元米海軍造船担当次官補が根本改革訴え

米海軍は失った信頼回復に厳正な予算管理を
予算内に収まる現実的な戦力造成計画を
装備品調達のコスト管理をかつてのように厳正に

Zumwalt dame.jpg1月17日付Defense-Newsは、元米海軍造船&兵站担当次官補であるEverett Pyatt氏の寄稿文を掲載し、米海軍が沿岸戦闘艦やフォード級空母やコロンビア級戦略原潜やZumwalt級駆逐艦DDG-1000等々のずさんな管理で失った、米議会や国民からの信頼を取り戻し、台頭する中国に備えるには、増加が見込めない予算の現実を受け入れ、予算内で収まるような厳正な装備品開発&調達管理を復活させないと、艦艇規模は現在の半分になってしまうと訴えました

RIMPAC 20202.jpg米海軍の装備品調達の混迷については何回も取り上げてきましたが、沿岸戦闘艦LCSがトラブル多発の中で本格紛争での役割を得られないまま4兆円を無駄にして早期退役を開始したり、フォード級空母がニミッツ級の2倍のコストに膨らんで開発が遅延していること、ステルス駆逐艦のDDG-1000が3隻で建造を終了する惨状で、次期戦略原潜コロンビア級コスト急上昇で艦艇建造コストを圧迫しつつ開発が遅延している等々の惨状を、信頼喪失の原因だとPyatt氏も指摘しています

LCS-2ship3.jpg一方で中国について同氏は、飛躍的な拡大を遂げて世界最大の海軍に成長し、例えば南シナ海の資源を確保せんとするとともに、国有企業経由で世界中の商船企業やコンテナ輸送企業を買収して世界最大規模の商船能力を保有するに至り、数千隻の漁船で世界中の漁業資源を食い荒らしていると危機感を訴えています

同氏は、米海軍の惨状立て直しのために国防授権法で設置された超党派8名で構成される「National Commission on the Future of the Navy」に望みを託し、解決方向はシンプルであり、今後の予算増が望めない現実を受け入れ、予算内で装備品調達が進むように計画管理を厳格化し、企業の競争を促進して、1980年代に予算内で米海軍600隻体制を確立した当時に立ち戻ることだと主張しています

更にEverett Pyatt氏は寄稿文で
Ford CV2.jpg●1980年代当時は、装備品開発や調達の段階ごとに進捗や品質を注意深く確認し、企業の競争環境を作ってプログラムの破綻を回避して安定した艦艇調達を可能にしていた。また輸送船分野では100隻の中古商船を僅か400億円程度で入手して有効活用していた。Navy Materiel Commandを廃止して官僚機構を整理する等の取り組みも成果を生んでいた
●現在は造船業界が衰退して建造能力が低下しているとの指摘もあるが、慎重な調査結果によれば、年間15隻もの建造能力を保有しており、艦艇開発のゴタゴタで単価が上昇することで建造数が低下することによる負のスパイラルが問題点だと指摘されている。

●今は、価格が2倍に高騰した駆逐艦や攻撃型原潜の建造が調達計画に含まれ、航空機調達予算も制約する気配がないが、このような状態が続けば米海軍の艦艇数は、現在の半数までに落ち込むことになってしまう
Columbia-class.jpg●米国や同盟国の予算は限られており、敵の勢いは猛烈である。技術やシステム開発や即応態勢維持や諸計画管理や作戦運用に革新を起こさなければならないことは自明である。限られた予算内でこれらに取り組まない限り、中国の海洋ドメインでの覇権を許容することになってしまう

●「National Commission on the Future of the Navy」の強力なリーダーシップの元、冷戦を勝ち抜き、幾多の海洋問題を解決してきた米国と同盟国の知見を再動員し、今後の10年に立ち向かう必要がある
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F-35C Carl.jpg米海軍内では装備品調達問題だけでなく、虎の子のF-35搭載用に改修した強襲揚陸艦を火災で損失(おそらく放火)、複数の艦艇衝突事故、港湾役務業者との癒着ワイロ事案などなど、人的戦力の問題も顕在化している現状で、明るい話題がありません

筆者は現在83歳の米海軍黄金時代を支えた人物であり、今でも執筆活動を盛んに続けている方です。現在の問題が単純ではないことを承知しつつも、黙っていられない心境なのでしょう

筆者の述べる解決策が簡単に実現できるとは思えませんが、現状把握のためにご紹介しました・・・

米海軍の問題
「3大近代化事業を一つに絞れ」→https://holylandtokyo.com/2021/06/11/1898/
「無人システム構想が酷評受ける」→https://holylandtokyo.com/2021/03/30/173/
「米空母と潜水艦修理の75%が遅延」→https://holylandtokyo.com/2020/08/27/534/
「国防省が空母2隻削減と無人艦艇推進案」→https://holylandtokyo.com/2020/04/23/733/
「CSBAが提言:大型艦艇中心では戦えない」→https://holylandtokyo.com/2020/01/14/865/
「米艦艇建造や修理人材ピンチ」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-24

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