●5月25日Northrop Grumman社は、2022年後半に機体披露を行い、通常であればその後数か月後の2023年に初飛行を行うとの声明を発表した
●地上試験の第1段階で、非常に重要な様々な機体構造への負荷を想定した「calibration test」は、成功裏に終了した。
●今後は次の地上試験である、エンジン稼働試験、サブシステム試験、ステルス塗装&コーティングに進むことになっている。
●そしてその後の初飛行では、現在組み立てや地上試験が行われている加州Palmdale米空軍第42工場(Air Force Plant 42)から、同じ加州のEdwards空軍基地に移動し、そこで公式飛行試験を行う予定となっている
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米空軍が突然5月20日に理由説明なく発表
つい最近幹部がサプライチェーンには問題はないと
今年の初飛行後、加州工場から出てエンジン等の各種試験予定が
5月20日、米空軍報道官が一切の理由説明なく、「B-21爆撃機初飛行の新たな予定時期は来年2023年となる」、「最近の開発プログラム状況を反映したもので、空軍は計画の透明性が高くあるよう努めている」と突然発表し、内外に波紋を呼んでいます
B-21爆撃機計画は、新規開発プログラムの「お手本」「モデルケース」と米空軍や議会が絶賛する順調さをこれまで示しており、4月末には開発製造企業Northrop Grumman社CEOが「空軍から(優秀な開発ぶりが評価され)報奨金約80億円を授与される」と自慢していたほどでしたが、ここにきて急に暗雲が立ち込めてきました
B-21については2021年初期から「機体を初披露後、2022年中頃に初飛行予定」「お披露目儀式はそれなりに行う」「ただ、重要装備でもあり多くの情報を公開するつもりは無い」等々と、2022年初飛行は揺ぎ無い前提で空軍幹部が語っており、監督する米空軍緊急能力室RCOのRandall Walden室長も3月に、初飛行用初号機も「ほぼ組み立てられ、振動試験などを実施中で、今後地上滑走を経て初飛行に進む予定」と述べていたところでした
また複数の米空軍や軍需産業関係者も、同CEOが4月末に発表した「各種試験と並行し、2023年には低レート初期生産LRIPに入る」ためには、初飛行後は現在組み立てが実施中のNorthrop Grumman社の加州Palmdale工場から移動し、エンジン試験や各種試験を行う必要があると述べていたところでした。
遅れの原因は不明ですが、最近、サプライチェーン部品供給や労働者不足を理由にT-7A練習機開発が遅れると米空軍とボーイングが明らかにした中で、同RCO室長は3月に、B-21はサプライチェーン問題に大きな影響を受けていないと発言していたことから、外部的な要因が遅れの背景とは考えにくいとの見方が一般的なようです。
一方でB-21に関しては、同CEOが4月末に、開発段階(EMD)の緊要システム融合を含むテスト段階に入っていると述べ、最新のデジタル設計と先端製造技術の活用で初飛行前に様々な角度からリスク分析を行っているとも語っていたこともあり、T-7A練習機とは異なり、B-21爆撃機の機体事態に不具合が見つかったのではないかとの憶測が飛び交う事態となっているようです
初飛行遅延の原因について空軍報道官は一切触れず、「(初飛行などの)イベント時期先行ではなく、データや開発実態優先で物事を進める」と表現し、米空軍として準備万端の態勢が確認できなければ初飛行を行わない姿勢を再確認していますが、
F-35戦闘機やKC-46A空中給油機開発がグダグダな中にあって、これら2つの開発案件を辛らつに繰り返し非難してきた上下院軍事委員会メンバーまでもが、「極めて素晴らしく運営されている開発案件」と讃えてきたB-21が、ここにきて初めての遅延発表とは残念です。続報を待ちましょう・・・
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米国防省や米軍に明るい話題が少ない中、B-21は唯一といって良いほど順調な開発案件でしたから、少し関係者全員が少しはしゃぎすぎたかもしれません。2019年7月末に時の空軍副参謀総長が「開発順調なB-21爆撃機の初飛行は、今日から863日後の2021年12月3日に予定されている」と豪語したことなどが頭をよぎりました。
同時に昨年6月、当時の空軍長官が「なぜ遅れが生じないのか」と報道陣から問われ、「要求性能の変更を拒否しているからだ」、「必要なことに焦点を当て、ゴールすることに注力している」と答えていたことも思い出されます。
このように新規開発事業に際しては、当初の目的やねらいを忘れず、「100里の道は、99里を持って半ばとせよ」との言葉をかみしめ、最後まで慎重に進めていただきましょう。「2020年代半ばに作戦投入可能状態に」との当初計画を達成するためにも・・・
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