旅団レベル用TLS-BCTと師団以上用TLS-EAB
ウクライナ教訓受け陸軍が全力で推進中
「Stryker」と「AMPV」へ搭載へ
8月7日、米陸軍のDoug Bush技術開発調達担当次官補が記者団に対し、ウクライナでの教訓等々を受け、米陸軍が過去20年間の「テロとの戦い」で生じた電子戦空白時代を穴埋めするために、新たな電子戦装備の迅速導入に取り組んでいるとアピールしました
具体的には、陸軍部隊の重要装備である戦闘車両に、「cyber, electronic warfare and signals intelligence」の全てを総合的にカバーする電子戦装備を搭載する取り組みで、GD社製の「Stryker戦闘車両」とBAEシステム社製の「AMPV多用途車両:Armored Multi-Purpose Vehicle」がその対象となっており、ロッキード社が競争を勝ち抜いて2023年4月から本事業を担当しているようです
搭載システムは、旅団規模以下で使用する小規模部隊用の「TLS-BCT:Terrestrial Layer System-Brigade Combat Team」システムと、師団や軍団レベル以上で使用する「TLS-EAB:Terrestrial Layer System-Echelons Above Brigade」で、ロッキードは約160億円規模の契約でまず「Stryker戦闘車両」の「TLS-BCT」から取り掛かっており、6月には「TLS-EAB」部門での企業選定にも勝利して具体的検討を深化させているようです
Bush担当次官補はこれら一連の電子戦事業について、「米陸軍は、過去20年間にわたり放置されてきた戦術的電子戦分野の、根本的な再構築のために再投資を行っている」と説明し、「ウクライナに提供できたのは限定的な数量の関連装備だが、露側のドローン攻撃対処等に極めて有効であることが実証されており、我々はこの戦訓から学ぶべきと考えている」とこの投資の重要性を強調しています
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「テロとの戦い」から対中国念頭の「本格紛争」準備へと切り替える中で浮上した「電子戦の空白」問題ですが、ウクライナ戦争を目の当たりにして米軍の危機感は、「ドローン対処」「地上戦闘」「情報収集」「指揮統制」等々の多様な分野で急速に高まったものと考えられます
日本もこの危機感を共有しているのでしょうか? 戦闘機を始めとした、航空機ばかりに投資し続けている航空自衛隊を見るにつけ、非パイロットである坂梨防衛部長でも「急には方向性を変えられない」日本の悪しき硬直性をしみじみと感じます
米陸軍の電子戦改革(道遠し)
「2027年までに前線電子戦部隊整備」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-01-04
「東欧中東戦線でのロシア軍電子戦を概観」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-06-09-1
「ウクライナの教訓」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-05-08
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02