無人機自立化と群れ技術を作戦機で装備化へ

基礎技術確認を終え、2023年度から本格開発へ
2024年度予算案で具現化の方向をより明確に

XQ-58A Valkyrie.jpg11月10日付米空軍協会web記事は、無人機自立運用の技術開発「Skyborg計画」と無人機の群れ技術開発「Golden Horde計画」が成果を上げ基礎開発段階の終わりを迎えつつあり、2023年から具体的なCCA(Collaborative Combat Aircraft)開発プログラム(program of record)に昇格して具体的な装備化を目指す、とのKirsten J. Baldwin米空軍科学技術開発担当次官補の発言を紹介しています

Baldwin.jpgCCA(Collaborative Combat Aircraft)とは、有人作戦機と無人機が「緩やかな編隊」を構成し、有人機操縦者や地上からの指示を受けつつ、自律的に飛行して任務を遂行する無人僚機(ウイングマン機)を開発しようとのプロジェクトで、対中国作戦で数千とも万とも言われる多数の目標対処に必要な剛撃能力が圧倒的に不足する課題を克服し、かつ敵の強固な防空網での作戦で人的損耗を抑制することが狙いの開発プロジェクトです

「Skyborg計画」と「Golden Horde計画」は、共に2019年に優先投資を受ける重要開発案件「Vanguard program」に選定された3件の中の二つで、良く開発状況がわからないながら、こ断片的にお伝えしてきたところです

2019年12月の記事で、同計画発表時の計画の狙い等を確認すると

「Skyborg計画」は・・・
●無人機が戦闘空域でISRや攻撃を、有人の戦闘機や他の航空機に随伴し、有人機からの任務割り当て指示を基礎に、無人機自身で状況を判断して任務を遂行可能とする人工知能AIの開発

「Golden Horde計画」は・・・
weapon-swarm.jpg●敵を混乱させるために既存兵器を群れとして使用する自立制御(autonomy)の検討。あくまで人が事前に指定した目標群にのみ対処する「交戦規程を徹底させたセミ自立」を狙うもの
●群れがネットワーク化され、共同して機能し、敵をリアルタイムで把握して対応し、敵の反応に応じて最大の効果を発揮して任務遂行を可能にする群れ制御技術開発

●我の状況の変化や攻撃プランが機能しないと判断した場合は、事前リストの中から次善の目標を捜索し、最善の兵器を再選択し、行動を変更して任務を柔軟に遂行する。例えば共に作戦予定の他編隊の離陸が遅れた場合、互いにネットワーク上で連携を取り、先行編隊が遅れた編隊を待って同時攻撃を作為する等の自律的な行動も期待

Baldwin担当次官補代理が今回明らかにしたのは、
XQ-58A ALTIUS.jpg●「Skyborg計画」と「Golden Horde計画」は最終段階を迎えつつあり、各計画で成熟された要素技術を融合させ、2023年には米空軍の戦闘機と先進航空機プログラム開発責任者Dale R. White准将の監督の元、CCA(Collaborative Combat Aircraft)プログラムとして正式開発計画に格上げして進める
●「Skyborg計画」については、これまでXQ-58 ValkyrieやUTAP-22 Mako無人機で自立飛行ソフトのテストを行ってきたが、2023年に別の機体で応用デモ試験を行い、センサー、兵器運用、電子戦攻撃、飛行訓練パターン飛行を確認し、教訓をCCAプログラムに提供したいと考えている

weapon-swarm2.jpg●「Golden Horde計画」についても、例えばSDB(Small Diameter Bomb)の群れ実験を通じ、無人機単独ではなく群れとして、相互に機体が連携して任務を遂行するかを検討し、様々に変化する状況にいかに対応するかを煮詰めてきた
●それら成果を「Golden Horde Colosseum」との仕組みで取りまとめ、テストした以外の兵器や新兵器に成果に取り込むため、設計環境やデジタルモデリング環境を提供している

またBaldwin担当次官補代理は・・
Rocket Cargo.jpg●新たに「Vanguard program」に選ばれた優先投資開発プロジェクトである、ロケットによる物資輸送「Rocket Cargo」構想について言及し、民間企業が実現しているロケットの垂直着陸技術を少しアレンジすることで、大陸間の長距離物資輸送を実現する可能性があり、Kendall空軍長官も推奨するプロジェクトとして推進している
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UTAP-22.jpg関連過去記事でご紹介しているように、「Skyborg計画」については豪州も参加して進められているようですが、「Golden Horde計画」は2020年秋頃に壁にぶつかり、学界や民間企業に関連技術や知見の提供を依頼する状況に追い込まれていたところです。その後、持ち直したのか細部不明ですが・・

無人機や無人機の「群れ」の活用は必要な研究開発事項ですが、対中国正面の活動拠点確保が困難なエリアで、どこからどのように作戦空域に投入するかも大きな課題です。これは有人機にも当てはまる大きな課題で、戦闘機クラスに突き付けられた大問題です。10年以上前から指摘されてきた課題ですが・・・

Skyborg計画関連
「2機種目MQ-20 Avengerで成功」→https://holylandtokyo.com/2021/07/08/1983/
「Skyborg構想の頭脳ACSで初飛行2時間」→https://holylandtokyo.com/2021/05/17/1489/
「Skyborg構想デモ機製造3企業決定」→https://holylandtokyo.com/2020/12/16/344/
「無人ウイングマンのデモ機選定開始」→https://holylandtokyo.com/2020/05/24/679/
「豪州もXQ-58に参画」→https://holylandtokyo.com/2020/05/06/664/
「米空軍の無人ウイングマン構想」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-05-27
「XQ-58AのRFI発出」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2019-04-06
「XQ-58A 初飛行」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-03-09-1

Golden Horde計画関連
「優先項目の無人機の群れ苦戦」→https://holylandtokyo.com/2020/10/12/430/
「SkyborgとGolden Horde計画を優先に」→https://holylandtokyo.com/2019/12/06/2838/

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