中国空軍パイロット養成改革は2030年代完了?

今は米空軍の2倍の期間で要請とか
士官教育と操縦教育の兼ね合いもネックか
練習機の近代化も今後の課題か
養成数は年間400名(米空軍は1300名規模)

11月18日付で米空軍大学内の「中国航空宇宙研究所」Derek Solen研究員が、「中国空軍操縦者教育の改革は順調に」とのタイトルの7ページのレポートを発表し、同26日付米空軍協会web記事が概要を取り上げていますのでご紹介します。全体像がつかみにくい記事で、読者の方には消化不良になるかもしれませんが、まんぐーすの記事解釈に基づく「意訳」も含め、今後の情報を読む基礎情報としてざっくりご覧いただければと思います。

ただ米空軍大学の「中国航空宇宙研究所」は、2022年10月に中国ロケット軍(核ICBMから各種弾道ミサイルまでを運用)の組織や部隊配備や部隊指揮官名簿や運用思想や訓練状況等までを含む極めて詳細な250ページ以上の報告書をWeb上で公開し、その内容の緻密さから「中国軍内部からのリーク情報に基づくもの」と西側専門家の多くが解釈する報告書を出す機関ですので、取り上げておきます

ランダムに記事から報告書の概要を・・
●中国は戦闘機パイロット養成期間の短縮と、練習機の第3世代機から第4世代機への完全移行を開始したが、彼らが目指す完全に近代化された操縦者訓練システムが実現するのは2030年初めになるだろう(なお、パイロット養成学校は過去10年間で6校から3校に統合された)
●養成訓練近代化を行った中国空軍の3つの訓練センターの1つである石家荘飛行学院(Shijiazhuang Flight Academy)では、古い訓練プログラムとそこで使用されていた航空機(ロシア製Mig-21)を完全に置き換え、4年間の訓練期間が約3年間に短縮された

●中国には士官学校等の一般的な将校養成学校がなく、パイロットとなる士官は、中国空軍航空大学で3年間の将校養成と教育を受けた後、最終学年の4年目に初級飛行訓練を開始する。卒業後1年間の中級訓練、さらに1年間の上級訓練を受け、その後配属された戦闘部隊で1年間の専門教育を受ける。
●中国の飛行訓練教育では、基礎航空学/士官学生訓練から最前線部隊での1年間の専門教育まで約4年間必要で、米空軍で学生が初等教育から実戦飛行隊に配属されるまで期間の約2倍の期間が必要となっている。

●中国空軍は年間約400人の操縦者を養成(総保有機機数は約3500機)しており、養成数はゆっくりと増加との推計。一方米空軍は年間約1350人のパイロットを養成(目標養成数は1800-2000。総保有機機数は約5500機。7000機との数字も)
●(まんぐーすの解釈整理&意訳を相当含む→)中国空軍パイロット育成のボトルネックは、年間養成数的には養成用の航空機数と教官数の不足が根本にあり、養成期間的には、士官教育との同時並行制度(分離を過去試みるも実現不十分)や、シミュレーション機器不足や各訓練生の能力や進捗に応じた個別指導管理の不十分さが障害となっている模様

●練習機である露伊のYak-130の派生型である紅都JL-10練習機(Hongdu JL-10 trainer)の導入で、Fly-by-Wireやグラスコックピットへの適応訓練が開始され、養成期間が1年短縮の可能性があり、早くはない進歩があるが、中国が第4、第5世代戦闘機のJ-10、J-15、J-20等を導入する中、JL-10では不十分。中国版F-16のJ-10の2人乗りバージョンは高度な戦闘機や攻撃機の訓練に使用開始され始めているが、一部教官のみが現在は利用している
●(まんぐーすの解釈整理&意訳含む→)これら中国軍の戦闘機や練習機の更新ペースや、士官教育との兼ね合い調整状況等を勘案すると、中国空軍が目指している、現在の前線部隊への依存が大きい現在の養成体制から、移行訓練を戦闘部隊から新しく設立する訓練旅団へ完全に移行させるのに、少なくとも2030年まで必要になる可能性が高い。取り組み次第で加速する可能性はあるが。
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最後にご紹介した「新しく設立する訓練旅団」が、最初にご紹介した石家荘飛行学院(Shijiazhuang Flight Academy)なのか、その将来像なのか等々、記事をご紹介していても「?」部分が多いのですが、とりあえずご紹介を試みました。

率直に申しあげると、筆者のDerek Solen研究員は、報告書タイトルとして「改革は順調に・・:Proceeds Apace」と掲げていますが、まんぐーすは「とてもじゃないけど、そうは見えません」との印象を持ちました。中国軍の脅威を煽る表現を、デフォルトで使用しているような気がいたしました

報告書(実質5ページ+参考文献2P)の現物
タイトル「中国空軍操縦者教育の改革は順調に:Modernization of Fighter Pilot Training in the PLA Air Force Proceeds Apace」
https://www.airuniversity.af.edu/Portals/10/CASI/documents/Research/PLAAF/2024-11-18%20Modernization%20of%20Fighter%20Pilot%20Training%20in%20PLAAF%20Proceeds%20Apace.pdf?ver=UohKp62x8xot-laygKRXCg%3d%3d

JL-10練習機の紹介映像(約6分弱)

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