76年の歴史を持つアクロバット飛行チームに
下士官から士官に、そして海軍操縦者になった異色の経歴
Amanda Lee大尉のご活躍に期待
7月18日、米海軍アクロバット飛行チームBlue Angelsが、9月から同飛行隊に所属する新メンバーを発表し、同飛行隊が1946年に編制されて以来初めて、演技飛行を行う機体(FA-18 Super Hornets)のパイロットに女性が選ばれたことが明らかになりました。
Blue Angelsは、米海軍航空部隊の存在を広く世に知らしめるため、当時米海軍トップだったChester Nimitz提督により1946年に編成され76年の歴史を誇っていますが、55年前に地上勤務要員として同飛行隊への女性受け入れが始まり、2015年にはKatie Cook少佐が同部隊所属の空中給油機KC-130パイロットとしてBlue Angels所属となっていましたが、主役のアクロバット機パイロットへの女性配置は初めてとなるようです
史上初として選ばれたのはAmanda Lee大尉で、少し変わったご経歴です。2007年に下士官として米海軍に入隊し、航空機搭載電子機器整備員としてキャリアをスタートしますが、下士官から士官を登用する制度(通称:水兵を提督に計画:Seaman-to-Admiral program (STA-21))により2013年に士官になり、操縦教育カリキュラムを経て2016年4月に米海軍操縦者に認定された経歴の持ち主です
米海軍初の女性パイロットは、1974年に当時のRosemary Mariner大尉ら6名が選ばれていますが、1993年までは戦闘任務部隊への配属は認められず飛行教育部隊のみの配置でした。
しかし同大尉はその後1982年に女性初の空母艦載機パイロットとなり、艦上攻撃機A-7コルセアなどを操縦、1992年からの湾岸戦争時には女性初の空母艦載飛行隊長(VAQ-34)として活躍しています。なおMariner氏は24年の米海軍勤務を終え、1997年に大佐で退役されています(故人)
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米海軍Blue Angelsは、高度なアクロバット飛行や編隊飛行を披露する部隊ですので、パイロットとして操縦技量が高くないと選ばれることはありませんが、米海軍のみならず米軍全体でパイロット志願者が激減し、軍操縦者の民間航空会社への流出が止まらない中、Amanda Lee大尉が選抜された背景には、「下士官から士官への登用制度出身者」&「女性初」とのアピールポイントがあるのだろうと邪推しています
映画「トップガン・マーベリック」の大ヒットで、1986年公開の初代「トップガン」当時に米海軍パイロット志願者が10倍になった「2匹目のどじょう」を狙う米海軍ですが、Blue Angelsへの「女性初」のインパクトはいかほどでしょうか。
誤解なきよう、最後に申し上げますが、下士官から花形ポストBlue Angelsメンバーに選ばれたAmanda Lee大尉には、敬意と尊敬と称賛の思いしかありません。ご活躍と飛行安全を心よりご祈念申し上げます
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