フィンラドとスウェーデンのNATO加盟承認への見返り?
上院外交委員長はこれまでトルコへの強硬姿勢で知られるが
6月30日、マドリッドでのNATO首脳会議を終えたバイデン大統領は、フィンランドとスウェーデンのNATO加盟にトルコが条件付合意した件とは全く関係ないとしつつ、トルコに対しNATO能力強化の一環として、最新型F-16とF-16能力向上キット売却を認めるよう米議会に要請しました
バイデン大統領や米国防省や国務省はFMS案件の細部に言及しませんでしたが、米メディアは40機の最新型F-16 Viper Block 70と80セットの既保有F-16能力向上キットのFMS購入(計約6700億円)にトルコが興味を示していると報じています
バイデン大統領は、トルコが北欧2国のNATO加盟を承認することへの「対価・見返り:quid pro quo」ではないと否定し、米国防省のCeleste Wallander国際安全保障担当次官補も6月29日に、「NATO加盟国の能力を高め、米国の安全保障能力を向上させることにつながる案件であり、米国はトルコ戦闘機の近代化を支援する。現在協議中で、トルコ側にも所定のプロセスを踏んでもらう必要がある」と述べているところです
F-16を製造するロッキード社によれば、最新型F-16 Viper Block 70売却や能力向上改修キット提供により、トルコ空軍F-16には、最新アビオ装備のAESAレーダー、機体構造強化による機体寿命5割増、先進データリンク、最新型目標照準POD、最新ソフトと対応兵器等々が提供されることとなるようです
本件に関し、FMS契約を担当する米国務省FMS室はコメントを避けつつも、「正式に議会に通知するまではコメントしない」としていますが、一般論として「米トルコ関係は長期にわたる同盟関係であり、トルコのNATOとの相互運用性向上は引き続き優先度の高い事項である」としています
米議会に可否が委ねられた場合の反応は見えないところですが、昨年2021年11月にBob Menendez上院外交委員長(民主党)はトルコへのF-16売却に反対姿勢を示し、「トルコのエルドワン大統領の人権問題への姿勢が問題だ。彼による法律家やジャーナリストの投獄や、米国のリビアやシリアへの関与に対する反対姿勢を変えてもらう必要がある」と主張していたところです
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トルコが「手のひら返し」でスウェーデンとフィンランドのNATO加盟を承認する姿勢を打ち出したのには驚きましたが、このタイミングでトルコへのF-16最新型や改修キット売却を持ち出されると、「対価・見返り:quid pro quo」ではないかと邪推するのが当然でしょう
ご紹介したMenendez上院外交委員長(民主党)の発言はあくまで昨年11月のもので、ロシアのウクライナ侵略事態を受け態度が変化している可能性は十分にありますし、「民主党」の重鎮として、表面上は反対姿勢を見せる必要があるのかものかもしれません。
様々に激しく、世界情勢は動いているということです。
米トルコのF-35やS-400 巡る関係
「米国がトルコにF-35代替で最新F-16提案!?」→https://holylandtokyo.com/2021/10/20/2357/
「トルコへのF-35部品依存は2023年まで」→https://holylandtokyo.com/2020/10/14/432/
「トルコの代わりに米で部品製造」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-08-27
「トルコをF-35計画から除外」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-17
「S-400がトルコに到着」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-07-14
「米がトルコに最後通牒」→https://holyland.blog.so-net.ne.jp/2019-06-09