「英が踏みとどまる」→https://holylandtokyo.com/2024/11/12/6529/
「英が見直し検討???」→https://holylandtokyo.com/2024/09/24/6364/
「日英伊がやっと合意」→https://holylandtokyo.com/2023/12/18/5352/
「英伊が日本に:逃げるな!」→https://halylandtokyo.com/2023/02/14/4299/
米国の次世代制空機 NGAD 検討関連
「トランプ政権へ先送り」→https://holylandtokyo.com/2024/12/09/10419/
「再検討は年内終結」→https://holylandtokyo.com/2024/10/31/6478/
「NGAD はF-35より安価に」→https://holylandtokyo.com/2024/09/19/6351/
「数か月間保留する」→https://holylandtokyo.com/2024/08/06/6185/