感涙:極東米海兵隊は「stand-in force」作戦を検討中

2021年12月発表「A Concept for Stand-In Forces」基に
同盟国等と共に中国A2AD域内で頑張る姿勢をセミナーで語る
まんぐーすは知りませんでした。てっきり長射程兵器のみ重視かと
でも構想の「Stand-in Forces」の実態からすると・・

Concept for Stand-In.jpg5月11日、米海兵隊関連イベントで太平洋軍海兵隊や日本に拠点を置く第3海兵機動展開部隊(III MEF)幹部が、米軍の他軍種が「Stand-off Forces」的に中国A2AD圏外の安全な場所からの長距離攻撃に注力する中でも、アジア太平洋の海兵隊部隊は「Stand-in Forces」だと語り、様々な取り組みと装備品要望を行い、大きなカギとなる地域同盟国との協力強化も重要と語っています

まんぐーすは知りませんでしたが、米海兵隊は2021年12月に「A Concept for Stand-In Forces」を発表し、アジア太平洋地域の海兵隊が取り組んできた第1列島線内部に陣取り作戦を遂行するスタイルや、開発導入すべき新技術や新装備を明確に示したようです。

Concept for Stand-In3.jpg具体的イメージとしては、中国A2AD領域内に進出又は強靭に陣取り、隠密裏に行動する海兵隊兵士が中国艦艇の位置を特定し、ネットワーク化されたタブレット等の情報端末で1000マイル離れて陣取る味方の長距離攻撃部隊に伝えるというもので、豪州やフィリピン軍を巻き込んでの訓練も始まっているようです

米空軍は言うに及ばず、米陸軍も海兵隊もこぞって「遠方攻撃兵器」に注力する現実に、軍事的合理性から致し方ないと思いつつも、暗い気分になっていたまんぐーすは、記事のタイトルを見て単純に「目頭が熱くなった」わけですが、よく読むと「Stand-in Forces」は敵情を把握する「ほんの一部」であるような雰囲気も漂っており、同盟国対策のアピールかとも勘繰りたくなりますが、以下では関連海兵隊幹部のイベントでの発言を紹介いたします

5月18日付Defense-New記事によれば
Concept for Stand-In6.jpg●太平洋軍海兵隊のStephen Fiscus副戦力開発チーム長(大佐)は、「過去約20年間、中国が造成した強力なA2AD能力を前に、米軍の多くはA2AD圏外の安全な場所からのstand off攻撃で対処しようとしている。しかし太平洋軍の海兵隊部隊はstand inだ。その配置、体制、能力、地域国との関係などを最大限に活用して中国から守る。中国のWEZ内(weapons engagement zone)で我らのWEZを構築する方程式を取り戻す」と熱く語り、
●同大佐はまた「日本が拠点の「III MEF」は既にstand in戦力で、フィリピンや韓国で訓練を行っている。しかしstand inコンセプトは更に、地上や海上目標情報を、時間や空間的余裕を確保しつつ米統合戦力に伝達して海上戦を遂行することを求めており、追加の新規装備を必要としている」と訴えた

Concept for Stand-In7.jpg●Joseph Clearfield太平洋軍海兵隊副司令官(准将)は将来像の具体的イメージを表現し、「ヘリコプターからタブレットを持った兵士が展開潜入し、見晴らしの良い半島の先端に設けた隠蔽された拠点から敵の動きを監視する。敵を発見したらタブレットを使用し、その位置や関連情報を1000マイル離れた統合の長距離攻撃部隊に知らせるのだ」と説明した
●新設された「第3沿岸連隊」は今年後半に、上記のようなデジタル化作戦遂行に不足する能力(ギャップ)を特定する任務を付与されている。通信能力、キルチェーンweb連接、センサーとの連接等が課題である

Concept for Stand-In4.jpg●具体的取り組み例では、Naval Strike Missileを無人発射車両に搭載して艦艇から発射するNMESIS system(Navy/Marine Corps Expeditionary Ship Interdiction System)試験が4月に実施され、2023年から配備が予定されている
●また沿岸戦闘艦LCSから、地上目標攻撃のため「AGM-114L Longbow Hellfire missiles」を発射する試験が5月12日にLCS- Montgomeryから実施され、この際は無人機MQ-9からの目標情報を基に数マイル先の目標攻撃であったが、構想では前述の「第3沿岸連隊」のような部隊が目標情報を収集・発信することが期待されている。海上配備兵器で地上目標を攻撃することで火力支援能力を強化する方向である

Concept for Stand-In5.jpg●前述の副司令官(准将)は、このコンセプトを前進させ膨大なアジア太平洋地域をカバーするには同盟国等との協力が重要なカギだと語り、豪州とフィリピンが既に「第3沿岸連隊」のような敵情を収集して敵を妨害する部隊を編成したと語っている
●米軍内でも、例えば加州所在で長年中東での作戦に従事し、中東任務撤退後に縮小されていた「Southern California Marines」を再充足し、「Marine Air-Ground Task Force」として再編しつつあり、その一つの部隊を既に豪州ダーウィンに展開させていると同准将は説明している

marine infantry2.jpg●副司令官はまた、日本が拠点の「III MEF」が第1列島線でのstand in作戦を担う一方で、加州を拠点とする「I MEF:第1海兵機動展開部隊」は「outer regions of Southeast Asia」を担当し、伝統的な着上陸や新たな沿岸からの作戦手法を用い、迅速な機動展開で作戦支援する部隊と考えていると説明した
●また日本駐留の「III MEF」が在ダーウィンのローテーション部隊を構成するのに対し、「I MEF」は豪州が乾季の6か月間は北部豪州にローテーション展開し、残りの半年をアジアの他の同盟国等で活動する可能性を検討して模索しているとも同副司令官は語った
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Marine-okinawa.jpg記事のタイトル「Pacific Marines move to formalize role as the stand-in force」を目にし、記事の太平洋軍海兵隊幹部の皆さんの発言を一読した時点で、最近涙もろいまんぐーすは海兵隊の皆さんの心意気に「目頭が熱く」なりましたが、結局「III MEF」のstand in戦力は打撃力を行使しない少数の隠密偵察部隊なのかな??・・・と思い始め、涙も乾いてしまいました。

もちろん、本国から遠く離れた極東の地で、リスクを負って前線に身を投じる覚悟の米海兵隊の皆様に何ら不満はなく感謝の言葉しかありませんし、軍事的合理性に基づき作戦コンセプトを練り、同盟国等への配慮一杯に抑止力向上のため同コンセプトと遂行状況を対外アピールされる姿には崇高なものさえ感じますが、ウクライナ東部住民の心境に少し近づいた気も致します

concept for stand-in9.jpgついでに在日米海兵隊の「削減」に関する防衛省の説明ぶりを防衛白書内で探してみると、令和3年版285ページに「沖縄に所在する第3海兵機動展開部隊(ⅢMEF)の司令部要素をグアムへ移転する計画だったが、2012年4月に変更し、司令部・陸空&後方支援部隊で構成される海兵空地任務部隊(M Marine Air Ground Task ForceAGTF)を日本、グアム及びハワイに置くとともに豪州へローテーション展開させることとした」と訳の分からない説明になっています

「A Concept for Stand-In Forces」の現物32ページ
https://www.hqmc.marines.mil/Portals/142/Users/183/35/4535/211201_A%20Concept%20for%20Stand-In%20Forces.pdf?ver=EIdvoO4fwI2OaJDSB5gDDA%3d%3d

遠方攻撃を巡り米軍内に不協和音
「米陸軍は2023年から遠方攻撃兵器で変わる」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-09
「スタンドオフ重視を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-06-19-1
「遠方攻撃をめぐり米空軍が陸海海兵隊を批判」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-05-22
「米空軍トップも批判・誰の任務か?」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-04-02
「海兵隊は2つの長射程対艦ミサイルを柱に」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-06

令和3年版防衛白書のPDF
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2021/pdf/wp2021_JP_Full_01.pdf

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