核による先制攻撃のための偵察衛星
「いまや戦争の脅しは、核戦争の脅しにかわった。北朝鮮が戦争をしていないことは平和を必ずしも意味せず、戦争するとの脅迫が続くことでもあり得る。この強要戦略に必要なドクトリンが、核で戦争を始める先制である。」
8月6日付防衛研究所 NIDS コメンタリーで、渡邊式・地域研究部アジア・アフリカ研究室長が「北朝鮮の先制ドクトリンー核へのエスカレーションではなく、核で始まる戦争」との、やや難解な論考を発表していますで、想像をたくましくしながら、まんぐーすが少しアレンジしながら勝手な理解でご紹介します
まず、日本語の「先制」は単に先に攻撃を仕掛ける意味が含まれるが、本稿でいう「先制」は、英語 Preemptionの語意に従い、相手が攻撃に着手するなど差し迫った脅威を除去する行動を指している・・・との脚注1に留意して読む必要がある論考ですが、最近は誰も相手にしない北朝鮮が、通常兵器で米韓に大劣勢である状況や、韓国国民をも核「先制」攻撃の対象として脅迫するまでに追い込まれている現状を、改めて思い知らされる論考ですので取り上げます。
渡邊アジア・アフリカ研究室長によれば
●核兵器使用に関し、ロシアは「先行」使用(First Use、戦時に相手より先に核へのエスカレートをする方針)を 2020年6月にプーチンが署名した文書で明確に示し、ロシアは「国家の存在を危険にある」場合、「通常兵器」による攻撃に対しても核で報復し得るし、政府や軍の重要施設への攻撃があり、それが核戦力の行動を難しくするならば、敵の攻撃手段が核でなくてもロシアの対応は核によるものとなり得る、と表現している
●同様に北朝鮮も、2022年9月公式化のドクトリンでは、ほぼ同様な条件での「先行」使用を表明し、「国家指導部と国家核戦力指揮機構」に対する「核および非核攻撃」、あるいは「国家の重要戦略対象」への「軍事的攻撃」には、核兵器で対応すると表現していた。
●ただ北朝鮮がロシアと異なるのは、これら非核攻撃がまだ現実化していなくても、「差し迫った」ならぱ核兵器を使用するという、「先制」も表明している点である。北ドクトリンは、自らに対する「核兵器またはその他大量破壊兵器攻撃が敢行されるか、差し迫ったと判断される場合」に核を使用するとしている
●北朝鮮が「先行」だけでなく「先制」にまで踏み込んだのは、北朝鮮は通常戦力で米韓に対し著しく劣勢で、ロシアのように軍事攻撃のエスカレーションとして敵より先に核使用する形は難しく、北朝鮮にとって「先行」使用の有用性は限られる
●また北朝鮮は、開戦を脅迫のオプションとして維持している。プーチンはウクライナとの戦争を始めてしまった結果、ウクライナに戦争を仕掛けると脅迫できなくなった。対照的に金正恩は戦争を保留していることで、戦争すると脅迫し続けられる。
●実際、2023年12月末、金正恩は「核兵器」を含む手段を動員して「南朝鮮全領土を平定する」準備を進めると演説しており、これは、開戦していないから可能な脅迫である。開戦を脅しに核を最大限に活用する手段は、開戦した後で核にエスカレートする先行使用ではなく、開戦が核使用を意味する先制であろう。
●劣勢の通常兵器で開戦すると脅迫しても信ぴょう性は低い。核兵器によって開戦する先制ドクトリンがあれば、金正恩が本当に発言通りに行動するかもしれないとの切迫感を韓国側に抱かせ得るのである。
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渡邊室長は論考の後半で・・・
●北朝鮮幹部が、韓国軍を「無慈悲にせん滅」するとか、韓国軍が北朝鮮を「先制打撃」すれば、核攻撃により「南朝鮮軍は壊滅、全滅に近い凄惨な運命」に直面するのであり「核保有国を相手とする軍事的妄想を控えねばならない」との発言をしていること、
●また、危険を招く現政権をなぜ韓国国民がそのままにするのかと述べ、文在政権時には「少なくともソウルは我々の標的ではなかった」と警告していることから、韓国市民への核攻撃を示唆して脅迫することに使用している・・・との見方も紹介しています
最近は特にNK内の食糧事情が厳しく、異常気象による水害多発等もあり、かりあげクンが政権幹部や軍部等による反逆やクーデターを真剣に懸念しているとの噂に接することが多いのですが、核兵器での「開戦」や「先制」カードをちらつかせるほど、内部的には弱みを見せることにつながっているのでは・・・といらぬ心配をしてしまいます
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