航空優勢は「どこも握っていない」と言いつつも
露の攻撃型ヘリや安価なドローンで「ウ」が苦戦と
西側提供の多様な防空兵器の連携運用が必要とも
ウ外相は「最大の問題は、ロシアが空を支配している事だ」と
6月23日、まもなく退役予定のMcConville米陸軍参謀総長が、ドイツで開催された33か国の欧州陸軍首脳が参加した会議後に記者会見を行い、ウクライナ軍の反転攻勢がロシア側の安価なドローンや攻撃ヘリによる航空攻撃で困難に直面していることを示唆し、西側から提供された多様な防空システムのセンサー情報や指揮統制を一元的に管理して運用することの重要性に言及しています
同日付米空軍協会web記事によれば、McConville米陸軍大将は、ウクライナ側もロシア側も戦場における「航空優勢」は握っていないと述べつつも、ロシア軍が投入している安価なイラン製ドローンによって、ウクライナ側の防空システムが飽和させられるようなことがあってはならないと表現し、防空ミサイルの弾薬不足が指摘される中で相当の危機感をにじませた模様です
更にMcConville参謀総長は、6月から開始されているウクライナの反転攻勢が難航している背景として、ロシア軍の攻撃ヘリを主とする航空戦力が活動を活発化していることに警戒感を示した模様です
23日にはウクライナのDmytro Kuleba外相がBBCに対し、「地上戦においてわが軍が直面している最大の問題は、ロシアが空を支配している(dominance of Russia in the air)ことである」と語っており、McConville米陸軍参謀総長よりも明確に、 ロシア側に空の支配が握られつつある現状に言及しています
夏に退役予定のMcConville大将は前述のように「空の支配が一方に握られていない」としつつも、米軍として「各国がウクライナに提供した様々な防空システムが、センサー情報や指揮統制が融合して一元的に実施できるように、関係同盟国等と緊密に協議しつつ「Integrated Battle Command System」を導入しつつある」とも、現在の取り組みを説明しつつ、
更に対中国で注目を浴びているグアム島の防空体制強化にも導入が進められている米陸軍の防空システムについては特に問題があるわけではない、と強気の姿勢を崩す事はなかったようです。
なお同参謀総長は、この機をとらえて「HIMARS」の有効性を強調し、敵の兵站拠点や指揮統制司令部を攻撃することで、最前線の作戦を大いに支援出来ているとアピールし、米陸軍が対中国で取り組んでいる「遠方からの攻撃力強化」の正しさを主張しています
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最近のウクライナ大統領の会見では、ロシア側が配置した大量の地雷が、ウクライナ軍反転攻勢の大きな障害となっているとの説明がありましたが、西側提供の防空兵器の枯渇がじわじわとウクライナの防空能力を弱体化させ、ロシア軍の「航空優勢」確保と航空戦力投入機会を与えつつあるのかもしれません
攻撃ヘリの威力もそうですが、攻撃兵投入に至る前段階で、大量の安価な無人機投入により、ウクライナの防空兵器を消耗させる作戦が成果を上げつつあるのかもしれません。残念ながら・・・
ウクライナでの無人機脅威を考える
「世界初の対無人機等の防空兵器消耗戦」→https://holylandtokyo.com/2023/01/27/4220/
「イラン製無人機が猛威」→https://holylandtokyo.com/2022/10/20/3787/
「ウで戦闘機による制空の時代は終わる」→ https://holylandtokyo.com/2022/02/09/2703/