持続可能燃料、合成燃料、電気&水素活用など様々に
12月にも新たな合成航空燃料発表へ
2040年「温室効果ガス排出ゼロ」に本気です
11月24日、Mike Wigston英空軍参謀総長が航空宇宙研究機関で講演し、英空軍として「2040年温室効果ガス排出ゼロ」を目指す取り組みについて語り、持続可能燃料SAF、合成燃料、電気&水素エンジンなど様々な最新技術収集と開発プロジェクトを走らせ、地球温暖化対策だけでなく、作戦運用面での兵站負担軽減メリットを追求する姿勢であることを訴えしました
もう少し「浮ついた」話を予期していましたが、英空軍は足元を見て問題点を把握しつつも、着実に本気で前進しようとしています。大いに感心し、考えさせられました。背景には英国としての姿勢もあるのでしょうが・・・
既に英空軍は11月2日、プロジェクトの成果としてZero Petroleum社製の合成燃料で小型セスナ機Ikarus C42の世界初飛行を成功させギネスブック入りを果たしましたが、その際は水と大気から原料(水素と炭素)を抽出し、太陽光と風力発電で得たエネルギーで加熱&加圧製造した合成燃料に注目が集まりました
それだけにとどまらず英空軍は、同時に進めている2つ目の合成燃料開発プロジェクトの成果を、12月上旬に発表するとしています
一方で、良く報道される持続可能航空燃料(トウモロコシ利用のエタノールやリサイクル油から製造:sustainable aviation fuel (SAF))について英空軍は、一部の機体での使用可能性はあるとしつつも、価格が通常の航空燃料の10倍で、現在の生産量(必要航空燃料の3200分の一の製造量)が飛躍的に伸びるとは考えにくいと冷静に分析しています
更に小型軽量機に電力や水素を動力として活用する可能性についても言及しつつ、合成燃料も含め輸送可能な製造プラントを開発し、航空燃料を輸送する方式でなく、展開基地や空母上で航空燃料を製造して利用し、兵站補給路の負担軽減や脆弱性克服につなげたいとの思いを真正面から訴えています
24日付Defense-News記事について
●24日、Wigston英空軍参謀総長はFreeman Air and Space Instituteで講演して「2040年温室効果ガス排出ゼロ」への取り組みを語り、「合成燃料プラントが輸送可能となれば、航空燃料を展開先基地や空母エリザベス艦上で入手でき、燃料輸送の兵站負担を削減できる。敵の攻撃目標になる危険性も排除できる」と語り、
●また同参謀総長は「太陽光や水素エンジンも同様に小型軽量機であれば活用可能性があり、莫大な航空燃料輸送の負担を取り除くことができ、輸送途中の脆弱性の排除につながる」とその可能性に期待を示した。
●そして英空軍報道官は、11月2日に合成燃料での世界初飛行に成功したZero Petroleum社製の合成燃料以外に、もう一つの合成燃料顔発プロジェクトが別企業と進んでおり、その成果をまもなく12月に発表できるだろうと述べた
●ただ英空軍も既に一部で試用し、ウェールズ王子がA330旅客機燃料として使用して話題となった持続可能航空燃料(SAF)について同参謀総長は、高コストの課題や生産量の伸びが期待できないとの見通しを述べた
●同参謀総長は合成燃料に特に関心を示し、「合成燃料の製造は環境面で優しく持続可能性面でも優れている。また化学組成が純粋であるためエンジンを汚さず、結果としてエンジン整備負荷が少なく、騒音も廃熱も低く、飛行機雲も少ないことから作戦運用面で利点が極めて多い」と強調した
●更に合成燃料以外のオプションにも触れ、小型軽量機には電気や水素推進装置が代替燃料として期待できる同参謀総長は述べ、空軍報道官も英空軍として様々な最新技術せ精査を通じ、「賢明な技術利用者の目線を持って、将来コンセプトや要求事項を固めるのに活用している」とコメントしている
●電動航空機の発展は目覚ましく、ロールスロイス社によれば、最近電動航空機の従来速度記録(時速213㎞)が破られて555㎞が達成されたり、瞬間最高速度で623㎞が出た模様である
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合成燃料の現状でのコストが気になるところですが、トウモロコシ由来のエタノール利用持続可能航空燃料(SAF)に現実味がないなら、この分野に期待したいものです。
航空機に利用可能なら、車にも・・・と思いますが
排出ゼロや気候変動への取組み関連
「英空軍が非化石合成燃料でギネス認定初飛行」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-18
「米国防省は電気自動車&ハイブリット車導入推進」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-11-10
「米陸軍が電動戦闘車両導入の本格検討へ」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-09-23-1
「米国防省が気候変動対処構想CAP(Climate Adaptation Plan)発表」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2021-10-08
「サイバー停電に備えミニ原発開発」→https://holyland.blog.ss-blog.jp/2020-03-07