細部は引き続き非公開も主に進路指示入手か
米商用ネットを通じ短時間に高密度情報やり取りか
米政府は早期撃墜より監視から情報入手選択か
12月29日付米NBC放送web記事は、2023年2月初旬に米大陸を横断し、2月4日に米空軍F-22戦闘機によりサウスカロライナ州沖の大西洋上で撃墜され、海上に落下した中国製のバルーンを米当局が回収&分析した結果の一端について、複数の現役及び元米政府関係者の証言を基に、中国製バルーンが中国との通信のため、米国企業が提供する商用インターネット回線を利用していたと報じています
匿名の2名の現役米政府関係者と元関係者によれば、当時バイデン政権は非公開で司法当局に、当該企業提供のネット通信のモニター権限を請求して許可され、あえて中国製バルーンを早期に撃墜することなく、米本土を西海岸側から東海岸まで横断させてバルーンの行動や中国との情報のやり取りを監視&情報収集することを選択したとのことです。
そして当該バルーンは、多数のアンテナと搭載機器を積み、更にそれら機器を駆動させるに必要な電力を確保するに十分な太陽光発電パネルを具備していたが、バルーンが米本土横断中に直接中国と通信をする能力はなかったと、匿名証言者は語ったとしています
ただし、情報通信や自身の位置情報を得るためバルーンが装備していた多数のアンテナ活用し、短時間で大量の情報を送信するための高周波通信が可能な能力を保有し、主に中国から飛行進路に関する指示信号を入手していた模様だが、気球が収集した電子信号には基地職員間の通信や兵器システムからの信号が含まれていた可能性があるとも語った模様です。
また同バルーンが米本土を横断する間の米軍の対応について、NBCは2023年12月に米空軍北米防空司令部NORAD司令官のGlen VanHerck大将にインタビューし、「米軍核戦力の運用を担う米戦略コマンドと連携し、核兵器の運用に関する重要事項を世界各地の核兵器担任部隊に指示する等の、秘匿度の極めて高い情報を含むEAM(Emergency action messages)の発信を、バルーン飛行中は制限して傍受されることを避けるよう関係部署に徹底した」との情報を得ています
本件に関し、在ワシントン中国大使館の報道官は、以前からの中国の立場を繰り返し、「当該バルーンは気象観測用であり、偏西風と自力航法能力の限界から、意図せず米本土を飛行することになったものだ」との主張をNBC放送や米メディアに繰り返している模様です
また複数の米政府関係者によれば、過去に中国情報機関関係者が様々な国での活動において、隠れて商用インターネット回線をバックアップ回線として使用したことが確認されているが、中国関係者は一般的には、暗号により秘匿化された情報漏洩の可能性の低い回線の利用を指向している模様です
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NBC放送は当該記事において、中国製バルーンが利用したネット回線提供の米企業名を明らかにしていませんが、当該企業の「わが社の調査や米当局者との協議から、我が社提供の回線が同バルーンによってに使用された事実はない」との主張を紹介しています
別報道機関は、2023年夏に情報漏洩で逮捕された21歳の州空軍兵士によってリークされた米国防省文書も元に、同バルーンが電磁データを使用して高解像度画像を作成する合成開口レーダーを搭載していた可能性がある、と報じた模様です
2023年2月4日に撃墜された同バルーンに関しては、FBIを中心とした調査チームが非公開の調査報告書を出していますが、中身は秘匿され、限定された人にしか公開されていないようです。
中国の経済崩壊が、中国共産党支配の中国体制を崩壊させるのでは・・・との憶測も飛び交い始めた今日この頃ですが、2023年2月の奇妙なバルーン事件が、後世においてどのように位置づけられるのか興味深いところです
防衛研究所の対中国姿勢がわかる公刊物
「中国の台湾への接触型「情報化戦争」」→https://holylandtokyo.com/2024/01/05/5398/
「「中国の影響工作」概要解説」→https://holylandtokyo.com/2023/12/21/5362/
「異様な中国安全保障レポート2024」→https://holylandtokyo.com/2023/11/28/5299/