現在の海軍No2である女性Lisa Franchetti大将が
米4軍のトップに女性は初めて
国防長官は別の男性大将を6月に推薦したが・・・
その男性大将は太平洋軍司令官に推薦・・
7月21日、バイデン大統領が8月21日に退役する米海軍トップ(CNO:Chief of Naval Operations海軍作戦部長)Mike Gilday海軍大将の後任に、現在副CNOである女性のLisa Franchetti大将を推薦し、米議会の承認を得られれば米4軍で初の女性トップになることが明らかになりました(なお沿岸警備隊司令官には、2022年8月から女性のLinda Fagan大将が就任済)
6月14日付ブログ記事でご紹介していたように、春から6月上旬までは、女性のLisa Franchetti大将が次期米海軍トップの大本命だとメディアも専門家も一致して「うわさ」していたのですが、「情報駄々洩れ」状態が災いしたのか、女性への「ガラスの天井」が存在したのか、
6月13日になって突然、各種メディアが「オースチン国防長官は太平洋海軍司令官であるSamuel Paparo海軍大将を推薦した」と相次いで報じ、その後は米海軍関係者は「本件は大統領の専決事項である」の一点張りでコメントを避け続けていました。
米軍の高級幹部約250名の人事全体は、アラバマ州選出のTuberville上院議員が「妊娠中絶が禁止された州から、許可された州へ移動して手術を受ける女性兵士に、旅費と休暇を付与する制度」に強硬に反対して人事案審議をストップさせており、この膠着状態は4か月以上経過した現在も継続中で、米海軍トップ人事の件も皆忘れかけていたタイミングでの突然の発表でした
以下に再掲載する6月14日付の記事でご紹介したように、Franchetti大将は1964年生まれで、2回の空母戦闘群司令官や第6艦隊司令官、更に欧州アフリカ艦隊司令官を前線指揮官として勤め、統合参謀本部では重責J-5長経験者でもあり、副CNOを経て何ら問題ない順当な女性海軍トップ候補の誕生です
この米海軍トップ人事のドタバタは前回の交代時にも見られた減少で、今やお家芸レベルに達しています。なお、6月中旬から今まで「次の海軍トップ候補」だった太平洋海軍司令官であるSamuel Paparo海軍大将は、過去の流れに沿ってインドアジア太平洋軍司令官候補者に同時に推薦されています
Lisa Franchetti海軍大将の公式経歴
→https://www.navy.mil/Leadership/Flag-Officer-Biographies/BioDisplay/Article/3148210/admiral-lisa-franchetti/
軍での女性を考える記事
「海兵遠征軍レベルの先任軍曹に」→https://holylandtokyo.com/2022/12/20/4072/
「米潜水艦の最先任軍曹に初の女性」→https://holylandtokyo.com/2022/09/02/3619/
「米海軍Blue Angelsに初の女性パイロット」→https://holylandtokyo.com/2022/07/21/3484/
「沿岸警備隊司令官に女性が」→https://holylandtokyo.com/2022/04/07/3112/
「初の女性空母艦長が出撃」→https://holylandtokyo.com/2022/01/07/2587/
「技術開発担当国防次官に」→https://holylandtokyo.com/2022/01/26/2649/
「初の女性月面着陸目指す」→https://holylandtokyo.com/2021/07/05/1935/
「黒人女性が初の海軍戦闘操縦コース卒業」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-07-12
「初の米空軍下士官トップにアジア系女性」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-20
「GAO指摘:女性の活用不十分」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-20
「初の歩兵師団長」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-06-10
「超優秀なはずの女性少将がクビに」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-11
「3軍長官が士官学校性暴力を討議」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-04-10
「上院議員が空軍時代のレイプ被害告白」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-08
「空自初:女性戦闘機操縦者」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2018-08-25
「自衛隊は女性登用に耐えられるか」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2017-09-10
「女性特殊部隊兵士の重要性」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-28
「Red Flag演習に女性指揮官」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-19
「米国防省:全職種を女性に開放発表」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
「ある女性特殊部隊員の死」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-10-27
「珍獣栗田2佐の思い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-17
「2012年の記事:栗田2佐」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-11
女性徴兵制度がある国
「前線にも:イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-27
「究極の平等目指し:ノルウェー」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-16
「社会福祉業務選択肢もオーストリア」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-01-22
/////// 以下は2023年6月14日掲載の記事です //////
現在の太平洋海軍司令官が海軍人トップへ
直前まで女性大将推薦で動いていたはずが
「最悪の人事情報管理」と関係者吐露
6月12日NBC News等米メディアが、2019年8月から米海軍トップのCNO(chief of naval operations)を勤め、今年8月21日退役が決定していMike Gilday海軍大将の後任に、オースチン国防長官が大統領に、現在の太平洋海軍司令官であるSamuel Paparo海軍大将を推薦したと報じました。
先週から12日昼の段階では、現在の副CNOである女性Lisa Franchetti大将が初めて女性として4軍のトップになると様々なソースが報じ、実際米海軍や国防省内でもその方向でスタッフが動いていた事実が確認されていたようですが、海軍現役やOB幹部から「最悪の人事情報管理」だ・・・との声が上がるほど「情報だだ漏れ」状態だったようです
米海軍報道官や国防省は「それは大統領が決定する事項だ」とノーコメントを貫いているようで、厳密に言えば、国防長官の推薦を受け、最終的にバイデン大統領が米議会への推薦者を判断することになりますが、12日付Defense-Newsによれば、匿名の2名の関係海軍高官がPaparo海軍大将推薦を認めたようです
太平洋海軍司令官ポストは、対中国作戦を海上・水中作戦を立案&実行する重要ポストですが、これまでは同ポストから一段上の太平洋軍司令官に就任するケースが多く、実際現在のインドアジア太平洋軍司令官(対中国作戦の大統領直属の指揮官)であるJohn Aquilino大将も、太平洋海軍司令官から就任しています
女性Franchetti大将も Paparo大将もともに1964年生まれで、共に空母戦闘群司令官やナンバー艦隊司令官(前者が第6艦隊、後者が第5艦隊)を勤め、前者が欧州アフリカ艦隊司令官、後者が中央軍&太平洋軍海軍司令官を務めた経歴を持ちますが、統合職では前者がJ-5経験者ですが、後者は主要な統合ポスト経験がありません。
アジア太平洋に関しては、前者は在韓米海軍司令官経験のみで、後者は現在の太平洋海軍司令官で分があります。女性Franchetti大将も Paparo大将も、アナポリスの海軍士官学校出身「ではない」点では同じです
なぜ、直前に外野から見て「どんでん返し」になったのかは邪推しかありませんが、「最悪の人事情報管理」による女性トップ誕生との噂流布が国防省レベル以上で嫌われたか、中央軍&太平洋軍海軍司令官の経験がより重視されたのか・・・・もしれません
ただ米海軍トップ人事のごたごたは現CNO就任時の4年前にもあり、米議会の承認も得て2019年8月1日にCNO就任が決定していた人物が、最終段階の「身辺調査」で不適切な過去が判明し、7月7日に辞任退役に追い込まれる事態が発生(下の過去記事参照)、
グダグダの装備品開発(空母、LCS等々)、艦艇の衝突事故や火災事故、ワイロ事件等々で「何をやってもダメな米海軍」と揶揄される中、米海軍人事全体が大混乱に陥り、本来なら別の大将の中から米海軍トップを選出するはずが候補者が見当たらず、中将の中から選出する「異例中の異例」な経緯をたどった記憶も生々しいところです
海軍トップは大統領の正式推薦まで予断を許さない雰囲気ですが、いずれにしても、統合参謀本部議長も含め、陸海空海兵隊のトップが全て同時に交代する夏の人事となりました。
Samuel Paparo海軍大将の公式経歴
祖父・父も米海軍勤務の筋金入りです
→ https://www.cpf.navy.mil/Leaders/Article/2628260/admiral-samuel-j-paparo/
4年前の米海軍トップ交代の大混乱
大本命が最終段階で過去の不始末でクビに
「異例:大将に適任者なく中将から」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-07-19
「Moran大将突然の辞任」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-09